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わたしこそ軟派じゃないか 他人が見たら無音の世界で5

今日はひさびさに、一日中外の世界の刺激に打たれた日だった。
朝からふたつのイベントのミックスサンド的に合間に挟まった授業に出席し、頭も体も変動がすごい。
こんなにも心が忙しかったのはいつぶりか、と考えたが、おそらく4ヶ月前のバイトの面接と野球観戦が被った日以来かと思いつき、案外最近だったと心の中で笑う。
というのもこのタイトル(?)の通り、普段の私はほとんどずっと内側のわたしと向かい合っている。
大学に入ってからいろいろあったもので、極端に人間不信になってしまったので、自分と誰よりも仲良くすることで外界から身を守っている。

だが、大学3年生の夏ともなると、そう和やかにはいかない。
なぜ。そう、就活生だから。

個人面接やグループディスカッションの模擬セッションを受けるたびに、社会人用のフレーズとはこんなにも無個性で、伝えたいことの頭とお尻とお腹にとってつけられてしまうのだな、と言葉の威厳の失墜具合に絶望する。
スーツを着るとか黒髪にするとかわざと個性を消すことで、いかに巧く話せるかだけを執拗に見られるしきたりには前々から嫌悪感はあったのだけど、実際それが始まってみたら言葉へのショックの方が何倍も胸にズンと響く。

いわゆる「お祈り」メールが来るたびに、「ああもう無理だ」と心がボキボキ折れながらわたしはなんとか生きています。

毎日、まだ起きたわけでもない絶望的な未来の予感にへなへなとへたりながらも「いいや負けないぞ」と自分の尻を叩き炎天下就活イベントに向かう。

就活、授業、就活、、、これだけで十分ぐったりになるが最後のゼミにはどうしても出たいので、社長座談会での同期の異常な興奮っぷりに圧倒されつつ自分も釣られて興奮させられ、その勢いで学校へと帰る。
さあ駅に着いたぞと駅構内をズンズン歩き進んでいると、なんとここで「ナンパ師」が降ってきた。

スマホを持ったまま「すみません」と言われたので電車を聞かれるのかなと呑気に笑いかけてしまったが、なんということだナンパ師か。
あまりに突然の出来事、疲れで判断力の鈍ったわたしは感覚の外で連絡先を教えていた。

・・・しまった。絶対怪しいだろ。。

数十秒のやり取りで、わたしの心の中では彼が必死に正当化されていた。
「キレイですね、後悔したくなくて、、」等々ひさびさに異性に褒められ、たった数十秒のやり取りで満更でも無い体裁を見せてしまっておきながら、ナンパ師と別れてからはすぐに危険に気がついた。

不安になってネットで「駅名 ナンパ師」で検索すると、案の定トップには「宗教勧誘らしい」との記事がヒットした。

・・うん。だよな。


軟派とは、辞書的かつ簡単に言えば「異性に惹かれるハードルが低い」ということになるが、この場合の「軟派」はどう考えてもわたしの方だ。

もしや、ナンパ師たちはわたしのような「軟派」な人間を瞬時に見抜ける能力を持っているのではないか。と何かの真実に近づいてしまった予感がして本当に身震いをした。



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