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キングダム考察 羌瘣恋愛観深堀:「大丈夫」と言った時の2人の心理&2つの「弱くなる」理由の違い

【考察その19】

導入の考察↑からちょい時間経っちゃいました。


いや実はね、この記事を始め、恋愛観に関する記事の内容が
結構とっ散らかっていてまとめずらいのもあるのですが、
何よりも上記の導入記事を書いた後の達成感が半端なく笑、
「やり切った感」がどっと押し寄せてしまい、
「もうこれ以上書かなくてもいいかな」とも大袈裟ではなく思って、
なかなか筆が進まなかったと言うのが本音です(苦笑)。

フェードアウトする気満々だったものの、どーにかこーにかしている際、
オムニバス的に書き溜めてた恋愛観考察のうち2つが
うまくまとまったことで、今回の記事公開ができました。


それらの考察それぞれで、羌族の里で育った時代の前提を挟む構成となり、
相変わらず長くなってしまいました。

むしろ長さよりも、特に最初の前提が「え!?」と思う内容かもしれず、
読み進めていくのが嫌になるかもしれませんが、
私のことですし笑きちんと回収できますので、
どうか最後までお付き合いいただければと思います。



前提その1:羌瘣から欠落してしまったもの


羌瘣は、羌族の里にいる時、
自分は祭までの命と思い込んで生きていました。

里の外の世界は自分には縁がないと思っていたんでしょうが、
姉貴分の羌象は外の世界に憧れており、2人の会話では幾度となく、
明るい外の世界の話をしていたのだと想像します。


作中、羌瘣がそんな「外の世界」を想像する場面がありました。
祭の前日、寝入りに入る前の想像でした。

「明日象姉は蚩尤になり外の世界に・・・」(9巻163ページ)

羌瘣が、羌象の目線になって明るい太陽の下にいるような描写でした。


羌瘣は、刺客として日常的に人を斬殺する教育を受けた影響か、
このような想像する時はこのように、
「第一人称視点」の見方を日常的に行っていたと想像します。

要するに、脳に留めるのは「映像」だけであり、
これを見ている「感情」は完全に切り離されている感じです。


この「物事を俯瞰して眺める」性質は、この後、外の世界・戦場において、
羌瘣の戦術眼の鋭さとして如何なく発揮されることとなります。


それは初陣・蛇甘平原で、
死体を積み上げる防護壁の案(6巻79ページ)や、
装甲戦車の攻め所についての信への説明(107ページ)に始まりました。
最初の防壁の進言で、羌瘣は戦場を見渡す目線のまま
足元の死体を指差しており、この時すでに自分が客観視した上での最善策
だと主張しているのが何気にすごい描写です。

以降のシーンについては書き出すとキリないので記載は省略します。
山陽戦までは実際飛信隊の軍師の役目をしており、実際、
「羌瘣副長が作戦全部考えてた」(23巻94ページ)と昂も言ってました。

話を元に戻します。


羌瘣のこの視点は、肝心の「明るい未来の外の映像」を見ている
「羌象の姿」を思い浮かベていないですが、これはすなわち
「羌象がこの景色を見ながらどんな思考をめぐらせ、
どんな表情をしているか」を想像していないと言うことなのでしょう。

羌象が、羌瘣がいなくなった世界でどんな悲しさや寂しさを感じるか
羌瘣は想像しようと、そもそも思っていない
と思われます。

羌瘣的にはそれは、「想像する意味がない」ものであったはずです。
なぜなら「自分が祭で死ぬことは必須」だから。
起こり得ることない「自分が死なない」場合など、
想像するだけ無駄だよね。

・・・そう言うことなのでしょう。


祭までの命、と洗脳されて生きてきて、このような思考となるのは
仕方のないことかもしれませんが、どうにもやり切れず、切なく、
悲しい気持ちになる考察です。。。


以上のように、羌瘣はその境遇がゆえに、
相手の立場に立って、相手が自分に望むことを想像する力が
そっくり欠如して育った
と想像しています。


考察1:告白の最後に『大丈夫』と言った時の2人の温度差


羌瘣が信に天幕で告白した一連シーンの最後に言った言葉でした。

「私は自分のことはよく分からないけど、
信のことはよく分かっているから、大丈夫」(62巻43ページ)

このシーン、信も羌瘣も
無駄?にアップな美男美女風(笑)の画を並べていて、
そのためこのセリフも重要そうとはすぐ察せられたものの、
読んだ当初はそもそも羌瘣が何を「大丈夫」と言っていたのか、
なんでこんな重要そうな描かれ方をされたのか
私には理解出来ず、
何度見してしまったことを今も思い出します。

これから記載していきますが、当時私が理解できなかったのは
おそらく信の目線でここを読んでいたからかもしれません。


羌瘣は以前、天幕で「まじない」と言い信の手を握ったとき
(51巻51ページ)、
信の心を少し深く読んだと考察したことがありました。

「信のことはよく分かっている」と言ったのは、
上記のことを裏付けているような気がします。


この「大丈夫」とは、
【男女の進展を望まない】が、羌瘣が信の中に見た
「信の中での羌瘣の位置付け」に沿った
ことなんだよ、
自分が好きだから進展したいとかはないし、
だからそれを優先しても全然「大丈夫」なんだよ、

・・・と言う意味なんでしょう、おそらく。


一方、信の顔ってこれ
本誌からコミックスに移る間に描き直されたんですよね。
なんかますます意味があるって捉えちゃうじゃん(焦)。

本誌ではもっと驚きが前面に出ている表情だった記憶があるのですが、
コミックスでは羌瘣の言葉を咀嚼して言い淀んでる、と言う感じなのかな、
驚きよりもむしろ「困惑」と言う方がしっくりくる表情のようです。

現に、この「大丈夫」発言が、信が何か言おうとしていた言葉を
見事に遮ってしまい、結果的にそのタイミングで軍の呼び出しが入り、
話が終わった形になっちゃってます。


ここはまさに羌瘣の、
「相手が自分に望むことを想像する力の欠如」が
そのまんま影響しているシーン
になっちゃってます。

羌瘣の「大丈夫」は「羌瘣が大丈夫」なだけで、
信にとっては全然大丈夫じゃない
ことでしょう。


そもそも、礼の羌瘣殺害騒動の中で明らかになった
羌瘣の「信のために命を縮めた事実」について、
信は羌瘣にのらりくらりと隠されていたことに憤り、
そしてまた羌瘣が騒ぎに乗じて曖昧にしようとしているところを
そうはさせんと天幕まで乗り込んできて(62巻33ページ)から、
この会話は始まってます。


信にとって、羌瘣が自分らのためにボロボロになることは
何よりも免れたいことであり、
そのために自分が身を挺してでも守る信念が既にあったこと、
そして「男女として進展してもいい」気持ちは燻り続けていることを
信の心の深堀にて↓考察しました。


羌礼が飛信隊を訪れる少し前のシーンで、
朱海平原での禁術の後なかなか回復しない羌瘣に対し、手を握り、
かつて自分がされた「命を分け与えるまじない(51巻52ページ)」を
信はやっていました。(61巻99ページ)

羌瘣を、手を握りながら見つめている信の顔が
真剣ながらすごく穏やかで格好良く、
初見時、思わずときめいてしまったことを思い出します(照)。


信にとっては「ちゃんと生きているのか」(61巻100ページ)
の不安によって図らずして行動しただけなのでしょうが、
(この信の行動心理、リアルタイムで読んだ時の私もそうでした!)

みずから
「お前が何か命を分けてどーのこーのって言っていたから」と
言っているように、信にとってもすでに
羌瘣が「命を分け与えたい」存在になっていたのだと思われます。

朱海平原の戦いの後、このように度重なる羌瘣への見舞いの都度
積み重なった心配や不安から、自然に以前羌瘣がやってくれた
「まじない」の意味を暗に察することが出来ていたのでしょう。


信は、「命を縮めてしまった」「命を縮めるような行動をした」ことを
この件ではっきり羌瘣から「事実」と知らしめられた状態となりました。

自分が「守る」どころか、自分のために羌瘣が命を削ることになったことに
相当なショックを受けたことも想像に難くありません。

ただ信のこの「何で」(62巻36ページ)の問いは、
憤りからの気持ちの昂りによる「何バカなことを」
と言った後の羌瘣への非難の流れで
口からつい出てしまったものでしょう。

実際もう信には今更どうすることも出来ないわけで
思わず出てしまったからこそ「何で・・・」と
語尾を飲み込んでいるんだと思います。

なので礼が

「当然それは、隊長のことが好きだからに決まっておろーが」
(62巻36〜37ページ)

と答えた時、まさか答えが返ってくるとは思ってなかったのも
ここで信の言葉が止まった理由の一つだったのかもしれません。

そして実際に、一瞬の間のためがあった後羌瘣が言った
信のことを好きだから命を削って助けたことに「違わない」、との
「命を削る行動」そのものの動機について、
信も腹落ちしてしまったのだと思います。


なぜなら「自分もそうだから」、でしょう。

信が元々長く積み重ねていた「守りたい」「命を分け与えたい」
と言う羌瘣への気持ちは、羌瘣への愛しさの現れ
に他ならず、

燻り続けていた「男女として進展したい」気持ちがはっきりと
その想いとしてスイッチが入れ替わったのはまさに
この羌瘣の気持ちを聞いたこの瞬間だったと言う他の方の考察と、
私も同意です。

だから信はその後、自分から羌瘣を責めるも質問を重ねることも
出来なくなったのだと思います。


また、寿命は削れたけど結果的に普通の人並みになっただけで
気にしなくていいと羌瘣が言った時、
「いや、でも・・・」と信は言い淀んでました。(40ページ)
それは結果が良ければいいと言う問題ではなく、
羌瘣をそんな危ない目に合わせたくなかったからのはずです。

この言い淀みや、言葉を遮られて何も言えない一連の信の描写は、
竹を割ったようなはっきりとした信の性格からは、
普段は考えられない、とても珍しいシーンでした。


羌瘣に想われていたこと、寿命も気にするほど縮んだわけではないこと、
いずれも信にとっては「嬉しい」はずのことであったがゆえに、
自分が抱えていた「命を縮める行動をしたと言う許し難い憤り」を
どのように収めたらいいのか分からない状態が、
ここで信が見せた困惑だったのではないでしょうか。


一方で

天幕に乗り込んでくるくらい信が事実を聞いて憤っているのは
どんな気持ちが裏付けか、

そんな時、その相手に「好き」と表明されたらどんな気持ちになるか、

なんで信が羌瘣の言葉をおとなしく聞いているだけ
(=反論できてない&言い淀んでいる)なのか、

この時の羌瘣はその想像が出来ないのでしょう。


信へは「私の気持ちの話は聞かなかったことにして欲しい」などと言い、
その直後さらに「大丈夫」と制され、

信としては、
「いや、こんな重大なこと、今更聞いてないフリなんてできねーよ、
 なんも羌瘣分かってねーよ、何が大丈夫なんだ!?」

と言いたくて仕方ない状態だったと思います。

少なくとも私はここを読んでの第一声は、↑これでした笑。

この「生殺し」状態は、信が自分のために命をかけてくれた人を
大切に思えないような人間だとみなしている現れにもなってます。
・・・かわいそうだ、信。😭


言い終わった後、
羌瘣自身は「やっと言えた」(44ページ)とめっちゃ満足げで、
自分が言ったことの残酷さを微塵も感じていない様子です。
自分が信の心を読んで理解しているとむしろ思い込んでる分、
余計にタチが悪いです。

・・ふふ、羌瘣のこと、悪魔のように見えるぜ。。。
(注:私は羌瘣推しです笑)

いえ、もちろん、彼女がこうなってしまったのは、
その生育環境のせいで、彼女のせいじゃないんです、
仕方ないんですハイ。。。


きっと羌瘣が「大丈夫」で話を遮らなかったら、
「話を聞かなかったことにしてほしい」や「進展は望まない」と
先に聞いていたとしても、
信は羌瘣にそれでも付き合おうと言ったんじゃないかな、と妄想してます。


それはその後、夜の飲みの間のテーブルで、羌瘣が再び
「私たちは強くあらないといけない」(106ページ)
と言ったことに対して信が
「俺たちは強いだろ、ずっと」と返したことがその根拠です。

その前、羌瘣が胸騒ぎの話をしている時は、
すごく真剣な凛々しい顔で聞いているのに、
「強くあらないと」と言われた直後、途端に拗ねたような顔になる信が、
最初に読んだ時から何気に可愛いと思ってました(笑)。

・・・いや、そうじゃない(苦笑)。


これは信の脳内で、「強くあるべき」の文言から、
→「弱くなってはいけない」
→「だから男女の進展はしたくない」
と、即座に数珠繋ぎ的に記憶が蘇ったためで、

「(強くあろうと意識しなくても)元々強い」
と言う羌瘣の言葉の否定の言葉は、
その言葉の奥にあった「男女の進展はしたくない」を否定したかったから、
と言う説明が成り立っているはずです。


でもそれはこれを読んだ誰もが分かる伏線でしたよね。
次ページ、信の言葉を遮った尾平の「あ!、羌瘣がいる!」の言葉は
読者ほぼ全員が「なんでこのタイミングなんだ!!(怒)」
と思ったのは間違いないでしょう(笑)。


ただ、この件直後、羌瘣は礼に
「(信に)二人はずっと強いと言われた」
「あれは余計なことを考えたら弱くなると私は言ったけど
 そうじゃなくて・・・」(109〜110ページ)
とほぼ自問自答のことを問いかけてました。
これは信の言葉に信がどういう意味を込めたか想像し始めた描写であり、
結果的に、いい彼女の成長につながった感じでしたね。

何よりもその晩眠れずぼーっとする羌瘣(109ページ)、
めちゃくちゃ可愛かったですよね(笑)。


前提その2:弱さへ執着する理由


再び、彼女の育った環境の考察に遡ります。

蚩尤族・羌族の蚩尤候補として育った羌瘣。

最有力候補の羌象と共に、彼女らは彼女らの成長のため、
数多くの成功体験を積まされただろうと言うことは、
以前の考察でも述べてました。

当初、里をでた直後は

「私より強い人間はこの世にいない」(9巻143ページ)

と堂々と言ってのけており、
自分に弱さがあることは疑ったことがかつてなかったと思います。

またこの際、河了貂から
「お前が一番悔しいのは、その人が殺された時にその場にいることが
出来なかったことか?」(9巻191〜192ページ)
と質問され、その後の回想で
「(羌象の首を抱えながら)私がいればこんなことにならなかった
と泣き喚くシーンから、祭では「自分が絶対勝利する」ことを
疑いもしていなかったようです。


それが覆されたのは、やっぱり龐煖との戦い以降です。
1回目は馬陽の戦いの中、2回目は朱海平原の戦いの中。

特に2回目、自分が最初に戦っておきながら、
相手を倒すどころか、身代わりになることも出来ず、
結果信を死に追いやってしまったことが、
彼女の大きな分岐点だったのでしょう。


なお、その間に行った幽連への仇討ちで、
幽連という「自分よりも強い」相手も対峙してました。
ただしその幽連との戦いで、自分より強い相手に勝つ方法(?)を
会得したこともあり、実際、戦場では負け知らずでもありました。

そのため龐煖に2回目敗れるまでに、
「弱さ」を受け止められる度量を作る機会はなかったものと思われます。

自分が対峙したことない、どう扱っていったらわからない、
それが「弱くなる」ことへの恐怖に繋がっているのでしょう。


考察2:羌瘣の『弱くなる』理由の変化


彼女が頑なに信との関係発展を拒む理由の「弱くなる」ことについて。

その理由は上記の「天幕で信に気持ちを伝えた時」と
「信にプロポーズされた時」、2回信に伝えましたが、
それぞれの理由が異なっていたことは以前の記事↓で述べました。

理由のは上リンク記事で記載していますが一応再掲します。

「好き」を進展したくない(62巻41ページ)理由として
戦い以外のことに気を使い出したら弱くなる」(42ページ)からと述べ、
すなわち「戦い以外のこと」=「それ以上(男女の進展)」
と言うことでした。


そんな羌瘣の転機は、肥下の敗走時に突如としてやってきてしまいました。
信からの突然の抱擁です。

この抱擁を羌瘣は、信の背中に手を回す「受け入れ」を示しました。
(69巻152ページ)

ここを始めて読んだ時、
「あれ、羌瘣、迷いなく弱くなることを受け入れちゃったの?」
と不思議に一瞬思いましたが、その通り、羌瘣はたぶん
「弱くなる」ことを承知の上受け入れたのでしょう。


信に「俺たちはずっと強い」と言われてから、
信の言葉の意味を考えるようになった描写があったことは、
前項の考察で述べました。

その翌朝、気まぐれで前髪を作った羌瘣を見て真っ赤になる信が
隊員に冷やかされているところを見ながら、早速「・・・」と
何か考えているようなシーン(62巻115ページ)が描かれており、

羌瘣は信の気持ちを、信の言葉や行動をもとにして考えることに
行動がシフトしていったようでした。


それから、王賁の結婚を聞いて悪態ついている信の言葉を、
どことなく安心?した感じで聞いている様子(62巻123ページ)や、

信が楊端和に見惚れてたので睨んだり(65巻53ページ)、
楊端和相手に会話を続けようとちょっかい出していること(55ページ)に
ヤキモチを焼く様子も描かれました。

ヤキモチは特に初めての描写ではなかったでしょうか。
(そういう場面自体に全然縁がないのもありますが笑。)


そして、
平陽城近くで正月を迎えた際、何かしら羌瘣に話しかけたい(笑)
信からの呼びかけに、信と同じノリで相槌したり(65巻13ページ)、

閼与城攻め時、趙軍からも桓騎軍からも望まれない形で
桓騎に特攻した龍白を一刀両断した信を憂いたり(125ページ)、

徐々に、信の心に寄り添った行動が行える様子も描かれてきていました。


直近、宜司平野で飛信隊の道を繋げた直後に信に受け止められ、
馬上で二人で寄り添って束の間の休息をした時(66巻186ページ)、
寄り添う心地さを実感したのかもしれません。

肥下の敗走時に信から受けたハグは、「よく無事に戻った」
(69巻150ページ)とたくましさを見せてくれたと思いきや、
実は自分が帰ってこないことに対する「弱気」が抑えられなかった
信の切ない気持ちを、この時の羌瘣はちゃんと理解し、
信が自分をそこまで大事と思ってくれていた嬉しさや
ハグの心地よさも相まって、
「自分が弱くなる」ことを引き換えにしてでも信に応えたい
と思ったのではないでしょうか。


・・・いやー、めっちゃ成長したよねぇ、羌瘣(感涙)。。。


なので羌瘣は「弱くなる」原因に自ら足を突っ込んだので、
自分が弱くなっている途上にいると考えていそうです。
禁術によって以前のような深い巫舞は使えないかもしれないから
余計にそうでしょう。

だから「必要以上に弱くなるようなことをしてはいけない」考えが、
彼女の現時点での思考の根幹となっている
んだと思われます。


ところで、このように時間を隔てて「弱くなる」理由が
「男女の進展をしたら」から「死を恐れると弱くなる」と変わったのに
なんで羌瘣は「前にも言った」(70巻213ページ)と、
この2つを同じように捉えているのでしょうか。

おそらく羌瘣の中では以前のも今回のも、
「意味的に同じ」だったと言うことなのでしょう。


この↑考察で述べた通り、羌瘣は自分の恋心みたいな気持ちを

「むしろ、嬉しいような、不安なような」(62巻110ページ)

と表現していました。


「嬉しい」気持ちは「信との両想いの幸せな気持ち」であり、
「不安」な気持ちは「信の死への恐怖」と紐づけられてから、
彼女の中ではこの2つの対極の気持ちが表裏一体であり、
切り離せない気持ちであることにロックオンされている状態
とも言い換えられます。

現に、「両想いの幸せな気持ち」が「嬉しい気持ち」に結びついてから、
「不安」の大きさも大きくなってしまった自覚もあったようでした。

だから、
「弱くなってはいけない」
「嬉しい気持ち(恋心)」によって「弱くなってはいけない」
(ここが天幕告白時の理由と一致)

「不安」によって「弱くなってはいけない」
=「信の死への恐怖」によって「弱くなってはいけない」

すなわち、

信にとっては「前に聞いた理由とは異なる」内容である2つの理由は、
羌瘣の中では全く矛盾が起こっていない言葉だったと
言うことなのでしょう。


考察3:羌瘣の「弱くなる」理由の正体


羌瘣にとって(もしかすると一般的にも)
「幸せな気持ち」と「死への恐怖」は
大切な人に抱く表裏一体の気持ちかもしれません。

でもどちらの気持ちも
同じくらいの「弱さ」への相関関係があるわけではないでしょう。


そもそも、羌瘣があまりにも「弱くなる」ことを恐れるため、
「信の死を怖れる」ことが「弱くなる結果」を導いている「原因」
羌瘣は思い込んでいるのでしょう。

でも実際は、「死が怖い」のは、龐煖に破れた経験がもたらした、
「弱くなっていると思い込んでいる」ゆえの「結果」、でしょう。


「弱さ」自体が「原因」なのに、それを「結果」と捉えてしまい、
原因を潰したいと彼女も足掻いているのは分かるのですが
(71巻おまけ漫画で、礼に「結婚」と言わせながら剣を討ち合うとか
 →・・・「死を怖れると弱くなる」どこ行った爆)
所詮「弱くなる不安を抑えるための対処療法」にしかなっていません。

本来対処すべきは「弱くなっている」思い込みを外すことであり、
ひいては今後、それが「死への恐怖」を取ることにつながると、
羌瘣は気がつかなくてはならないでしょう。


プロポーズの後、信が羌瘣の肩を掴んだのは、
視線を固定してきちんと自分の気持ちを伝えるためで、
「約束が二人を強くする」主張の後、話を続けたかったのに、
里典親子による邪魔(笑)によって言えず仕舞いだったと
上リンク記事↑で考察してました。

言いかけたことの中には、「思い込むならば、強くなることだ」
と言うことも含まれていたのかもしれません。


終わりに


今回の2つの考察記事は元々別の記事であったことは、
最初の導入で述べたとおりです。

最初に「弱くなる」理由の話(後半)だけで
記事作るつもりだったのですが、
それだけでは以前のルーツ記事との関連が薄いからという理由(!)で
前半の欠落分析記事をくっつけました。

で、前半部分はご存じのとおり、羌瘣を結構ひどい人間性である
みたいな扱いする文章で、書いていて全然楽しくなかったこともあり、
これが原因で当初予定の恋愛観深堀記事が進んでなかったんですね。


今回、これらの記事を接続することで、
前半で書いていた、羌瘣の欠落した性質の回収がされてしまい
私自身もびっくりでした(笑)。

書きながら全く違うひらめきが突如降ってくることがあり、
今回ももれなくその事例となったわけです。

仕上げ近くではいつものように楽しく書けました。
そのおかげで前半の記事もなんとか仕上げることが出来ました。


最後の考察3について、
今後原作での回収をどういう形でやってくれるのか、
ワクワクしながら見守っていきたいです。

ここまでお付き合いいただき、ありがとうございました。

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