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キングダム考察 羌瘣ルーツの深堀 蚩尤族・羌族における蚩尤候補選定基準は彼女らの「実力」ではない

【考察その15】

と言うわけで今回は少し重ためなテーマになります。
羌瘣の内面(恋愛観)に言及する前に、彼女の生誕に関わるルーツや、
育った環境についてがそれらの考察の前提になると思ったので、
この記事はそう言う意味で今後の記事のプロローグ的な位置付けです。


幽連の仇討ちが終わった後、

「里へは戻らない」(34巻61ページ)
「私の帰る場所は・・・もう他の所にあるんだ」(62ページ)

と蚩尤族の里に戻らない宣言して飛信隊に戻り、
ここで過ごした時間もかなり経ち、
もうすっかり外の人間のはずの羌瘣が、以前、いまだに、

「礼には手を出さないで、これは『身内』の問題だ」(61巻184ページ)
「一族のことは一族でしか分からないところがある」(185ページ)

と、自身を「蚩尤族」扱いしていたのが結構心に引っかかってました。

上記はよく考えれば「羌礼目線の『身内』」な意味かな、とも
察せられますが、そもそも彼女の「蚩尤族」というルーツが
彼女の行動原理や思考の形成に深く携わっていることは間違いなく、
私としても深堀することは念願でした。


人によっては結構心を折られるような内容も書いており、
そもそもキングダム全体の話にはこの考察は関係ないことで、
読者の方々は大方興味がない記事であると思います(苦笑)。
軽いおふざけも挟みつつ、重たすぎないように書くつもりですので、
お付き合いいただければ幸いです。

途中で切りたくなかったので、ちょー長いです。
心してお読みください。
(でもいつもの他の記事くらいのボリュームではあります。)


前提:女だけでどうやって村を営んできたのか


まずは、これです。

そもそもめちゃくちゃ不思議じゃなかったですか?。
「なんでこの村は女だけしかいない状態を保てているのか」、と。


そもそも女だけでは子供を授かれません。

あと、授かったところで都合よく女しか産まれないってある?。
蚩尤族の術に「産み分けの術」なんてものもあったりするの?(笑)。


原作では、中国の当時に似たような境遇の民族がいたことをネタとして
描いたような感じではあったのですが、それは一旦考慮から外し、
原作に表現されている範囲と、自分の現代の常識と照らし合わせて
この記事を書き進めていきます。


女だけで子孫を成していくには、方法は2つです。
・村の女が子供を産む
・村の外から女児を連れてくる


「産む」選択肢は先に挙げた問題もあるので、
先に後述の「外から子供を連れてくる」論から考察しますが、
早速になりますがまずこれはあり得ないでしょう。


と言うのは、蚩尤族となるには

「生まれ持った体質もある」(10巻82ページ)

と羌瘣が以前言っていた通り、女である他に体質も見極める必要があり、
ただでさえ村から外に出られない民族の人間が、
多くの人から才能を見極めて選定し、黙って自分の村に、
村が栄えるくらいまで多く子供を掻っ攫っていくなんて、
どう考えても非効率で現実的ではないです。

そもそも女児が大勢拐われるなんて事件、
いくらマスコミのない時代だとしても国を挙げた大問題になるはずでしょ。
蚩尤族は羌族だけじゃないんだから、他の部族も同じだったら
どんだけ女児攫われてんのよ(苦笑)。

なお、龐煖はそのような感じで連れ去られた子供だったことは、
原作で明かされてましたよね。(58巻63ページ)
もっともこれは一人だったからそこまで大きな問題にはなっていない
にすぎません。


となると「村の女が子供を産む」の選択肢が有効そうです。
これならば「蚩尤族としての体質」については受け継げる可能性が
闇雲に攫ってくるよりもグンと高く、現実的ではあります。

それに以前、羌族の村から逃亡した羌明が、
「羌象が生まれた時まだ(羌明は)里にいた」(33巻150ページ)
と話していることからも、
里で出産が行われていることも確実なようです。


考察:村民はやっぱり村の外に出て男と出会う


前述の通り、村から出られるのは正式な蚩尤だけの掟の女性のみの村で、
どうやって子供が仕込まれるのでしょうか?。


種は外の世界の男で間違いはないんでしょうが、
羌瘣が信からのプロポーズ直前に、自分の村の話をした際、
「(村に)男が入ったら皆に殺される」(70巻209ページ)
と言ってるような環境のようですし、
結局はやっぱり「外の世界の男と外で出会って子を授かる」
くらいしか方法はありません。


ところで、原作の中に以下のような記載がありました。

「外界には羌族につながる小さな一団が存在し・・・」
(33巻138ページ)

この一団の長が、羌瘣が仇討ちの時に幽連の場所をアテンドした羌明です。

羌明は秦で家族を作り、2人の子を授かっているそうです。(144ページ)
この一団については、村と違って、男子禁制ではないようです。


この一団は「何かあれば里に情報を送る役目」(143ページ)とあり、
それが主な仕事であるのはもっともではありますが、
その他の役割のあるなしや、詳細の人員構成は
原作で描かれておらず不明です。

実はこの「小さな一団」が、
羌族に子供を提供する源泉
なのではないでしょうか。


村民が子供を産む場合、
「授かった子供が女児なのか」「女児でも蚩尤の体質を引き継ぐ者なのか」
と言う問題もあり、出産できれば万事OKというわけではありません。
もしそうでない子供を公に産んでしまうと、
その村民は村に居づらくなるでしょう。


この一団の構成員は、羌明と同様、蚩尤体質を持つ人員で構成されており、
一団の者が妊娠後、秘密裏に村に戻って子を産み、
その子が蚩尤体質の女児であることが確認できた場合に限り、
その子を村民として迎え入れることで、
村の子孫を繁栄させていくことは可能かな、と思います。


もっとも、貴重な「蚩尤体質を持つ人員」を、戦闘員として全く育てず、
外の諜報だけに専門で関わらせているのもなんだかもったいない状況です。
そのため一団の者たちが、「元村民」であったり、
村との関わりが大きい人員の場合はともすると「村民と兼任」である
可能性は高いと思います。

羌明は掟破りの裏切り者扱いとなっており、
今後村に戻ることは決してないため、常に外界側にいる
「一団のまとめ役」としての地位がふさわしかったのでしょう。


この「外の一団になる元村民」の選抜については、
実は「蚩尤の候補」になる2名の選抜にも関連があるものと思っています。


考察:羌象と羌瘣に見る蚩尤候補選抜法


この章が本記事のメイン内容になります。


蚩尤候補の2名であった羌象羌瘣
羌族の蚩尤最有力候補として選ばれていたのは羌象で、
彼女が古代神の神器「白鳳」を引き継いでいました。

これ、どういう基準で彼女が最有力と選ばれたのか
不思議ではなかったですか?。

多分、2人が候補者として先に選抜し、
その際に蚩尤候補として神器の剣を授かったと思うのですが、
2人は幼い頃から候補者同士として生活を共にしており、
そんなに小さいうちからはっきりとした剣の腕なんて差がつくのかな?
と疑問に思ったものでした。


羌象と羌瘣は、性格的な違いがありました。

羌象は、外の世界に憧れがあり、姉御気質で、性への興味も含めた(笑)
好奇心旺盛なタイプのようでした。


一方で羌瘣は、外への興味はあまり持ってませんでした。
祭では羌瘣にも生き残って欲しいと言う羌象に対して

「ムリだよ、残るのは一人(象姉)だけ、そう言う掟だ」
(9巻160ページ)

と、自分の欲や大切な人の希望よりも律(掟)を重んじ
そして自分の中でこうと決めたらそれを貫き通す我の強さを持っています。

掟を守ることは絶対と信じ込んでおり、
自分自身も掟に従って死ぬのは勿論だが
掟を無視して祭を進めたことで族長の老人も「皆殺し」にして
構わない(9巻186ページ)観念を持っていました。

一方、羌象に対しては自分を滅してでも守ろうと思うくらい
大事な存在でした。
羌象の「仇討ち」は、羌瘣が人生で唯一「掟に争う」ことを決めた
まさに人生を賭けた目標でした。


彼女らの性格の違いは彼女らだけ見ると
「たまたまかな」と当時は思ったものですが、
その後の蚩尤候補「羌礼」「羌識」の性格の違いも一緒に見てみると、
不思議と上述の違いとの共通点を見ることが出来ました。


羌礼は、信に対してでも
やたら「褒めろ」と要求するほど自己顕示欲が高い子です。
笑顔も多く、正直で、口数も多く、「男とは助平なことはやったのか」
(16巻おまけ漫画206ページ)とか性への興味もある上で、
羌瘣が信に告白した際「男女として進展は望まない」と言う羌瘣に
即座に「なんで!?」と問うている(62巻41ページ)ことから、
男女の営みが人間として自然なものという性の知識もありそうでした。

ご存じのとおり「白鳳」を引き継いでいるのはこの礼です。


羌識は、頭が良く冷静で祭の開始を聞いても動じず(56巻おまけ漫画)、
祭に挑むにあたり、本気の殺気を放ちながら
「躊躇なくお前の首を飛ばすつもりだ」(61巻241ページ)
と礼に告げたり、祭では最後の二人になった時に本気の殺気で
切り掛かりながらも寸止めで止めたり(220ページ)、
自分の信念の行動のためには命をかけた演技が出来る子のようでした。
ただ礼に対しての普段の態度はとても穏やかで、寝相の悪い礼の世話をも
進んで焼いているような描写(56巻224ページ)もありました。


2組の候補者について、まず「白鳳」を引き継ぐ羌象と羌礼の共通点は、
彼女らがもう片方と比べて「外交的」で、外の世界に比較的
馴染みやすそうな性格だと言うところです。
また、「性」への興味も知識もありそうなことも共通点っぽいです。


羌族の村の掟は、
「外に出られるのは祭を勝ち残ったもののみ」
「蚩尤候補は祭までしか生きられない」
「男子禁制」にガチガチに固めれられており、
侵したものは死が待っています。

「男子禁制」は特に、生の意味(子孫を残す)が断たれていると言う
意味を持ち、自分が生きた後は骸になって土くれに戻るだけ、
と明示されている状態です。
性の教育は村では公には施されないシステムなのでしょう。
じゃないと村民たちの存在意義が自分らで保てないでしょうし。

そんな死と隣り合わせな掟の中で「外交的」で前向きにいられるのは、
族内では少数派なのだろうと想像できます。


ここから考えられるのは、
羌族の村では、特定のもののみが共有される形で、羌象と羌礼のような、
外の世界への順応力が高そうなメンバーがグルーピング化されており、
そのグループのメンバーにのみ、
外の世界への憧れ
(犬を飼うと楽しい、など笑)が備わるような、
性教育を含めた教育を施すシステムがある
と言う想定です。


そして、一定レベルの身体能力があることを前提に、そのグループ中から
もっとも自己顕示力強・負けん気強な性格のものを最有力蚩尤候補とし、
その他のグループ員はのちに秘密裏に外の一団員となる
・・・と予想しました。


39巻のおまけ漫画「天幕(テント)つづき」の羌瘣の記憶の中で、
羌象が男とのキスの描写を羌瘣に自慢げに話すシーンがありますが、
これ見て「おい、お前確実にチューしたことあるだろ!!」
と誰もが思ったと思います(笑)。
これは当然悪人集落を修業で襲った際にチューしているのではなく(笑)、
羌象が外にこっそり出て男と会っている表れでしょう。


このことから男女関係に関し、
村の掟が特別免除される場合がある可能性が高い
です。
グループのメンバーにはこっそり外で男に会わせるような機会を与え、
村に迎え入れられる女児を産めたらしれっとそのまま村に居させる。
一方で、出産した子がそのような子供でなかった場合は
子供を村から追い出し、親も子と共に村を出る場合、
外の一団員となる選択肢を与えているのではないでしょうか。

死と隣り合わせの掟の村では、村民がいつの間にか居なくなっている
(死の制裁を受けている)ことが日常茶飯事であり(怖)、
誰かが突然居なくなることは不思議ではないのかもしれません。

羌象はこの外向け要員のグルーピング対象でもあるため、
男に会うため外に行ったことが黙認されたように思われます。
むしろ、蚩尤最有力候補としても外への欲求を一層高める目的で、
「一団の者」が積極的に外に出ることに協力したのかもしれません。


候補2名は同居して生活を共にしているので、女子トーク的に
性教育を受けたもの(羌象)が受けていないもの(羌瘣)に
性の話をしてしまうことはあるのは想定内のことなんでしょう。

ただ、羌瘣はそのためとんでもない子作り方法を
羌象に叩き込まれましたが笑
羌識は、口には恥ずかしくて出せないものの、
おまけ漫画(16巻206ページ)では羌礼と同様の知識と興味を
持っていそうな感じでしたよね笑。

ただ、この村では月経の教育をどうやっているんだろうとの疑問も。
ちゃんと教えれば子作りにも話が及ぶと思うんだけどなぁ。
「月1回の神からの禊」みたいな形で子作りとは
関係ない話にしているのかな?。


話を戻します。


一方でもう一人の蚩尤候補(羌瘣・羌識側)について。
彼女らはぶっちゃけた話、「最有力蚩尤候補の闇おちのエサ」にすぎない、
いわゆる「補欠候補」な位置付けなんだと思われます。

彼女らのミッションは「掟を忠実に守ること」および、
「最有力蚩尤候補をリスペクトすること」です。

そのため、その他大勢の、ゴリゴリに掟の教育に浸かった村民の中から、
依存に寄ってでも信念に従った行動を行えるものを選ぶのでは
と思います。

なので、自分の中で決めたことを曲げない羌瘣だったり、
演技をしてでも信念に従った行動を貫く羌識だったりが
候補となれたのでしょう。


二人が選抜された後、もう一人の候補者がグループ選抜の候補者にのみ
依存するよう、同居など環境からそのように仕向けていきます。

最有力候補は外に目を向けさせる一方で、
もう一人の候補者は完全に内だけに目を向かせ、
「最有力候補」だけが唯一命をかけるような対象であると思わせる。

人間は人から愛されると、
よほど嫌いでない限りはその相手のことを好きになります。
グループ選抜候補者にとっても、もう一人の候補者が
「なくてはならない存在」と認識するように仕向け
て、
最終的に「祭」に挑ませます。


羌識と羌礼が参加した祭の描写は、羌象と羌瘣がもし祭で戦っていたら
と言うデモンストレーションも兼ねていたと思います。
羌瘣が参加していたら間違いなく、どんな形であれ、羌瘣は死んでました。


ともあれ、蚩尤候補選定には、一定基準の身体能力は大前提となりますが、
いわゆる「実力」そのもの(剣術や巫舞の腕)が蚩尤候補の決め手と
言うわけではなく
、その娘の性格や本質と言う「人間性」においてが
候補選抜基準になっている
と想定します。


考察:千年続いている「蚩尤」という制度


選抜条件が「人間性」であることの根拠については、
蚩尤制度を紐解くと表せます。


その人の元からもつ武の才はある程度は必要ですが、それ以上に、
本人の努力や周りの環境が揃うことで一定レベルのエリートが出来てしまう
ことは、現代を生きる私たちも充分実感済みでしょう。

高学歴で高収入な親から産まれる子供は、
彼らが親と同様の環境や考え方で育つことにより、
親と同様、高学歴で高収入な職業に就ける可能性が高いです。

オリンピックメダリストは近年、
裕福な国に属している10代から20代前半の若い年代が
多数派となっている傾向です。
親が一流アスリートであることも多いです。
メダルを取るには幼い頃から英才教育を施すことは
もはや常識となっています。


「蚩尤」選抜制度は、エリート同士が最後の椅子を争って戦う
トーナメント方式で選抜
されます。

最後の椅子取りゲームと言えば東大主席を取るようなもので、
東大主席はトーナメントじゃないですが、毎年必ず誰かが収まっており、
蚩尤も同様に、1回の「祭」で誰かが必ず収まります。
(相討ちとかがあり決まらないとかもあるかもですけどね。)

蚩尤は、幽連のように、
同族で討ちあい闇堕ちして化け物になるものもいれば、
そこそこ強い人がたまたま勝ち上がる場合もあるはずで、
歴代で見ると同じ蚩尤でもその強さにはかなりばらつきがあったはずです。


最後の椅子取りゲームで勝ち上がる際の一般的な条件は、
トーナメントの土俵に上がる実力さえあれば、あとは運と本人次第であり、
必ずしも化け物級の天才である必要はありません。

こう言う制度の中では、
羌族での最有力蚩尤候補者選定基準の考察で挙げたような、
前向きに物事を考えられる人間や自己顕示欲が高い人間の方が勝ち上がれる
可能性が高く、失敗経験が少ない若い年代がより好ましい
ことを、
羌族の長たちは千年もの間に育まれた経験から学んでいたんでしょう。

そのようなものたちは、幼い頃から成功体験を積み重ねることで、
本人の努力に伴った実力がつくことは、想像に難くありません。

なので羌象や羌礼のような人員を「最有力蚩尤候補」とする
伝統になったのだと思います。
まさに「オリンピックメダリスト」的な条件ですね。


一方で、最有力候補でないもう一人の候補者選定条件である
「こうと決めた物事へ拘る」「ともすると依存する」タイプ。
これはサイコパスやADHDという性質に近いこちらのタイプからの方が
天才が出てくる確率が高い
ことに由来していると思います。
その根拠として、我々が知る歴代の偉人の人間性を見てみると
分かると思います。

もう一人の候補者は「最有力候補の闇おちのエサ」となる目的を
最低限果たす必要はありますが、
仮に「化け物級の強さで勝ち上がっていく」ことが出来る天才だったなら、
それはそれで羌族としては全く問題ないでしょう。


最有力候補が受け継ぐ「白鳳」は、鳳凰という
すでに出来上がった神の象徴の名前です。
「神が望んだ存在が扱うに相応しい」と言う意味が
あるのかないのか、神器としての意義としては分かりませんが、
羌族の中でも「望まれた存在」に託される神器と思われます。

一方、羌瘣が受け継いだ「緑穂」は、緑色(青色)の稲穂、
すなわち「若苗」や「早苗」と同様の意味を持ち、
成長途上でこれから大きな力を持つことができる可能性を秘める
ことが隠に込められた名前です。

最有力候補とは異なり、「死を覚悟する存在」に託されるこの神器は、
持ち主によって大きな力を更に発揮できるよう望みを託す
神器なんでしょう。
羌識の刀の名前は不明でしたが、緑穂のような意味合いの名前
だったのではと推察します。


羌族からは、たまたま二人続けて、
最有力候補の実力を上回る「羌瘣」「羌識」という
天才が現れてしまいました。

羌象は羌瘣ほど深い巫舞に入れない(33巻181ページ)一方で、
羌瘣が「あんなに長く(巫舞が)できる」(179ページ)と言うように、
深い巫舞と同等に渡り合える武力を持つほど長く続けることが
出来るようになったのは、まさに羌象の努力の賜物なんでしょう。
加えて、自らその強さを得るため、魄領(はくりょう)の禁を冒すことも
やってしまうくらい途轍もない行動力もありました。
もちろん日々の研磨の中で、天才の羌瘣を相手にすることで、
羌象自身の剣の腕も磨かれていったんでしょう。

間違いなく羌象は、
化け物級の強さを持つ羌瘣と並んだ最有力蚩尤候補だったのでしょうね。


終わりに(おまけ):羌瘣・羌礼どちらの実力が上か


よく羌礼の実力について、羌瘣と同等もしくは蚩尤なんだからそれ以上
との評価を耳にしますが、以上のような考察から、私は、

「ザコなんて一人もいなかった」(61巻216ページ)と
皆が羌礼と実力頭打ちな「祭」と言うトーナメントでたまたま勝ち残った
「一介のエリート」の羌礼よりも、

雑魚とはいえ巫舞を発動した複数人を余力を残した状態でまとめて倒せる
「化け物」(33巻184ページ)の羌瘣の方が、「実力」は圧倒的に上
だと推測しています。


羌瘣「私は強いかな、礼」
羌礼「最強じゃ」
(62巻110ページ)

にもある通り、祭をくぐって現蚩尤でもあるはずの羌礼が
素直に羌瘣の強さを認めています。


そして羌礼は、蚩尤としてどこかの国に支えて大金を得る
選択肢もありながら、むしろ「蚩尤様」である身でわざわざ
「掟を破った裏切り者」の下で働いている
状況です。
礼が羌瘣と再会した時、羌瘣はすでに五千人将で、
大きな屋敷を構えられる(70巻179ページ)ような立場であれど
羌礼自身が兵卒級の立場だったら、多分薄給でしょう。
もしかすると一緒に住まわせてあげてるのを言い訳に、
給料出してもらえてないかもしれない(爆)。

羌族のみならず蚩尤族全体から反感を喰らいそうな
リスクを冒してまでも羌瘣についてきていることは、
羌礼が果てしなく羌瘣を尊敬している現れなのでしょう。
(実は何も考えていないから、と言うのもあり得そうですが。。。苦笑)


羌瘣はそのマイペースさから、元々、
後輩の礼や識から、集団の中の年長者としての尊敬は全くされていない
様子が、25巻おまけ漫画214ページ、61巻187ページの羌瘣の回想の中で
描かれていました。

そんな人間的に尊敬できない(苦笑)羌瘣なのに、妹分たちにとっては
伝統(?)に則い土下座してでも技の教えを乞う存在であることが、
61巻188ページで描かれています。

そもそも、羌礼が闇堕ちしそうになった時も、彼女の本能が、
「羌瘣ならば自分を倒してくれる」ことを悟っていたから
羌瘣を訪ねたのだと思われます。


もちろん2人は、掟の中で「最愛の片割れを失った悲しさ」を
共有する同士、と言うのは表向きの理由だとは思いますけどね。

そしてたまたま二人ともかつての片割れが「しっかり者姉さんタイプ」で、
彼女らには「妹気質」な性格の一致がある上に、
そこそこあるはずの年齢差(5〜6歳くらいはあるはず)もあるし、
「外交的」な羌礼・「内向的」な羌瘣と、役割が各々違うので、
一緒にいるのは苦にならないんだと思います。


いつか羌礼が、羌瘣と同様の役割を期待されすぎなことで
潰れないことを祈ります(笑)。
ま、自己顕示欲の固まりの彼女だったら、
自分の居場所や役割を臨機応変に作れるでしょうし、大丈夫でしょうね笑。

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