AI散文「永遠の散歩者」
街角に立つ――そう呼ばれるのだ――歩行者、太陽の光を浴びて、その影が伸びてゆく、人々の中に散歩する一人の人間。その人物は、足早に歩く人々の間をすり抜け、道路を横切り、公園へと続く小道へと足を運んだ。彼にとってはその散歩がひどく大切だったので、一歩一歩踏みしめる足音を耳に留めるのだった。太陽はその歩みの正しさを照らしていた。
そして、自分の周りに広がる世界を見つめる――高くそびえるビルや草木に囲まれ、四方に広がる空には雲が流れる――彼は、自分の目に映る景色を心に刻んでいた。彼の散歩はまだ始まったばかりだ。彼は力強く、疲れを知らぬ足取りで歩くのだ。あるときは右足、あるときは左足と一歩一歩進みながら、街の中に自分の道を切り開いていった。彼は彼自身の心を指さした。その心には太陽の暖かさが宿っている。
彼はそうやってまた、ほかのどんな人間にもできないほどたやすく前進していくことができた。だが、街はあまりにも多くの人で溢れていた。彼らの住居は果てしなくつづいていた。ひろびろとした野原がひらけているならば、彼はどんなに気持ち良く歩いたことだろう。そして、やがて彼はきっと静かな公園の木陰で休むことだろう。
ところが、そんなことにはならないで、彼はなんと努力しても街の中を歩み続けていることだろう。いつまでたっても彼は様々な景色の中をなんとかして通り抜けようとするのだ。だが、けっしてその景色に飽きることはないだろう。そして、もしうまく街を通り抜けたとしても、何一つ得るところはないだろう。次にはなんとかして別の街に足を踏み入れようとしなければならないだろう。
そして、その街をうまく通り抜けることができても、何一つ得るところはないだろう。いくつもの道路や橋を渡っていかなければならぬのだ。そして、道路や橋の次には新たな風景が広がる。それからふたたび、緑豊かな公園や広場だ。それからまた街並みだ。そういうことをくり返して何度たっても終わることはない。
そして、とうとう最後の道路を越えたところで――だが、けっして、けっして、そんなことは起こるはずがない――やっと彼の前には無限に広がる世界が横たわっているのだ。その世界こそ自分の心の中であり、心のなかに刻まれた記憶が、彼を永遠に歩かせる力となる。だれ一人としてここを通り抜けることはできないし、まして彼の心に刻まれた景色を共有することはできない。
――だが彼は、夕べが訪れると、自分の部屋の窓辺に坐り、心のなかでその散歩の思い出を夢想するのだ。そして、新たな日が始まるたび、再びその道を歩むことを楽しみにしている。彼の心には、街の景色が刻まれたまま、永遠に続く散歩があるのだ。
以下、蛇足。
カフカの「皇帝の使者」をサンプルとして与え、「散歩」をテーマにして散文を書かせてみました。カフカの本文は「青空文庫」内のものを使用。