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ビンテージキリムのクッション

ダイニングのロッキングチェア用に、トルコのビンテージキリムをリメイクしたクッションカバーを買いました。

少し前から、キリムやラグの独特の紋様に妙に惹かれてうっすらと興味はあったのですが、ありがたいことに仕事の関係で、長年バイヤーとして現地の人々と交渉し仕入れをしている人のお話を聞く機会がありました。つくづく出会いの多い職場だと思う。感謝。

▲トークイベントの様子 バイヤーさんの手元にあるのはラグを織るための櫛。大きくて重い。


キリムもラグも、つくられた地域も年代もとにかく広くて複雑で、私にとってはワインの世界みたいに混沌としたものだったけれど、実は口のすぼまった袋型になっているのはもともと岩塩袋として使われていたとか、パンを運んだり食器入れにしたり駱駝の鞍掛け袋にもなったとか、この紋様はあの地域の部族に多く見られるとか、その紋様ひとつひとつにとっても、家紋、オオカミの口、星、リンゴの花、、特定しきれないほどたくさんの意味やモチーフがある。それを少しかじった程度で何が分かるわけでもないけど、踏み込めなかった世界に一歩足を踏み入れることができる。このたった一歩の距離はなかなか自力では縮まらない。私が何となくいいなぁと思っていたそれらの紋様は、ただ美しいデザインというだけではなかった。実際に暮らしの道具として使われてきたものにはやはり意味があって、人から人に伝えられてきたものには祈りや願いが込められている。

バイヤーさんが何気なく言った、皆何かを伝えようとしていたのかもしれないね、という言葉にはっとする。言葉もない時代に、織りの紋様に託されたものは何だったんだろう?言葉がとっても好きなのに、言葉じゃないものにこんなに惹かれるのはどうしてだろう?人の手でたしかにつくられたものには想像が尽きなくて、それを奥行きと呼ぶなら、絵でも写真でも、なんかいいなあと思うものには共通してそれがあるのかもしれない。こうやって、なんかいいなあを集めていけば、私の家は四次元にも五次元にもなるんじゃないかなんて思ってどきどきする。

クッションを置いた次の朝、少し時間があったので、そろそろどうにかしなきゃいけない紅玉を焼きリンゴにして食べました。もたれるとクッションがしゅわ、としずんで、お、三次元でもなかなか満足、などと思ったりしたのですが。

多分このキリムは大きなサンドゥック(花嫁用チェスト)の左上の部分じゃないかな。かわいらしいピンク色と小花模様が印象的だけど、コーカサスっぽいカッコ良い紋様もある。母から娘へ、しなやかな女性になりなさいという願いだったりして。※私の想像です

2023年11月15日


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