夜に香る甘い花
薄く雨が降る中、帰り道を急いでいると甘い香りがした。
思わず足を止める。
夜香木、ナイトジャスミンだ。
夜だけ咲く白くて小さな花だが、可憐な姿に似合わず濃厚な甘い香りを放つ。
うちなーぐちではジュリバナという。
ジュリとは遊女のことだ。
いいところのお嬢様だった祖母はジュリが甘い香りで誘うために植える花だと言って、嫌っていた。
母もいい顔しない花だが、私は大好きだ。
ナイトジャスミンの名の通り、強い甘い香りは脳を震わせる。
子どもの頃に夜香木をたくさん植えている家に遊びに行ったことがある。あまりの香りに脳が痺れ、目眩がしたほどだった。
泰山木や芍薬、白百合。大きな花弁の花が好きだけど、夜香木は別格だ。
一時期、この香りを身にまといたいとフレグランスを探したが、どれもどこか違和感があって結局使いきらなかった。
やっぱり天然ものには敵わない。
雨で蒸れるからマスクを外していたおかげで気づけた甘い香り。
明日晴れたら早く仕事から帰ってきて夜から散歩に出よう。
甘い香りに包まれて、脳を痺れさせたい。
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