私にとって人一倍特別な朝ドラ

NHK連続テレビ小説『虎に翼』。
日本で女性初の弁護士の1人となり、女性法曹の世界を切り開いた三淵嘉子さんをモデルに、男尊女卑の激しい昭和の時代に法曹の世界に飛び込む主人公の物語だ。

私はこの朝ドラを毎朝楽しみに、そして少しほかとは違った特別な気持ちで見ている。

私は両親と共に10年以上朝ドラを見続けてきた「朝ドラファン」である。
この前調べたら、私が最初に見た朝ドラは2011年前期の作品である『おひさま』だった。
つまり今年で朝ドラを見続けて13年目ということになる。3、4作ほど受験などで忙しかったり、自分には合わなかったりで見ていない作品もあるが、毎日毎日朝ドラを見続けてきた。
両親も同じくずっと朝ドラを見ているため、朝ドラから家族の会話が生まれていた。私にわかりやすい反抗期がなかったのは朝ドラの影響かもしれない。
特に好きな作品は『カーネーション』『あまちゃん』『スカーレット』。
現在放送されている『虎に翼』はまだ第4週が始まったところながら、このラインナップに早々に食い込もうとしている。

『虎に翼』の主人公・猪爪寅子のモデルとなった三淵嘉子さんの出身大学は明治大学だ。
実は私、現在その明治大学法学部に通っているのだ。

・10年来の朝ドラファン
・自分の母校出身の偉大なる先輩がモデル
・主題歌を担当する米津玄師さんは私が人生で初めてライブに行った大好きなアーティスト
・主演の伊藤沙莉さんは『ひよっこ』で知って以来大好きな女優

こんな次第で『虎に翼』は放送が始まる前から、色んな意味で私にとって特別な朝ドラだったのだ。


そして4月1日。
『虎に翼』の放送が始まった。
それまで春休みで10時に起きれば早い方だったにも関わらず、私はこの朝ドラをリアタイするために7時50分にアラームをかけ、ちゃんとその時間通りに目を覚ました。
同じく放送を楽しみにしていた母とドキドキしながら初回の放送を見た。

第1話の冒頭、戦争が終わった直後、寅子が肩を震わせながら新聞に掲載された日本国憲法第14条を読むところから始まる。それは男女平等を謳った条文。時は遡り、寅子が女学校卒業を前にお見合いをするシーンへ移り変わる。

第1週では、寅子が法律と出会い、明律大学女子部法科に入学するまでが描かれた。
明律大学とは言うまでもなく、明治大学のことだ。明治時代に創立した大学の多くがそうだが、明治大学も初めは「明治法律学校」という法学を学ぶ学校として始まった。だから今でも法学部は学籍番号の順番が最初だし、「伝統の法」というあだ名もある(明治大学は各学部にあだ名がついている)。
第5回で、寅子が明律大学に入学するにあたって最後の敵として立ちはだかったのが、母・はるだった。しかし、寅子が裁判官である桂場等一郎に女性が法律の世界に飛び込む厳しさを説かれている姿に反論する。そして買う予定だった振袖ではなく法律書専門店へ向かい、寅子に六法全書を買い与えた。
私はこのシーンに、心の底から湧き上がるような感動を覚えた。
私は明治大学に入学した時、ガイダンスでなんの疑問も持たず、大学からデイリー六法を受け取った。カバーを外すと、表に「明治大学」裏にマスコットキャラクターのめいじろうがプリントされているおそらく明治大学特注品だ。
虎に翼を見ている人は分かるだろうが、六法は辞書みたいなものなので非常に重い。
法律科目がある日は大学に六法を持っていかなければならず、さらに同じくらいの大きさの教科書も持っていかねばならず、何度もため息をついたものだ。
だが、女である私がこうしてなんの疑問も持たずに六法を与えられるのは全く当たり前ではなかったのだ。寅子-三淵嘉子さんら法律の世界の先駆者たちが戦い、勝ち取ってきたから、今私は誰からも反対されず、当たり前のように法律を学ぶことができている。
そう思うと、今までただ重いなぁとしか思えていなかった六法がとても大切なものに感じられた。

今週から寅子たちは女子部法科を卒業し、男子学生とともに学ぶ法学部へ進学した。
これからどんな「地獄」が待ち受けているのかは分からないが、寅子たちの後輩としてその姿を見続けようと思う。

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