生きるって、なに?
たかのてるこさんは、オモロイ人だった。のっけから壇上から降りて客席に。「あんたの短所は?」と聞きまくる。「考えすぎなところかな」とお客さんが答える。すかさず「考えすぎる人がいるから世界が回ってるんや。ワテ(あたし)みたいに何も考えん人ばっかりやったら世界が困ってしまうやろ」と返す。大阪のおばちゃんのノリが気持ち良い。リフレーミングの技と間も冴えている。吉本の芸人だと言っても信用されそうな動きと話芸。言ってることはシンプルでわかりやすい。
世界中を旅して出会った人たちから教えてもらったことを素直に受け取り、それを伝えていきたい、という気持ちで毎日「今」を生きてる人が、たかのてるこ。
ある意味「死を意識して生き始めると過去の過ちや未来の心配に支配されずに今を生き始められる」ということも言ってた。(もちろんこんな言い方ではない笑)メメントモリ(死を想え)が、今この瞬間を生ききることにつながる。確かにいい感じ。自分の気持ちも重なる。
それから、「まずは自分を愛せ」という強いメッセージがあった。たかのさん自身も自分に価値がないと思わせられる数々の呪いの言葉をかけられて生きてきたのだろう。そして、その呪いからの解放は旅をすることで得た。呪いはその時代の狭い空間に閉じ込められた仲間内のルールから生まれる。その呪いを破るには、とどまるのではなく行動すること。それも理にかなってる。なにせ人間は動物。物理的に移動することができる。「置かれた場所で咲く必要はない。逃げろ、生きろ、生き延びろ。」動けなくなったとしても諦めるな。人間は、頭の中の空想で飛翔することだってできる。
たかのさんは旅をしてリカバリーをしたが、我々だって誰もが毎日旅をしている。
地球は、38億年前にできた。そこから命が生まれ、人類が旅を始めたのが700万年前。そして、一人ひとりの人間は長くてもたった100年ポッチしかバトンを前に進ませられないが、やっぱり旅を続けてる。
この事実を立ち止まって考えてみると、生まれたことは奇跡であり、ここに存在してることも奇跡。そして、人間の社会が進んで、多くの人が便利に暮らせるようになってるのも奇跡。決して当たり前ではないことがわかる。
この紛れもない事実を旅から学び真剣に受け留めた人が「これこそ、ありがとうだよ」と心の底から言ったので「いい話聞いたな」と思えた。一人ひとりが自分を愛し、余った力で他人を愛すような、愛で成り立つ社会を想像できればやがて呪いは溶けていく。
親鸞の言う機に似た話もあった。自分は自分からは逃れることはできない。それは「機」、自覚した人間存在のこと。そして、人間の中には良いも悪いも様々な可能性が詰まってる。人と比べずに自分を受け入れて愛することが、ついに「生きとし生けるもの全てを愛せよ」につながる。これは壮大なつながり。😊フロムも似たようなこと言ってた。
「生きとし生けるもの全てを愛せよ」真面目な顔で言われてもフツーの人は「そうだね〜」と言って流してしまいそうだけれど、「そんなこと簡単にできるわけないやん。初詣にぎょうさん人が並んでるけれど、みんな家内安全と自分のこと祈ってるやん、私利私欲やね」と一度突っ込んでからの巻き返しで笑わせながら芯を突いてくる。それも踊りながら。笑いが起こる。なぜかいつの間にかみんな納得してる。
講演ではあまり語られていなかったが、たかのさんもその人生の中で、悲劇的で強烈にいたたまれない体験をしていたことが感じ取れた。たかのさんは、その体験からリカバリーしたサバイバーだからこそ皆の心に届く言葉を、発せられるのだろうと思った。
生きるって、なに?
どんな人だって、食べて、うんこして、寝て、思い出を作りあってるだけだよ。
それが愛おしいね。
生きとし生けるものすべてに幸あれ。
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