連れづれシネマ 水金地火木土天アーメン♪
娘にこれ良いらしいよ♪とラインしたら爆速で、「見たかったやつ!」と返ってきたので一緒に『きみの色』を観た。
Perfumeファン(テクノ・ポップ好き)で、「けいおん」も好きな娘はあたりまえにチェックしてたらしい。
こんなストーリー
劇場の出口で開口一番「今年観た映画でいちばん良かったわ」と娘。
「何が刺さったの」と聴くと、きみの他人への気遣いと自分のしたいことの心の葛藤のリアルさだと言った。
山田尚子監督は、企画書でこの映画のモチーフの一つとして、「社会性」=身近な人間関係の変化を上げている。「空気を読む」「空気を読まない」から、どんどんと細分化した人との距離の取り方。失礼のない振る舞いと個人の内面にあるエゴのバランスを絶妙にコントロールしながら生きていく技術。けれどもそこから溢れ出た感情が、閉じ込められることなくその人たちを輝かせてほしいという希望。
ミッションスクールを舞台にした事の意味も大きい。人は制限されてこそ輝くこともあれば、リミットを外した時に見える景色もある。
☆
娘にとっては、あまり馴染みのない世界が散らばってることも刺さったと思う。アニメを見て世界を広げていく彼女には、新しい世界を疑似体験として没入しながら感じられる場でもあるのだろう。
「聖書読もうかな」と微笑みながらもう一言。
映画には、ニーバーの祈りの一節を主人公のとつ子が呟く場面がある。
神よ、変えることのできるものについて、それを変えるだけの勇気をわれらに与えたまえ。アーメン。
シスターが「とつ子さん、その後があるでしょ」と続ける。
変えることのできないものについては、
それを受けいれるだけの冷静さを与えたまえ。
そして、変えることのできるものと、変えることのできないものとを、識別する知恵を与えたまえ。
シスター、ありがと。だけど、それはまだ先のこと。大人に必要な知恵は、これから学べば良き。
とつ子の善き資質は素直でまっすぐ。そして、決して背伸びをしないこと。彼女が青春の真っ只中で、いま悩んでいるのは、一歩足を前に出すことだとわかってる。
☆
ご飯やさんから駅までの帰り道にルックバックの話をした。
「まだ私なんにも経験していないから、たくさんフックがあるのはわかったけど、ふ~んという感じだった」とちょっと哀しそうに言った。やっぱり「きみの色」が良かったのだな。
パステル調でふんわりした絵画のような画風に物語の世界観がドンピシャだったものね。
長崎の街、瀬戸内の海、整えられたミッションスクールの内部、図書館のようなしろねこ堂、バレエ教室のスタジオ、古い教会、路面電車や渡し船から見える景色。
世界が変わるような大きな出来事は挿入されていないけれど、一人ひとりが個人の世界を大きく変えていく岐路に立っている。
紫みの青・緑・黄みの赤が混ざれば白色の光が現れる。
彼らのキャンバスは、まだ真っ白だもんね。娘のキャンバスも真っ白なことに気づいて羨ましくなった。
と、思ったら娘が「もう一軒行く?」
「じゃあ昭和の名残ある酒場に一杯だけ行こか」
テルミンのドキュメンタリー映画の話でもしようかと思ったけれど、頭の中に鳴ったのは水金地火木土天アーメン♪