床上五センチ書店

ほんまる神保町で棚主をしている、こやまです。 43歳男性。 頭に浮かんだことを雑に書いているだけなので、棚主とか関係ない記事が多いかもしれません。

床上五センチ書店

ほんまる神保町で棚主をしている、こやまです。 43歳男性。 頭に浮かんだことを雑に書いているだけなので、棚主とか関係ない記事が多いかもしれません。

最近の記事

ほんまる神保町で、棚主へ19

Twitterでバズった。 私がバズったわけではない。 「なら黙ってろよ」と言われそうだが、私の文章がバズったのだ。 順を追って説明する。 イトーヨーカドー津田沼店が九月いっぱいで閉店することになった。私はかつてここでアルバイトをしていたことがある。というか、私にとって人生のターニングポイントとも言える場所だった。 とはいえ、ここ数年は足を運んでいない。津田沼は千葉だ。東京の西に住む私からしたら、遠い街になってしまった。 かつて頻繁に訪れていた場所がなくなってしまうのは寂し

    • ほんまる神保町で、棚主へ18

      これはもう、第1回のときからずっと自分でも気になっていたことであるが、「ほんまる神保町で、棚主へ」というタイトルはなんとなく日本語としておかしくはないだろうか。 少なくとも、こんなに使い続けるほどいいタイトルだとは思わない。 これは、最初にnoteを書いたときに仮タイトルとして入れておいたものを変更し忘れ、そのまま続いているだけである。 まあ、「床上五センチ書店」もたいがいあれな名前なので、気にしない。 私はたいがいのことは気にしない。 しかし過去百年で最も優れた棚主と呼

      • ほんまる神保町で、棚主へ17

        もう十年以上前になるが、私は離婚した。 義母とまったくうまくいかなかったことが大きな理由だ。 私は普通の両親に育てられてきたと思って生きてきた。 結婚の報告をしたとき、私の両親は三十万円ほど包んでくれ、妻となる人のことを全肯定してくれた。 困ったことがあればなんでも言え。口は出さないが、金ならなんとかするから。そんなスタンスでいてくれた。両親もそれほど裕福な暮らしをしていたわけでもないのに。 それが普通だと思ってしまった私の目には、妻の母というのは異星人のようだった。 と

        • ほんまる神保町で、棚主へ16

          ここ最近、胃腸の調子がおかしかったため、胃カメラと大腸内視鏡検査を受けることとなった。 なにか異常があったとしても早期発見すればだいたいなんとかなる時代だ。検査はやっておくに越したことはない。 しかし胃カメラはともかく、大腸内視鏡検査は事前に下剤を飲んだりしなければならないため、なかなか大変だ。 検査を受けるのは8月25日。 下剤を飲み始めるのは、なんと8月21日の夜からだ。 処方されたのは「ピムロ顆粒」という薬。そこまで強い下剤ではないだろう。名前的に。 これが「グレイ

          ほんまる神保町で、棚主へ15

          私はバツイチであるが、元妻の顔をまったく覚えていない。これは強がりだとかそういうことではなく、ガチで覚えていない。 元から写真をあまり撮るほうではなかったので、私のスマホには妻の写真というのはなかった。あえて撮らなかったのではなく、習慣として写真撮影というものがなかったのだ。 いま、目の前に離婚当時の妻がそのままの姿で現れれば、「あ、そうそう、こんな顔だった!」となるのかもしれないが、いま自力のみで思い出すのは不可能だ。それはたぶん、向こうも同じではないだろうか。 さて

          ほんまる神保町で、棚主へ15

          ほんまる神保町で、棚主へ14

          二十代後半の頃の話。 その日、私は帰宅するために自転車を漕いでいた。 季節としては秋だったと思う。 住宅街の中にある上り坂で、その手前にある平坦な道から勢いをつけなければ登っていけないような道を、私はかっこよく自転車を漕いでいた。 坂道の真ん中あたりで一台のパトカーが追い越していった。 そのパトカーが私の進路を塞ぐように止まったため、私は一旦自転車を降りることになった。 パトカーの運転席からは若い警官。助手席からは年配の警官が降りてきた。 「ちょっとすみません」若いほうの警官

          ほんまる神保町で、棚主へ14

          ほんまる神保町で、棚主へ13

          若い頃、倉庫で派遣アルバイトとして働いていた時期がある。コロナ禍よりずっと前の話だ。 ある日、インフルエンザで休んだ同僚がいた。社員が、「陽性だったみたいです」と教えてくれたのだが、「陽」という明るい字面に引っ張られて「インフルエンザじゃなかったってこと?」みたいな空気が広がった。 コロナ禍で「陽性」という言葉が正しく認識されるようになったが、その当時の私の同僚はそんな感じだった。私を含め、全員ちょっと馬鹿だったのである。 その職場での同僚に、タケさんと呼ばれる五十代の男

          ほんまる神保町で、棚主へ13

          ほんまる神保町で、棚主へ12

          令和六年。ほんまる神保町棚番号二十七番零七号の棚と言えば、当代きっての名棚主、小山が統治する棚である。 小山は豪放磊落にして質実剛健という、棚主として求められる資質を備えた漢である。その小山の名声を決定的にしたのは、去る六月四日のこと。なんと五月末に棚主となったばかりの小山は、この日に最初の一冊を売ってのけたのだ。 これは驚天動地の快挙であり、前代未聞の優れた功績であった。その名将の誉れ高い小山であったが、野心もまた強かった。棚の毛色を変えるべく、新たな手を打つことにしたの

          ほんまる神保町で、棚主へ12

          ほんまる神保町で、棚主へ11

          私は高校生の頃、えぐいほどモテた。 唐突に嘘をつくな、おまえのようなつまらんもんがモテるはずがないだろう、この虚言癖の大馬鹿者め、ヘドロから生まれしヘドロの権化め、悪霊退散! と言われるかもしれないが、本当のことだ。 というのも私の通っていた高校は元は女子高だったものが共学になったものであり、女子生徒の比率が高かった。たぶん、八対二くらいだったのではないか。もちろん八のほうが女子生徒だ。 まだ共学三年目で、私が入学したときの三年生男子は一桁しかいなかったと思う。 三年生とはま

          ほんまる神保町で、棚主へ11

          苦言を呈す。

          私はいつだって書店の味方でありたい。 書店がどんなに馬鹿げたイベントを仕掛けようが、自己満足としか言えないようなポップを作ろうが、「それいいじゃん!」と言いたい。 なんにせよバズれば、普段書店に足を運ばない人も書店に行くかもしれない。 一度行けば、なにか暇なときに「書店に行く」という選択肢が生まれるはずだ。たぶん。 だが、どういうわけか書店はSNSを軽視しているように思える。 前にも書いたが、八重洲ブックセンターグランスタ八重洲店が新規オープンしたとき、公式Twitter(

          ほんまる神保町で、棚主へ⑩

          6月15日(土)。 前日6月14日(金)にオープンしたばかりの、八重洲ブックセンターグランスタ八重洲店へ行くことにした。 八重洲ブックセンターグランスタ八重洲店。 スーパーサイヤ人ゴッドスーパーサイヤ人みたいな名称だ。 どのような店舗なのか、見せてもらおうじゃないか。 東京駅八重洲口から出てすぐ、とのこと。これなら方向音痴で有名な口口ノア・ゾ口でもたどり着けるだろう。 しかし十分後、私はレストラン街をさまよっていた。 間違いない! スタンド攻撃を受けているッ!! スーツ

          ほんまる神保町で、棚主へ⑩

          ほんまる神保町で、棚主へ⑨

          私は自分にとって都合の悪いことが起こると「間違いない! スタンド攻撃を受けているッ!!」と言って誤魔化すようにしている。 「スタンド」とはジョジョの奇妙な冒険に出てくる特殊能力の総称のようなものだ。私はそこまで熱心なジョジョの読者ではないのだが、このセリフだけは都合よく使う。 これは自分の心を守るために必要なことなのだ。 いま起こっている不都合なことはすべて能力者のせいだし、その能力者に攻撃されるくらい、自分は重要な人物なのだと思い込むことができる。 とても便利なのでみな

          ほんまる神保町で、棚主へ⑨

          ほんまる神保町で、棚主へ⑧

          2024年6月8日(土)。 またほんまる神保町へ行ってきた。 まずこの棚を見ていただきたい。 前回訪れたとき、まだ幼い顔つきだった我が棚が、すっかり大人の顔になっている。 「まんま」「ぶーぶ」「ちっこでる」くらいしか語彙がなかった棚が、「書籍の販売こそが我が使命なり」と胸を張るようになった。 すごい……! 戦いの中で成長してる……!! しかしここからどうするか、が問題だ。 私には美的感覚というものが欠けている。この棚になにか装飾などを加えてみたいという思いはあるが、具体

          ほんまる神保町で、棚主へ⑧

          ほんまる神保町で、棚主へ⑦

          私はいまの会社へはドライバーとして入社した。簡単に言えば宅配便だ。 しかし同僚社員に嫌がらせを受け、「馬鹿らしくなったので辞める」と上司に報告した結果、倉庫内での軽作業へと異動することになった。 客観的には閑職ではあるが、これが性に合っていた。 正社員とは思えないような雑務を一手に引き受け、派遣アルバイトのFさん(五十代男性)と二人で、こつこつと地味な作業をするだけ。 雑務オブ雑務であるうえに、私は社員朝礼などに出席しない。 ドライバーをやっていた頃のことを知らない若手社員

          ほんまる神保町で、棚主へ⑦

          ほんまる神保町で、棚主へ⑥

          2024年6月1日(土曜日)。 また来てしまった。ほんまる神保町。 当初は様子を見に行くのは月に一回くらいだろう、と思っていたのだが、なんやかんやで毎週足を運んでいる。 棚主の中にはかなり遠くに住んでいる人もいるらしく、行こうと思えばわりと気楽に行ける距離に住む私は恵まれているのだろう。 右端に面陳されているのは「カラオケ行こ!(和山やま)」という漫画だ。 続編の「ファミレス行こ。」が、私の住む街である蒲田を舞台にしていることからなんとなく親近感を持ち、読んでみたらおも

          ほんまる神保町で、棚主へ⑥

          ほんまる神保町で、棚主へ⑤

          私は静岡県の山奥に生を受けた。 富士山の麓、というか富士山の一部と呼んでいいくらい富士山に近く、山頂に建っている気象庁の観測ドーム(現在は撤去済)が肉眼で見えるような場所で育った。 中学校までは良かった。問題は高校だ。そんな山奥から自力で通える高校はそう多くない。 兄はスポーツ推薦だか特待生だかで高校を選んだ人で、そんな推薦だか特待だかを受けるくらいなので自転車での行動範囲がばか広い。 それに比べると、私の行動範囲のなんと狭いことか。兄と同じ高校を選べば、通学途中で遭難する

          ほんまる神保町で、棚主へ⑤