ほんまる神保町で、棚主へ14
二十代後半の頃の話。
その日、私は帰宅するために自転車を漕いでいた。
季節としては秋だったと思う。
住宅街の中にある上り坂で、その手前にある平坦な道から勢いをつけなければ登っていけないような道を、私はかっこよく自転車を漕いでいた。
坂道の真ん中あたりで一台のパトカーが追い越していった。
そのパトカーが私の進路を塞ぐように止まったため、私は一旦自転車を降りることになった。
パトカーの運転席からは若い警官。助手席からは年配の警官が降りてきた。
「ちょっとすみません」若いほうの警官