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灼熱のラーメンクラス:変革の時

 韓国では以熱治熱(熱を以って熱を制する)という考え方が根付いている。
つまり、暑い夏に敢えて冬に食べるような熱い食べ物を食べる。日本では暑気払いとして鰻を食べるが、韓国ではアツアツの参鶏湯を食べる。
これは東洋医学の考え方に基づくもので、中国でも夏であっても冷たい麺や飲み物をとることは身体に悪いと考えられている。
冷やし中華や、冷製トマトのカッペリーニなどは日本人が考案したメニューと言われている。冷たい烏龍茶も中国ではあり得ないらしい。
8年近く在日韓国人の先生から韓国料理を習っていた私は、「以熱治熱」を叩き込まれ、夏でも火鍋を食べたり熱いお茶を飲んだりするようになっていた。
それを自分のラーメンクラスで、お客さんに押し付けすぎていたかなと思う。
以熱治熱は、欧米人にも適用されうるのだろうか?と疑問に思えてきている。

 ラーメンクラスを始めた当初、ラーメンボウルは普通の陶器のラーメンボウルを使っていた。前もって熱湯を注いでおき、ボウルを一応温めてはいたが、お客さんがラーメンができてから食べるまで長々と写真を撮ったりしていると、確実にスープが冷めていく。それが許せなくて、韓国のトッペギ(チゲなどに使う耐熱のボウル)に各自スープを入れてトッペギごと火にかけることにした。そのあと、その中に別に茹でたラーメンを入れ、トッピングする。
真夏のクラスですら「ぬるいラーメンなんてダメダメ!ダサ過ぎです!本物の日本のラーメンはスーパーホットでなくてはなりません!」と言い放っていた私。

 アメリカのラーメン屋さんのスープはぬるい。マックのコーヒーもぬるいそうだ。なぜなら、熱すぎて舌を火傷したと言って客がその店を訴える可能性があるから。私は、アメリカ人のお客さんが来ると大抵この話をするが、皆大きくうなずく。この話は真実のようだ。
その事もあり、たとえ冬であってもアツアツのラーメンを食べるのが苦手なアメリカ人が多いが、私は決して彼らに合わせてラーメンをぬるくすることはなかった。私のラーメンクラスは、宗教上の理由やアレルギー以外のカスタマイズはやらない。

 だが、ついにこの異常な暑さの中、ラーメンクラス自体の変革を迫られる時がやってきた。

 ぬるいラーメンはぜっっったい嫌だ!じゃあ冷たいラーメンは?
いや以前、氷の入った冷たいラーメンを近所のお店で食べてみたが
全く旨味が感じられなかった。スープの温度と旨味の強さのバランスが悪いんだと思う。自分にはもう少し美味しく作れるかもしれないが、一度熱を通したものを全部キンキンに冷やすとなると時間がかかりすぎる…       (次回に続く)






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