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【米国株】エヌビディア:メガテックの投資積み増しにも関わらず鈍い反応。考えられる4つの理由。

エヌビディア(NVIDIA)株が冴えない展開が続いています。中国のAIスタートアップDeepSeekが、OpenAIの最新モデルに匹敵する性能のAIモデルを発表し、AI開発に必要なGPU計算パワーを劇的に効率化できる可能性が示唆されたことで、データセンター投資の減速懸念が浮上しました。

しかし、最新のメガテック決算では、2025年の設備投資の大幅積み増し姿勢が示され、一見すると安心材料となるはずでした。それでも株価が冴えない反応を続ける理由を考えました。

下記4点が考えられます。

1. 2026年の踊り場懸念

2025年は供給制約で設備投資拡大へ

グーグル、マイクロソフト、メタの2025年の設備投資計画は、いずれも積極的な内容となっています。

  • グーグル:約750億ドル(前年比で大幅増)

  • メタ:600-650億ドル

  • マイクロソフト:高水準の投資継続を表明

各社の決算発表によれば、クラウドAIサービスの需要は依然として堅調で、むしろ供給が追いついていない状況です。マイクロソフトは「2025年度末(2025年6月)までには短期的な需要とほぼ一致する見込み」としており、少なくともそれまでは供給制約が続く見通しです。

2026年以降の不透明感

一方で、2026年以降の設備投資の持続性については不透明感が強まっています。

各社の営業キャッシュフローに対するフリーキャッシュフロー(FCF)比率は、設備投資の増加により大きく低下する見込みです:

  • グーグル:2021年73%→2025年予想51%

  • マイクロソフト:2021年73%→2025年予想52%

  • メタ:2021年68%→2025年予想41%

※フリーキャッシュフロー(FCF)とは
FCF=営業CFー投資CF
事業で稼いだ現金から、必要な投資を行ったあと、どれだけ手元に残るかを示す。配当や自社株買いの原資になる。
設備投資のニーズが少なく、FCFが高い=株主還元余力が大きいことがメガテックが評価されている一因。

また、グーグルは2025年の減価償却費について「過去数年間の設備投資の増加により、減価償却費の成長率がさらに加速する」と警告しています。減価償却は株価をドライブする一株利益に影響するため、非常に重要です。

このように、メガテックは無尽蔵に設備投資を増やせるわけではなく、2026年以降は成長ペースが鈍化する可能性への懸念は理解できます。

2. 中国への輸出規制強化懸念

DeepSeekの躍進は、中国のAI開発能力の高さを示す証左となりました。米WSJによれば、トランプ政権は既にエヌビディアの対中輸出規制の強化を検討しているとされます。

①最新の半導体が中国に渡らないように管理を強化、➁今は許可されているスペックを下げた中国輸出規制適合モデルを更に厳格にする、という2方向での輸出規制の検討に入ることが考えられます。

エヌビディアの直近四半期における中国向け売上高は15%を占めています。さらに、最終仕向け地が中国であり、対中規制すり抜けのために利用されている可能性が指摘されるシンガポール向けを合わせると37%に達します。

エヌビディアは「シンガポールの売上高は中国への転用を示すものではない」と否定していますが、対象の売上規模を見ると規制強化の影響は軽視できない水準となっています。

3. メガテックのカスタムチップ開発

グーグルのTPUやアマゾンのTrainium等、メガテック各社は独自のAIチップ開発を進め、これは潜在的にエヌビディアの半導体の代替となります。しかし、この分野の専門家SemiAnalysisの分析によれば:

  • TPUは個別のチップとしては特筆すべき性能ではないものの、システム全体として効果的

  • Traniumは「Amazon Basics版TPU」と評され、コスト効率を重視した設計

と、カスタムチップは特定用途での最適化や、コスト面での優位性を目指すものの、汎用性やエコシステムの広がりではエヌビディアのGPUに及ばないとされています。

つまり、メインストリームはエヌビディアのGPU、カスタムチップはニッチ、という位置付けです。

4. その他の需要動向

ネオクラウド事業者の動向

ネオクラウドとはグーグル、アマゾン、マイクロソフトよりも小規模ながら、同じようなAIクラウドサービスを外部に提供する企業です。エヌビディアのGPU需要の無視できない部分を占めるとされています。

これらは好調の様子です。

DELLは、メガテックよりも採算の良いネオクラウドへAIサーバー提供を主力とします。DELLの決算によれば、AI向けサーバーの需要は依然として強く、売上は高水準、受注額も36億ドル(前四半期比11%増)を記録し、減速は見られません。

また、ネオクラウドの主要一社でありNebius (NBIS)も、強いAIクラウドサービス需要と良好な資金調達環境から、2024年末までに20,000以上のGPUを導入すると発表していました。

Stargate計画の進展

孫さんのソフトバンク、OpenAI、Oracleが主体となるStargate計画は当初、資金調達に関する不確実性が報じられました。しかし、米WSJによれば、米プライベートクレジット大手Blue Owl Capitalが最初のデータセンターに投資を決定するなど、当初$100Bnの投資計画を賄う資金調達は順調に進んでいるようです。
一方、Stargateの打ち上げた「4年間の最大投資金額$500Bn」はまだ話半分に見られている可能性があり、今後のエヌビディア半導体需要のアップサイドの源泉になりそうです。

まとめ

このように、エヌビディア半導体への短期的な需要は依然として堅調ながら、理にかなった懸念は存在します。

特に、
1. 2026年の踊り場懸念
2. 中国への輸出規制強化懸念

が大きいのではないかと見ています。

だからこそ、エヌビディアのバリュエーションは近年最低水準で推移するなど、投資機会が存在していると見ることも可能です。

状況を注視し、これらの懸念と、世紀の投資テーマ「AI」においていまだに他を寄せ付けないリーダーであるエヌビディアへの威力的な投資機会を天秤にかけ吟味することが求められます。


ディスクレイマー
本記事に記載されている情報は、教育および娯楽目的で提供されるものであり、投資アドバイスや金融商品の売買の推奨を目的としたものではありません。投資には常にリスクが伴い、投資資金の一部または全部を失う可能性があります。投資判断はご自身の責任において行ってください。実際の投資を行う際は、ご自身の投資目的、経験、財務状況等に応じて、必要に応じて専門家にご相談いただくことをお勧めいたします。本記事の内容について、正確性、完全性、有用性等を保証するものではなく、これらの情報を利用することで生じるいかなる損害についても、筆者は一切の責任を負いかねます。

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