【アニメ鑑賞】映画大好きポンポさん
「ようこそ、夢と狂気の世界へ!」
先日、劇場アニメ『映画大好きポンポさん』を鑑賞した。
あらすじはこんな感じ。
主人公は、根暗で自身なし・目の輝きが全くないけれど映画が心から好きで、映像編集に抜群の腕を持つ主人公・ジーン青年。そんな彼がある日、上司である見た目は幼女、中身は超敏腕プロデューサーであるポンポさんから次回作の映画の監督を任されて……。
ピカイチのセンスと有能さを備えた、ハチャメチャでかわいらしいプロデューサー・ポンポさん。
女優を夢見つつも先の見えないバイト生活に明け暮れていたら、突然主演に抜擢されちゃった女の子・ナタリー。
彼・彼女らを取り巻く、様々な背景を抱えた個性豊かなキャラクターたち。そんな人たちに囲まれながら、果たしてジーン監督は無事に映画を作り上げることができるのか?!
正直に言うと、イラストのかわいらしさに油断していたら、開幕5分で頭を殴られた。それくらいの衝撃があった。
まず1つ目、演出がすごい。人物の動きや風景のきらめきに対する描きこみもすごいが、
それよりも、というかそういうのも含めて、圧倒的な情報量を一枚の絵や1つの場面の中に落とし込む工夫が素晴らしいと思った。
しかも無理してやっているのではなく、かえって遊び心すら感じさせるやり方で多すぎる情報をまとめ、ノイズにならない充実さを映像の上に実現させている、と感じた。
2つ目に、動画としての構成がすごい。特に複数のキャラクターの時系列や動きをクロスさせていく構成の精緻さに度肝をぶち抜かれた。
しかも後で原作の漫画を確認してみたら、原作にない人物やシーンが相当織り込まれていたことに気付く。それらが全くの無駄なく、しかし鑑賞者の混乱を呼ぶこともなく、むしろ本作のストーリーとしての面白さをより一層高めるには必要不可欠だった、と自然に思わせるような完全無欠の仕上がりだった。
またジーン自身と、ジーンが撮る映画の主人公とが重なり合っていくプロセスを通して、映画とは何か、映画作りとは何か、という本作のテーマが重厚に示されてもいた。
3つ目に、音。挿入歌の入りが完全に鑑賞者のツボを押さえていたことの他、大塚明夫さんの声が特に良かったと感じた。
それは、大塚さんが単独で良かったという意味ではなくて(それは当たり前)、本作の中で大塚さんの声が他キャラクターに力を上乗せする形で作用していたという点で効果的だった、ということである。
具体的に言ってしまうと、主人公ジーンの声を務めた清水尋也さんは本作が声優としては初作品であった。その多少浮ついた、落ち着きがなく自信のない、ひ弱なテイストがジーンにはピッタリなのだが、ジーンが覚醒していく場面においては力強さが求められる。
そこに、大塚さん演じるキャラクターとジーンの重なり合いが来ることで、清水さんの声に大塚さんの声が掛け合わされ、描写の巧みさもあって、凄まじい迫力を出している、と感じた。可譜さんが歌う主題歌も良い。
本作は良い映画を撮ろうとする人たちの努力を描いた作品であるが、本作自体が「良い映画」であることは文句の付けようがない。
映像に・構成に、ワクワクしたい人へ届けたい。極上の90分だ。