【シリーズ第7回:36歳でアメリカへ移住した女の話】
このストーリーは、
「音楽が暮らしに溶け込んだ町で暮らした~い!!」
と言って、36歳でシカゴへ移り住んだ女の話だ。
前回の話はこちら↓
アメリカでの初カウントダウンライヴは、周りが騒がしすぎて、音楽はほとんど聞こえなかった。
けれども、久しぶりのライヴは実に楽しかった。
もう止まらない。
さっそく次のライヴを検索すると、ココ・テイラーと、メイヴィス・ステイプルズのジョイントコンサートを発見!!
ココ・テイラーといえば、ブルースの女王、シカゴブルース黄金期を築いたアーティストのひとりだ。
メイヴィスは大好きなゴスペルシンガーだ。
シカゴに来たら絶対に見たいと思っていたアーティストが、ココ、メイヴィス、そしてザ・シャイ・ライツだった。
そのうちの二人を、一度に見れてしまうコンサートである。
行かねばならぬ!
会場はダウンタウンのシカゴ・カルチュラル・センターだ。
ホームステイ先の友人に聞くと、
「ダウンタウンだから大丈夫」
と教えてくれた。
ダウンタウンまでの初ドライヴは、ちょっと緊張する。
絶対に遅れたくなかったので、早目に家を出た。
無事、車を駐車場に入れ、建物の中に入った。
???・・・クラシカルな音楽が聞こえてくる・・・???。
開園1時間前に、同じ会場で、他のコンサート?
どう考えてもおかしい。
近くに、でっかい黒人のセキュリティのおじさんが立っていた。
チケットを見せると、
「会場が違うよ」
・・・実際のコンサート会場は、ハロルド・ワシントン・カルチュラル・センターだった。
さて、どうしたものか。
ハロルド・ワシントン・カルチュラル・センターは、サウスサイドにある。
シカゴのサウスとウェストといえば、「治安が悪い」の代名詞。
生きて帰れなかったとしても、おそらく誰も驚かない。
おじさんに会場周辺の治安を聞いてみた。
「建物は大通りに面してるし、会場に行くだけなら大丈夫。ダウンタウンから一本道で15分くらいやで」
と教えてくれた。
こういう時は、私の英語が通じ、おじさんの英語を理解できるから不思議である。
ちょっと迷ったけれど、時間も十分あるし、黒人のおじさんを信じて、行くことにした。
目的地は、ダウンタウンから真っ直ぐ一直線だ。
これ以上、簡単な道はない。
・・・一向に到着しない。
到着できない理由は・・・私が方向音痴だからでした。
運転は大好きだし、ひとりでどこへでも行くけれど、目的地にスムーズにたどりつくことは、意外と少ない。
問題は、道に迷ってから、方向音痴を思い出すことだ。
さて、こちらの治安の悪い場所というのはすぐにわかる。
まず道が暗く、ゴミがそこら中に落ちている。
市の清掃車が来ないからだと聞いている。
清掃車が来ず、市から見捨てられた住民たちは、その腹いせに道端にゴミを捨てる。
結果、環境は悪化の道をたどるのだ。
私は、まさにゴミだらけの道を走っていた。
途中、道路を隔てた反対側に、”チャーチズ・チキン”の看板が見えた。
「やばい・・・」
チャーチズ・チキンは、ケンタッキーのようなファーストフード店で、私の知識によると、治安のよろしくない場所にある。
大通りに出たいけれど、方向はさっぱりわからない。
方向はわからないけれど、ひとつだけ明確にわかっていることがある。
”自力でここから脱出しなければならない”ということだ。
車を降りて、道を聞く勇気はない。
車のロックを確認し、赤信号はそっ~と無視して、走り抜けた。
周辺に全神経を集中する。
広い道を探して、延々と走り続けていると・・・
突然、片側3車線の大通りに出た。
目の前には、燦々とライトに照らし出されたコンサート会場が建っていた。
脱出成功!!!
ココ・テイラーとメイヴス・ステイプルに会えるぞー!!!