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カワイイのいろいろ


 世の中には、本当に常に可愛いものが溢れている、ように思う。子猫や子犬、キャラクターでは『ちいかわ』、よその赤ちゃんは泣いていても可愛いし、よちよち歩きの幼児もアイドルも可愛い。

 見知らぬ双子の赤ちゃんや子猫が戯れている動画を観ては癒される日々である。もちろん、我が子だってかわいい。

 それらの「可愛い」は、視覚から入り、脳で可愛いと認識される。そして思わず無意識に「可愛い」と口から漏れる。

 そして、「見て、これ可愛いよ(可愛くて癒されるよ)」「本当だ、可愛い」と、可愛いの共感があって、共通の可愛いが伝染していく。

 それから見た目ではない可愛さというのもあって、強面俳優がスイーツ好きだったり、サングラスを外したら顔の印象が変わり幼かったりもするのも、まあ可愛いの範疇。

 男子中学生・高校生は見た目とのギャップで、そんなにくだらないことでそこまでふざけられるの⁈という幼さく思える可愛さもある。まぁまぁ、これも起こり得る可愛いの範疇。

 このように可愛いは世の中に は溢れているのだが、この辺からは万人に共通の「可愛い」ではなくなってくる。要するに、共感はされないし、共感を求めなくなってくる。

 最近、「可愛い」と思わず口からは出るが、5秒後くらいに、「え?本当に可愛いのか?」と自分でツッコミを入れることが10回のうち1回くらい起こることがあり、どうやら視覚から入った画が間違った経路を通って脳に伝わることもあるようなのだ。 

 駅にいたおじいさん。おじいさんはオシャレのトレンドアイテム、ポケットたくさん、フィッシングベストを着ている。その上、ショルダーバックにリュックも背負っている。そんなにも収納が必要なのかーと思って見ているうちに、何かを探して胸のポケット、ショルダーバッグの中など手を入れて探っている。もう、そんなにポケットがたくさんあるから、どこに入れたか分からなくなるんだよー、可愛いなぁ、もう。そして5秒後…ん?本当に可愛いのか? 

 いや、可愛くはなかった。大事なものを家に置いてきてかもしれなくて焦っているおじいさんだった。

 高校生男子の空になったお弁当箱を毎晩洗う。蓋を開けると、手羽中の骨だけがコロンとあった。塩胡椒をして焼いて冷凍保存してあったのを、少し隙間があったので今朝お弁当に詰めたものである。それが、空のお弁当にコロンて、可愛いなぁ。そして5秒後…ん?本当に可愛いのか?

 いや、決して可愛くはなかった。それはただの鶏の骨だった。どうやら間違って脳に伝わってしまったようだ。

 見た目も万人が共感する「可愛い」、見た目とは違うギャップを見てしまった時の「可愛い」、脳に間違えて伝わってしまった5秒で訂正される「可愛い」。

 このように、世の中はたくさんの「可愛い」で溢れていると思う。だから誰か、アラフィーのおばさんですが、脳に画が間違えて伝わり「可愛い」と言ってくれないかな、と思う。



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