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【自己紹介・詩】白い秋 ー詩を書く老人ー
noteを始めて二ヶ月が経ちました。まだ三編しか記事を投稿していません。遅ればせながら、やや気恥ずかしいのですが自己紹介を兼ねて詩(のようなもの)を作りました。よろしくお願いします。
白い秋
長かった夏の日々
私は
くたびれたよれよれのサラリーマンでした
昼は雑務に追われる多忙な勤め人
夜は本と酒が好きな凡庸な夢想家
それだけです
でも夏は過ぎ
季節は今
白い秋
空は晴れわたり
大気はどこまでも澄んでいます
海の上
入道雲はいつか消え
はるかに高く鰯雲
おだやかな光が額に差します
さわやかな風が頬を撫でます
もう水着の若者で賑わう砂浜も
クールビズのい並ぶ会議室もいりません
いや 望んでも夏は二度とやってこない
耳を澄ませば心の声が聞こえるでしょう
心の深い井戸から声が聞こえるでしょう
その声にしたがって生きるのです
白い秋 新しい時よ
私は独り それが自由
それが生きるということ
落葉樹の林を通り
畑や果樹園が広がるのを見ながら
光と風を顔に受けて
なだらかな坂道を
一歩一歩ゆっくり降りてゆく
誰もが還ってゆく場所に向かい
白い秋 新しい時よ
私は独り それが自由
それが生きるということ
付記ー〈老い〉をどう生きるか?
青春朱夏白秋玄冬という言葉を二字四個の一連なりの熟語として知ったのは真木悠介(見田宗介)の著作でした。大学生でした。思えば若いころから多くの思想家の本に親しんできましたが真木悠介は今でも心に残っている数少ない一人です。その後随分時間がたち五木寛之氏の「林住期」というエッセイ集を手にしたのは五十歳のときでした。サラリーマンになってから三十年近くが経っていました。感銘しました。古代インドでは人生を、学生期、家住期、林住期、遊行期の四つの時期に分けて考えたということです。五木氏の別の著書にはこういう言葉があります。
「『人生の黄金期』と言えば前半の若者時代、現役世代というのが、今までの通り相場だったのはないでしょうか。しかし、実は後半、なかんずく実社会からリタイアする『林住期』こそがクライマックスなのではないか、意識してそうすべきではないのか、と私は考えるのです。」(五木寛之「嫌老社会を超えて」(中央公論社))
言うまでもなく、表題の「白い秋」は青春朱夏白秋玄冬の白秋から来ています。一方、副題の「詩を書く老人」は、やや畏れ多いことですが、三島由紀夫の短編「詩を書く少年」をもじったものです。
これもよく知られたことですが、三島は〈老い〉を厭悪しました。呪詛と言ってもよい。自然にしたがい肉体が老いてゆくことへの彼の嫌忌はまさに骨がらみのものでした。その目を被いたくなるようなすさまじさは、例えば「豊饒の海」を一読すればよくわかります。結局、三島のあの異様な自裁は、自分は絶対に老いない、〈老い〉を断固として拒否するというただそれだけの意思表示であったようにも思えます。
この世に生を受けた全ての人が老いるわけではありません。しかし、現代の日本人の平均寿命は男性81歳、女性87歳、〈老い〉を迎えることが少数者に許された僥倖というわけでは決してありません。
私は、いつのころからか、〈老い〉をどう生きるかは、〈老い〉を迎えるまでにどう生きてきたかにかかわらず人生で決定的に重要であると考えるようになりました。〈老い〉とは、人生の有限性をひとごとではなく自分の問題として意識するステージです。〈老い〉という賜物をどのように享受するか、それは人生の質を静かに、しかし大きく変えることは間違いない。〈老い〉の日々をそう考えて生きるように努めています。
もちろん、こうした考えは心の深いところでの認識の問題であり、実生活上は、酔生夢死と天涯孤独を信条に、力むことなくのんべんだらりと一人で暮らしています。
もう一言だけ
なお、私は無職の単身独居高齢者(妻子無し甥姪無し)です。一回りほど年下であったパートナーは音楽をこよなく愛し、ストレスの多い勤め人生活のかたわら若いころからアマチュア・ピアニストを続けていましたが、〈老い〉を迎えることはかないませんでした。私は彼女と死別した後、いわゆる「おひとりさま」のhard-core系(?)となりました。未来に待たせてあるのは棺桶のみです。この国の行く末を真剣に考えることはあまりありませんが、一つだけ心強いのは単身独居高齢者が確実に増えてゆくことです(笑)。まあ、政治勢力になることはないでしょうが。
お読みいただき有り難うございました。
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(写真の人物は作者とは関係ありません。)
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