瀬川 研

読書好きです。ジャンルは問いません。また、美術や映画、音楽も幅広く楽しんでいます。でも、どれも全くのアマチュアです。コーヒーやワインを片手に、気軽に、無責任なお喋りをするのが大好きなだけです。最も好きな四字熟語は酔生夢死でしたがパートナーとの死別を契機に天涯孤独も加わりました。

瀬川 研

読書好きです。ジャンルは問いません。また、美術や映画、音楽も幅広く楽しんでいます。でも、どれも全くのアマチュアです。コーヒーやワインを片手に、気軽に、無責任なお喋りをするのが大好きなだけです。最も好きな四字熟語は酔生夢死でしたがパートナーとの死別を契機に天涯孤独も加わりました。

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【自己紹介・詩】白い秋 ー詩を書く老人ー

 noteを始めて二ヶ月が経ちました。まだ三編しか記事を投稿していません。遅ればせながら、やや気恥ずかしいのですが自己紹介を兼ねて詩(のようなもの)を作りました。よろしくお願いします。   白い秋 長かった夏の日々 私は くたびれたよれよれのサラリーマンでした 昼は雑務に追われる多忙な勤め人 夜は本と酒が好きな凡庸な夢想家 それだけです でも夏は過ぎ 季節は今 白い秋 空は晴れわたり 大気はどこまでも澄んでいます 海の上 入道雲はいつか消え はるかに高く鰯雲 おだやかな

    • 【詩】朝の渚

      秋の朝 渚を歩く 私たちに最も近い恒星から 今朝もこの惑星の半球にあまねく光が届く 海がきらめく 波打ちぎわをたどりながら 学校唱歌のように昔を偲ぶ でも 壮年や青年の日々ではない 巻き貝の殻を拾いあげると そうした洞窟に迷い込んだような日々を 一息にくぐり抜け 螺旋の奥に 渦の深くへ 確かにあったあの輝かしい王国へ    *   * 少年の目に映った 夏休みの朝まだきの樹液を啜るカブトムシ まだ胸のふくらんでいない 少女のかぶる麦藁帽子 停電の夜の蝋燭の炎のゆらぎ

      • 【詩】陋屋で秋に入る

        この秋も 歴史は 濁流となって 大河が蛇行しながらも海に向かうように 進んでいるのだろうか? 長い雨の後 暑気は去り 空気は洗われ 塵埃は落ち まだ濡れている舗道に 木犀の香が漂い始めたころ 雷神ペルーンに率いられた 北方の帝国から 鳥が渡ってくるこの島国では 太平洋の対岸のもう一つの帝国に向けて 約束する小指のような形をした半島の 付け根あたりの軍港に近く 毎年 夏のしたたるような 濃い緑に被われた樹々が やがて蕭条とした枯れ木立となる 低い山々の峡にある陋屋の 古

        • 【詩】誰も知らない

          暗い夜の海で難破船から投げ出され うねる波の間につかのま漂う人々の叫び声を 聞くことはできない 遠い朝の渚に打ち寄せられた子供達の亡骸を 見ることはできない その叫喚は私の声ではない 私の妻の声でもない その小さな身体は私の子ではない 三月の昼過ぎ 日差しのぬくもりを額に 微風の柔らかさを頬に受けながら 妻と子と三人で浜辺を散歩する 輝く凪の彼方 明度の異なる青が接する 水平線を眺めていると 波打ちぎわにしゃがみこみ 砂をいじっていた娘が お気に入りのピンクの帽子を少しあ

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        【自己紹介・詩】白い秋 ー詩を書く老人ー

          【詩】窓の外は雨

           私のパートナーは重い心の病に苦しんでいました。当時の彼女の心象風景を想像し言葉にしました。私自身辛いことですし、また、言葉の使い方として「危うい」という思いもあります(そもそもわかるわけがないことを想像し言葉にするという意味で)。しかし、今となっては私しか書けない事柄であるという気持ちがあります。  併せて、彼女への挽歌である既投稿の「不在」と「君のいないピアノ」もお読みいただけると嬉しいです。   窓の外は雨 ここはどこ? 私は今どこにいるのですか? 薄暗く肌寒い部

          【詩】窓の外は雨

          【詩】君のいないピアノ

           パートナーの急逝後に書いた一連の挽歌の一つです。第一作「不在」は投稿済みです。写真の中の絵はデンマークの画家ハマスホイの「ピアノを弾く妻イーダのいる室内」(部分)であり、国立西洋美術館に常設展示されています。   君のいないピアノ ドアを開くと奥の部屋に 君のいないピアノ 椅子だけ置かれたピアノ 昔、僕は訊いたっけ 「別れの曲」ってポピュラーだよね? 君はうつむいて、でも、 ふふと笑いながら答えた あれは、エチュードだけれど、 すっごく難しいのよ 今、音のない部屋に

          【詩】君のいないピアノ

          【詩】不在

           パートナーの急逝という人生で最も衝撃的で悲痛な経験をした後、生まれて初めて書いた詩です。彼女への挽歌です。                          不在 風に揺れる木々の若葉から 木洩れ陽がはだらに落ちる日 あの美しい初夏の日に 君は忽然とこの世界から消えた。 その日を境に 世界は決定的に変わってしまった。 夜が明けないわけではない。 日が昇り日が沈まないわけではない。 星がまたたかないわけではない。 風が頬を撫でないわけではない。 陽が額に差さないわ

          【詩】不在