マガジンのカバー画像

春は遠き夢の果てに

52
かつて存在したという、夢のように美しい梅林を求めて、美佳はその町を訪れる…。 花々に彩られた京都を舞台に織りなされる、不器用で優しい人々の物語。
運営しているクリエイター

2019年4月の記事一覧

春は遠き夢の果てに (十一)

     十一  それから二ヶ月ほど経った、真冬のすごく寒い夜、おばあちゃんから電話があ…

春は遠き夢の果てに (十二)

     十二    ミカちゃんへ  ミカちゃん、今さらこんな手紙を書いてしまってごめん…

春は遠き夢の果てに (十三)

     十三  またサ店で働きはじめて、はじめのころは良かったんよ。顔なじみもいてよく…

春は遠き夢の果てに (十四)

     十四  読み終わってからもしばらく、健吾は両腕に顔を埋めて泣いていた。  やが…

春は遠き夢の果てに (十五)

     十五  桜並木をゆっくり引き返していると、ちょうどゆるやかなカーブから姿を現し…

春は遠き夢の果てに (十六)

     十六  降り注ぐ春の陽光を受けて、満開に咲き誇る桜花はまぶしいくらいに白く輝き…

春は遠き夢の果てに(十七)

     十七  心地良いまどろみから、ふと目覚める。  少しぼんやりしたまま、周囲を見渡す。記憶がぼやけているが、頭上を占める満開の桜を目にして、そうだ、お花見をしていたんだと思う。 「起きた? よく寝てたね」  桜の幹にもたれてゆったりとくつろぐ黒髪の女性が、そう語りかけてくる。ついさっきまで、彼女によく似た黒目勝ちの瞳を持った少女と、どこかで逢っていた気がする。 「う~ん、めちゃ寝てた……。夢見てたわ」 「どんな夢?」 「はっきり覚えてへんけど、お下げのめちゃ可愛い女