シロクマ文芸部 掌編小説「月を吸う」
月の色が一瞬、赤く膨れて、現れ、
俺の無意識な瞬きの間に
薄い雲を靡かせながら、
また白々しく
綺麗な満月の装いに戻っていった。
俺には金がなかった。
数多のギャンブルに
口座ごと焼き尽くされてしまったのだ。
何回目の全焼だろう。
しかし今月は特に負けに負け
給料日までまだ10日余りも残っている。
空腹で眠れず
深い夜の小さな公園のベンチに腰掛けた俺は
ポケットの中でくしゃくしゃになった
タバコの空き箱を未練がましく弄っていると、
そんな俺の醜態を晒すように
頭上から月光