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【論文紹介】光反応と電解反応を組み合わせたアルコールα位の官能基化
Iron-Catalyzed Electrophotochemical α-Functionalization of a Silylcyclobutanol
Organic Letter 2024, 26, 7094-7099.
https://pubs.acs.org/doi/10.1021/acs.orglett.4c02279
2000年代に入り、可視光を活用した有機合成法が急激に開拓されてきた。従来、光触媒の三重項励起状態を介した中心金属から配位子への電子移動(MLCT)に始まる反応が注目されていた。一方、逆に電子が流れる、配位子から中心金属に電子への電荷移動(LMCT)は発展途上である(図1a)。
ところで、4員環骨格は、多くの医薬品や天然物に含まれており(図1b)、ひずんだ環の開裂や官能基化の制御は興味の的である(図1c)。
4員環アルコールやオキシムから、アルコキシやイミノラジカル種を発生させ、環開裂を介した骨格変換反応は数多く報告されていている。一方、シクロブタノールの水酸基根元の官能基化は、1) O-Hの結合解離エネルギーが大きい(~105 kcal)、2)生成したアルコキシラジカルがひずみを解消するようβ位開裂が優先する、ため困難であった。
著者らは、可視光照射下、シリル基の[1,2]シリル転移が進行すれば、水酸基α位にラジカルを生成できると考えた。また電解反応を組み合わせれば、反応を円滑に進行させると期待した(詳細は後述)。
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条件検討の末、1-(メチルジフェニル)シクロブタノールとプロプ-1-エン-2イルスルホン類を基質とした際、MeCN溶媒中、nBu4BF4 (1 euqiv.)、Fe(acac)3 (3 mol%)、PrONa (15 mol%)、共存下、purple LEDと|C (+) Pt (-)|電極を組み合わせることで、目的化合物が得られた。
すなわちFe(III)触媒存在下、可視光と電解反応を組み合わせると、基質の1-シリル-1-シクロブタノールは鉄触媒と錯体形成し、可視光励起を介するLMCTにより、アルコキシラジカル中間体が生成する。生成した中間体は、[1,2]-シリル基転移を起こし、酸素原子α位にラジカルが移動する。炭素ラジカルは求核反応により、目的物が得られる。副生するFe(II)種は、アノードで再酸化を受けて活性種であるFe(III)が再生する(図2)。
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本反応は穏やかな反応条件で進行し、いくつかの医薬品骨格を含む基質でも適用できた。