第62回『同僚ホストの大喧嘩を一瞬で沈めた鬼の拳』
うぃす! 大阪男塾の塾長です。
今、僕はホストクラブのオーナーをやってますが、昔と比べると今のホストは素直で優しい人間が増えた感じがするっす。
過去の記事でも触れましたが、昔はなぜか灯油を持ち歩いたり、常識の枠を越えたデンジャラスホストがわんさかいたっすね。
荒くれ者ばかりが集まってくるので、当然、喧嘩は日常茶飯事。
「俺が一番や!」というお山の大将が大勢集うと、いざこざがいたるところで発生します。
ケンカのきっかけは些細なことが多いんすけど、根っこには「こいつ気に入らんから、いつか理由つけてシバいたる!」みたいな野蛮な考えがあるように感じてました。
そういえば僕が21歳くらいの頃に、こんなことがありました。
同僚のホストが、近くで大喧嘩を始めたんすよ。
最初は「また、やっとるわ」って感じで放置してましたが、取っ組み合いに発展。さすがに「放っておけへんわ」と割って入ったんすよね。
でもふたりとも興奮してるんで、僕が制止しても、収まる気配はまるでありません。
僕はそのとき店を仕切る立場やったんで「こら、示しをつけなとあかんな」と、右拳をぎゅっと握りました。
そして「ええかげんにせえよ。お前ら!」と怒鳴って、壁を思い切りどついたんすね。
バゴンッ!!って大きな音がして、辺りはシーン……。殴ったところには、くっきり拳の跡が。
僕の怒りが伝わったようで、ケンカはそこでストップ。
怒気をはらんだ顔の僕を、少し離れた場所からじいっと見ている男がいました。ユウマさんというホストです。
彼は僕よりもふたつ年下でした。この業界は、年齢ではなく先にキャリアをスタートさせた人間が先輩になるので、ユウマさんは年下先輩でしたね。
ど天然でかわいげのあるユウマさんは、年長の女性客の心を掴むのが抜群に上手い人。そんな彼は、何も言わず僕の方を見てたんす。
壁を殴った代償は大きく、なんと僕は右手の拳を骨折してしまい、その夏は海に行けず終い。「熱くなるもんやないなあ…」と反省。
しかしホストたちは、それから数日するとまたケンカをおっぱじめるんすよ。「ええかげんにしてくれよ」と僕があきれてると、ユウマさんがスクっと立ち上がり「お前ら、やめろ!」と一喝。
僕は右拳を怪我している状態だったので「ユウマさんが叱ってくれるのなら、全て任せよう」と思いました。
彼は右拳を握りしめ「ええか? お前らがケンカを続けるんなら、こうやぞ!」と絶叫し、壁を殴りつけます。
ポコンッ…
小さな音を立てただけで、壁は無傷。
どう見ても、ユウマさんは怪我をしないように、弱パンチを放ってるんすよね。
ストリートファイターの弱パンチも、相当連打しないと相手にダメージを与えられません。
そんなふぬけたパンチで、ケンカが収まるわけがないんすよね。
ケンカをしてたふたりのホストは、ゆうまさんを一瞥しただけで、またケンカを始めました。
するとユウマさんがまた「やめろ、言うてるやろ。やめへんとな~…」と右拳を握って振りかぶり、壁を連打。
ポコンッ…ポコンッ…ポコンッ…
情けない音が、3度響き渡りました。
僕がたまらずに「おもっくそビビってるやないっすか!」とツッコミを入れると、笑いが起こったんです。
別のホストが「ユウマさん、この前のタクマに憧れて、やってるだけやん」と追い打ちをかけたので、さらに笑いが広がりました。
ケンカしてたふたりも、思わずププッと吹き出します。興ざめしたようで、ケンカを中止。
翌日、いつものように出勤してきたユウマさんを見てびっくり。
なんと右拳に、包帯をしてきてたんすよ。
僕は「いや、絶対、怪我してへんでしょ!」とツッコミを入れました。でも彼は真顔で「残念やが粉砕骨折や」と大嘘をついてました。
「ユウマさんのこういう隙だらけのところが愛されキャラたるゆえんなんや」と、わかったエピソードでしたね。
ちなみにユウマさんは今、僕の経営しているホストクラブのグループの社長をやってくれてます。思えば長い付き合いっすよ。
そして笑いはやっぱり「緊張と緩和」が鉄則っすね。
そしてそれ以降僕も滅多に怒ることはなくなり、なるべく笑いでその場を収めようと心がけるようになりました。
やっぱ平和がいちばんっす!
最後まで読んでもらって、あざしたぁ!!