第65回『「広告宣伝車・アドトラックのホストは本当に稼いでるのか問題」を斬る』
うぃす! 大阪男塾の塾長です。
少し前に『明日、私は誰かのカノジョ』(通称『明日カノ』)が話題になりましたね。
『明日カノ』は、章ごとにテーマが変わるんすけど、第4章の『Knockin’on Heaven’s Door』は「ホスト編」。
元ホストで、今はホストクラブオーナーの僕は「どれどれ、お手並み拝見」といった感じで、読み進めてみました。漫画とはいえ噓が描かれてると興ざめするっすが『明日カノ』は、めっちゃリアルで描写が丁寧。
作者の、をのひなおさんが、編集者とともに歌舞伎町のとあるホストクラブへ足を運び、現場を取材してるんで、現役ホストが読んでも違和感なく読めるハイクオリティな漫画やと思います。
『明日カノ』のホスト編では、最後にアドトラックが重要な役割をはたします。
『明日カノ』を読んで初めて、アドトラックの存在を知った人がいたかもしんないっすね。
アドトラックとは、広告宣伝車のことっすね。ホストクラブのアドトラックには、でかでかと売れっ子ホストの顔が車体に表示され、のろのろ低速で街を移動します。
大阪ならキタやミナミといった繁華街周辺を、アドトラックが走ることが多いっすよ。
今のホストの求人は、ネットが主体っすけど、アドトラックを見て「ホストって、めっちゃ稼げるんや!」と業界入りする人間もいます。
アドトラックは、
・ホストクラブの宣伝
・ホスト個人のアピール
の2種類に分類が可能。
ホストは承認欲求が、すさまじく強い生き物っすから「一度でいいからアドトラックに、俺の顔を載せてほしい!」と願う人間は大勢いるっすね。
例えば、歌舞伎町の周辺を走るアドトラックには、ホストの名前とともに「売上1億突破!」などと景気のいいことが書かれてます。
ホストは売れれば大金を手にできる職業で、年収何千万、何億というのも夢ではありません。
ただし表にそのような売上を出しているからといって「実際にそのホストが儲けているか?」といえば、それはまた別の話。
実はそこに、売掛が関係してるんすよね。
ここ数年でホストクラブの売掛問題が、よく取り上げられるようになりました。
売掛とは、ホストクラブに来店したお客さんが「ツケ払い」にした飲食代を指します。
月末に売掛を支払うお客さんも多いですが、中には支払わないままトンズラする不届き者がいるのも確かっすね。
お客さんに飛ばれた場合、売掛を補填するのはホストっす。
ホストが逃げたお客さんを見つけて支払ってもらえれば問題ないのですが、飛んだ人間の消息はなかなか掴めません。
派手に売上をアピールしているホストでも、実は売掛を回収できないまま自己負担でヒーヒー言ってる人間が実は少なくないんすよね。
売上と粗利益は、全然ちがうっす。
1億円の売上があるホストでも「蓋を開ければ火の車」というケースがゼロではありません。
誤解のないように言っておきますが、もちろん全員じゃないっすよ。実際に何千万円、何億って稼いでいるホストもいますから。
ちなみに僕が現役の頃、月1000万の売上を上げたことがあったんすよ。そのときに店の上層部の人に呼ばれて「たくま、喜べ。アドトラックに1000万プレイヤーと書いてお前の顔載せたるわ」って言われたことがあったんすよ。
僕は慌てて「マジでやめてください! 迷惑です」と断りました。
「なんで嫌がるねん?」と不思議そうに尋ねられましたが、そんなもん決まってるやないっすか。自分の顔が街中を走り回ってるなんて、恥ずいっす。
それに1000万なんでまだまだっす。リラックマさんは年間300億円の売上を15年維持してるにも関わらず、300億プレイヤーって書いてトラック走らせたりしてないっすよね。
リラックマさんに比べたら僕の記録なんかプップっす。
中には「お金を稼ぐよりも、アドトラックに俺の名前と顔を載った方が嬉しい!」というホストもいます。「ほんま、価値観は人それぞれやなあ~」と思うっすね。
つまり
承認欲求>お金
というホストは決して珍しくないってことっすね。
まあ強烈な承認欲求は有効活用することで、強烈なガソリンになりますから否定はしないっす。
僕はオフィシャルの自己承認テストで満点を取れるほど自分を承認できるんで、アドトラックと無縁な男なんでしょうね。
最後まで読んでもらって、あざしたぁ!!