大事なことなので、もう一度言います。「この再開発計画を認可したのは都知事です」
神宮外苑では巨大な市街地再開発事業が進んでいます。
2024年7月現在、樹木伐採は一時的に保留となっていますが、このままの流れでは、開発は次の段階へ大きく進みます。
再開発の事業者は三井不動産、伊藤忠、独立行政法人日本スポーツ振興センター、明治神宮の4者。神宮球場と秩父宮ラグビー場の建て替えに加え、
「まちづくり」と称して、本来建てられない高さの商業施設や超高層ビル建設を可能にしてしまう無謀な計画です。
大量の樹木伐採が注目を集めていますが、それだけでなくいちょう並木の存続もこのままでは危ういのです。ヒートアイランド化を加速させる緑の喪失、景観破壊、膨大なCO2排出、風害、騒音、あるいは長期の工事期間中の災害対策などの深刻な住民被害、その他数え上げればきりのない問題だらけの計画です。問題は山ほどありますが、ここで神宮外苑再開発と都知事の関係を確認しておきたいと思います。
初めてこの計画を知ったのは、2021年末の行政による住民説明会でした。一方的に計画内容の説明をした上で、すでに決まったことであり、変更は認められない、ご理解くださいの一点張り。翌年の都市計画審議会でも、十分な議論もないまま強行に可決、あっという間に小池都知事が都市計画決定をしました。事業者ありき、開発推進前提の住民不在の決定でした。
サザンの桑田さんが歌ったように「いつもいつも知らないうちに決まってた」のです。
環境アセスのプロセスに入っても、事業者の資料は問題が多く、審議会はどんどん長引き、それに焦った都は手続きを急ぎ、日本イコモスの「虚偽の調査報告がある」という重大な指摘も無視し、審議会での議論が決着しないまま暴走、小池都知事が認可してしまいました。
大事なことなので、もう一度言います。
「この再開発計画を認可したのは都知事です」
それでも、小池都知事は再開発は民間事業だから都は関係ないと言いますが、違います。この再開発は都が基本計画を発案し、小池都知事が認可したからこそ、実施されているのです。
当然、計画を認可した都知事には大きな責任があります。
わかっていながら、自分には関係がないと責任逃れしているだけです。
計画の見直しを願って届けられた坂本龍一さんからの手紙に対しては「事業者である明治神宮にお出しになったらいいのでは」と返す、その心ない態度には心底驚きました。
これまでに都は、オリンピック開催の国立競技場建て替えをきっかけに、規制緩和や条例変更などの行政手続の裏技、土地の高度利用の手法を駆使し、本来建てられないはずの超高層ビルの建設を可能にしてしまいました。
それだけではありません。
創建以来、神宮外苑の景観や環境を守ってきた風致地区条例もまた、
いつの間にか基準が緩和されていたのです。
小池都知事は民主的な都政、情報開示は一丁目一番地といいますが、この
事業の進め方は真逆です。どこまでもブラックボックス、出てくるのは黒塗りの資料と担当局職員による壊れたレコーダーのような答弁です。
事業者も都も口を揃えて「法的にも手続きにも問題はない」と言いますが、
そもそも両者が結託し、あらかじめ事業計画に合わせて制度を作ってお膳立てし、後から手続きをしているのですから、ピッタリ問題なくあてはまるのは当然です。
なぜこれほどまでに、東京都が事業者の利益のために献身的に動くのでしょうか。三井不動産グループなど10社に、都の局長などの幹部が47人、天下りしていたことが明らかになりました。
公共の財産である土地を事業者にどんどんさし出して、一部の企業、政治家、役人の利益のために尽くす、そして、パーティ券での裏金作り、あからさまな利権の構造そのものです。
今も約7割がこの再開発には反対しているという民意も無視、私たち都民は、いつも置き去りです。
でも、逆に見れば、この歪められた行政手続きを、普通に、まっとうにチェックしていけば、見直すことが可能です。そしてそれを行う権限もまた都知事にあります。
今回の都知事選を通じて、この再開発が単なる民間事業ではなく東京都が深く関わっていること、その決定のプロセスや建築計画には多くの問題があること、また天下りなど政官業の巨大利権が絡んでいること、が明らかになりました。都知事選はひとつの節目ではありましたが、これで何か決着したわけではありません。むしろ争点として問われたことにより、問題点が気づかされ、多くの都民が再開発には反対であることが示されました。
選挙期間中、三井や伊藤忠から、念を押すような強弁なリリースが出されました。明らかに選挙が終わったら、事業を進めていくというメッセージです。第二球場の樹木伐採など、都知事選への影響を恐れて保留にしていたことが動き出すでしょう。
事業を進めるにあたっては、これからも段階的に都や新宿区、港区が関わる
重要なプロセスがあります。
まずは、環境アセス審議会への緑の保全についての見直し案、ラグビー場建築計画の変更案の提出と審議、そして大変重要な明治神宮とJSCをはじめとする事業者の間で交わされる土地の権利変換に、最終的に認可を与えるのも都知事です。区による、風致地区に基づく建築計画や樹木伐採の許可申請も続きます。
誰が都知事であっても、これまで通り、情報収集し、監視し、チェックしていくことに変わりはありません。