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ヴェネツィア名物エル・サオール    ②鰯の甘酢漬け

ヴェネツィア人をつかまえて、「ヴェネツィアの名物料理は?」と尋ねたら、ほぼ全員が「そりゃサオールだろ」と答えるに違いありません。
ヴェネツィア中の料理屋や居酒屋のどこにでもある定番料理、
サオールのお味とは?

#ヴェネツィア人は甘酸っぱい味が大好き

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エル・サオール=EL SAOR、一見スペイン語のようなこの料理名は
ヴェネツィア弁で、イタリア語ならばイル・サポーレ=IL SAPORE
すなわち「味」の意。
味なもの、旨いもの、の代名詞というところでしょうか。
サオールという料理は簡単にいえば「甘酢漬け」。
炒めた玉ねぎと干しブドウの甘味に、アチェート(酢)を加えて甘酸っぱく
味つけしたマリネ料理のことです。このアグロドルチェ=Agrodolceといわれる甘酢っぱい料理の起源はとても古く、ウナギやカレイ等の魚はもちろん、玉ねぎやラディッキョ、きのこなどなど、何でも甘酢に漬けて保存していたことが、古い料理の文献にも記されています。

とにかくヴェネツィア人は、この甘酸っぱい味が大好き。
「ヴェネツィア暮らしがしたけりゃ漁師におなり。そうすりゃ毎日旨い
サオールが食べられる〜」と歌う、ヴェネツィア人なら誰でも知っている
「EL SAOR」というご当地ソングまであるくらい。
毎日食べたいこのサオール、地元の料理店やバーカロ=BACAROといわれる居酒屋では欠かすことのできないヴェネツィア風チケッティ(前菜としても供されるワインの酒肴)の定番です。
もちろんヴェネツィアのマンマたちもサオールを作ります。やはり家々で
そのレシピ=リチェッタが微妙に違っているようで、ビネガーの種類や
甘味に砂糖を加えるかどうかがいつも論争のポイントになります。
ちなみにマンマのリチェッタでは、甘酸っぱい味は、白ワインビネガーと
玉ねぎと干しぶどうの甘味だけで作ります。


〈ヴェネツィア風チケッティ、ワインの肴をずらっと並べて〉
〈ヴェネツィア居酒屋、バーカロ風食事会のメニュー〉
〈代表的なチケッティ鰯料理3品、ギリシャ風、レモンマリネ、サオール〉

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#鰯のサオールのリチェッタ


なかでも最もポピュラーなのが鰯のサオールです。サオールには12~3センチ
くらいの小ぶりの鰯=SARDEが最適。リアルトの魚市場に出かけ、
ぴかぴかに光る小ぶりの鰯を見つけたら買わずにはいられません。

手順としては、まずたっぷりのタマネギをゆっくり炒めて、そこへワインヴィネガーと水、干しブドウを加えて軽く煮込みます。
同時進行で鰯を唐揚げにし、揚げたてをマリネにしていきます。
当然ながらこのサオール、作りたてではなく、味が染みてなじんだ方が数段おいしい。なので、多めに作って2〜3日食すのが常です。
日本人にとってもなじみ深い南蛮漬けに似た味、冷たい白ワイン、
プロセッコやピノ・グリージョがぴったりです。


【鰯のサオールの作り方】
〈材料〉鰯(小ぶりのもの)10〜15匹、玉ねぎ大2個、イタリアンパセリ、
干しぶどう、あれば松の実 / 白ワインビネガーと水(または白ワイン)を半々で割った液400cc目安、塩、胡椒 

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①鰯の下準備/鰯は頭とワタを取り手開きし、きれいに水で洗って、
キッチンペーパーに広げ水気を切っておきます
②マリネ漬け汁を準備/玉ねぎを細切りにし、フライパンにオリーブオイルで焦がさないように気をつけながら、全体にしんなり柔らかく透明になるまでゆっくり炒めます。
ワインビネガーと水を混ぜたもの、を玉ねぎがひたひたになるくらい入れ、刻んだイタリアンパセリ、干しぶどうを加え、塩胡椒で味を整え、
軽く煮込みます。
③鰯を揚げる/鰯に小麦粉をはたき、カラッと唐揚げにします。
④鰯をマリネする/陶器かガラスのバットかやや深めの皿に、揚げた鰯を
並べ、漬け汁を注ぎます。玉ねぎで覆うようにして、仕上げに松の実を
散らします。半日くらい漬け込みます。

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〈ヴェネツィアの食卓にて。マンマのサオール〉

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つのいてんこ
デザイナー、美術家、料理家。イタリアはヴェネツィアに通い、東京においても小さなエネルギーで豊かに暮らす都市型スローライフ「ヴェネツィア的生活」を実践しています。ヴェネツィアのマンマから学んだ家庭料理と暮らしの極意を伝えます。