天地人が注目する今月の宇宙ニュース~ リモートセンシング 編~ Vol.17
天地人は、衛星データを使った土地評価コンサルを行っているJAXA認定ベンチャーです。
地球観測衛星の広域かつ高分解能なリモートセンシングデータ(気象情報・地形情報等)や農業分野の様々なデータを活用した、土地評価サービス「天地人コンパス」を提供しています。
Tenchijin Tech Blogでは、宇宙に関連するさまざまな最新情報を、天地人のエンジニア、研究者、ビジネスリーダーが一歩踏み込んで解説します。
天地人が注目した4つの海外ニュースを紹介します。
今回は、
・インドの宇宙開発を振り返る。今年8月には月着陸ミッションに成功。
・インドのリモートセンシング衛星の過去データのうち欧州をカバーするデータのオープンアクセス化が今後実現。
・オーストラリア、NASAと協力しアルテミス計画の一環として、2026年に月面探査船を送る計画を発表。
・ベゾス地球基金、アフリカの一部地域の環境復興に2,280万ドルを寄付と発表
について取り上げます。
それぞれについて、天地人の専門家が、ニュースの注目ポイントや今後の動向を解説します。
1.天地人が注目したニュース4選!
ニュース①:インドの宇宙開発を振り返る。今年8月には月着陸ミッションに成功。
1975年に国として初めての人工衛星の打ち上げに成功して以降、今年8月には宇宙船Chandrayaan-3による月着陸に成功しているインド。今後は太陽観測衛星Aditya-L1の打ち上げも予定されている。インドの宇宙開発の最大の特徴といわれているのが、費用対効果の高さだ。Chandrayaan-3のミッションはわずか75百万ドルという低予算で行われた。燃料を節約するために直接的なルートではなく、より長い軌道を選択し、効率的なミッションを実現した。
ニュース②:インドのリモートセンシング衛星の過去データのうち欧州をカバーするデータのオープンアクセス化が今後実現。
GAF AG(欧州の衛星データプロバイダー)とESA(欧州宇宙機関)が、ISRO(インド宇宙研究機関)と協力し、インドのリモートセンシング衛星IRS-1CとIRS-1Dから得られた衛星データのオープンアクセス化を目指す。対象となるデータは、1996年〜2005年までの欧州上空のデータで、欧州が運用しているSentinel衛星よりも以前のデータが蓄積されることとなる。これらのデータが欧州の気候変動対策等に活用されることが期待されている。
ニュース③:オーストラリア、NASAと協力しアルテミス計画の一環として、2026年に月面探査船を送る計画を発表。
オーストラリアが宇宙探査の新しい計画を発表した。このプロジェクトは、2026年に始まるアルテミス計画の一部として展開される。アルテミス計画とは、NASAが主導する月探査計画で、月に基地を建設し、人類が月での持続的な活動を行い、さらなる目標として火星探査を実現することを目指す計画だ。
オーストラリアが送る月面探査車は、月の土「レゴリス」を採取し、そこから酸素を抽出する試みを行う予定だ。この探査は月や火星へのさらなる探査のためのロケット燃料製造にも繋がる可能性がある。オーストラリアは、鉱業における地質学やロボットのリモートコントロールの専門知識を活かし、NASAと協力してこのプロジェクトを進める。
ニュース④:ベゾス地球基金、アフリカの一部地域の環境復興に2,280万ドルを寄付と発表
ベゾス地球基金は、ケニアのナイロビで開催されたアフリカ気候サミットにおいて、ケニアのグレーター・リフト・バレー、並びにコンゴ、ルワンダ、ブルンジのキブ湖とルシジ川流域といったアフリカの重要な環境を保護する目的で2,280万ドルを拠出することを発表した。この資金提供は、ベゾス地球基金が進める10億ドル規模の景観再生プロジェクトの一環として、アフリカの再生活動「AFR100」の推進をさらに強化するものである。
この寄付の結果、アフリカの劣化した土地60万ヘクタールの修復が進められ、2050年までに4200万トンの二酸化炭素の吸収が期待される。また、Land & Carbon Labが提供する地球規模の土地モニタリング・ソリューションを利用し、土地被覆の変化と修復の影響を監視する予定である。
2.天地人はこう読む
以下では、本記事で紹介した4つのニュースがなぜ注目されているか、どんなトレンドが今後起こりそうかなど、天地人の専門家の見解を記します。
ニュース1と3は「天地人コンパス MOONの開発者の井上とPRの金子」
ニュース2は「JAXAとの兼業社員でリモートセンシングの専門家である小川」
ニュース4は「環境・サステナビリティの事業開発を得意とする田中」
の見解を記します。
ニュース①:インドの宇宙開発を振り返る。今年8月には月着陸ミッションに成功
この記事のキーポイントは「Chandrayaan-3ミッションがわずか約110億円(約7,500万ドル)という低予算で実施されたこと」と「世界で初めて月の南極に着陸成功したこと」です。
まずは、Chandrayaan-3ミッションがわずか約110億円(約7,500万ドル)という低予算で実施されたことについて解説します。一般的に、宇宙ミッションは膨大なコストがかかります。米国でコストが最も低い宇宙ミッションの一つとして挙げられるアメリカの「DART」ミッションですら、約476億円(約3億2500万ドル)というコストが掛かっており、Chandrayaan-3ミッションは「DART」のコストの4分の1以下で、月探査を行いました。
またChandrayaan-3ミッションの予算が低価格であると感じる比較材料として、ハリウッドの大作SF映画『インターステラー』が挙げられます。この映画の製作費はChandrayaan-3のミッションコストの約2倍。この科学的な偉業を、ハリウッド映画一本分の半分の予算で成し遂げたと考えると、その経済性の高さが際立ちます。
では、なぜこのような低予算での宇宙ミッションが可能となったのでしょうか。その秘密は、月へ向かうルートの工夫にあります。
Chandrayaan-3は、燃料を大量に使って地球の重力を振り切る直接的な経路ではなく、地球の引力を利用して軌道を何度もループさせる方法を選択しました。この方法は、燃料の節約を可能にし、結果的にコストを大幅に抑えることができます。実際、このミッションは40日以上かけて月に到達しました。
次のポイントは「世界で初めて月の南極への着陸に成功したこと」です。
月の南極では、過去の探査で、2008年にChandrayaan-1、2020年にはNASAの成層圏赤外線天文衛星(SOFIA)により、水が存在することを示す有力な証拠が見つかっています。
私たち人間にとって水は生命の源でありますが、宇宙での活動においても、その価値は計り知れません。水は、機器の冷却やロケットの燃料としての役割を果たすことが期待されています。
今回のChandrayaan-3の成功によって月面をより直接的に探査することが可能になり、今後の宇宙開発にとって重要な発見が期待されます。この成功は月面探査だけでなく、宇宙探査における大きな一歩となります。これをきっかけに、宇宙探査の可能性が広がることを心から楽しみにしています。
https://www.planetary.org/articles/water-on-the-moon-guide
(解説:データサイエンティスト 井上・PR 金子)
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