知っているようで知らないGPS衛星解説
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今回の記事では、GPS衛星(測位衛星)について、その起源や仕組み、使い方など幅広く解説していきます。
GPSはアメリカの衛星?!
今回の記事のタイトルにもなっている「GPS」という言葉は、様々な場面で耳にすることが多いのではないでしょうか。実は、このGPS(Global Positioning System)は、アメリカが運用する測位衛星システムのことを指します。測位衛星とは、位置情報の計測に必要な信号を送信する人工衛星のことです。
しかし、測位衛星はアメリカのGPSだけではありません。各国それぞれ独自の測位衛星システムが存在します。まずこの記事のはじめとして、アメリカのGPSだけでなく、世界各国の測位衛星システムについて紹介したいと思います。
公開されている各国の測位衛星について
GPS (アメリカ)
アメリカによって運用されているグローバルな測位システムで、世界中のあらゆる場所で利用可能。1978年に最初の衛星が打ち上げられ、現在では30基以上の衛星が運用されている。軍事用途から始まり、現在では民間利用も広く行われている。GLONASS (ロシア)
ロシアが運用する衛星測位システムで、1982年に最初の衛星が打ち上げられる。特にロシア国内での利用を念頭に置いて開発されていたが、現在では全世界で利用可能。ガリレオ (EU)
ヨーロッパ連合が開発した独自の衛星測位システムで、2005年に最初の衛星が打ち上げられる。商業利用、救急サービス、航空、海上ナビゲーションなど多岐にわたる用途で高精度な位置情報を提供している。北斗 (中国)
中国の独自測位システムで、2000年に最初の衛星が打ち上げられる。北斗はGPSと同じように、世界中どこでも利用可能で、北斗の衛星信号を受信可能な端末があれば誰でも使える仕様になっている。
参考
https://qzss.go.jp/info/archive/gps_200123.html
https://qzss.go.jp/technical/satellites/index.html#GPS
https://www.upr-net.co.jp/info/iot/glonass.html
https://japan.gnss.asia/european-gnss/galileo-programme/
https://wisdom.nec.com/ja/series/tanaka/2020122201/index.html
測位衛星はどれだけ身近なもの?
各国の測位衛星の中には聞き慣れない衛星の名前があったかと思いますが、測位衛星は私たちの日常生活で非常に重要な役割を果たしています。ここでは、具体的な例を通じて、測位衛星がどのように活用されているかをご紹介します。
カーナビやGoogle Map
みなさんが日常的に使われているGoogleマップやカーナビでも、測位衛星が活躍しています。これらの衛星は、地球上の測位衛星の信号が受信可能な端末(カーナビ端末、スマートフォン等)に対する正確な座標情報を提供します。カーナビやGoogleマップは、この位置情報を利用して現在地を特定し、目的地までのルートをリアルタイムで計算し表示します。ユーザーは、これにより迅速かつ正確に目的地に到達するための道案内を受けられます。
さらに、交通状況や道路工事などのリアルタイム情報も組み合わせて最適なルートを提案するため、その時々の状況に合わせた案内が可能になるのです。
ポケモンGOのような位置情報を利用したゲーム
ポケモン GOのような位置情報を利用したゲームも、測位衛星が欠かせません。プレイヤーのスマートフォンは、GPS衛星からの信号を受信して正確な位置を特定します。ゲームはこの位置情報を基に、プレイヤーの現在地をマップ上に表示し、ポケモンやポケストップの位置を示します。
プレイヤーは実際に移動しながらゲーム内のポケモンを捕まえたり、アイテムを集めたりすることで、現実世界とゲームのインタラクティブな体験を楽しむことができます。このように、測位衛星は現実世界とゲームの世界を結びつける重要な役割を果たしています。
もっと測位衛星を知りたい方におすすめ GNSS View
その他にも、現在地の上空にある測位衛星の位置をリアルタイムで確認できるアプリ、GNSS Viewがあります。このアプリでは日本の測位衛星であるみちびきやアメリカのGPSに加えて、ロシアのGLONASS、中国の北斗、欧州のGalileo等の6つの衛星測位に対応しており、アプリからそれぞれの衛星位置を知ることができます。
GNSS Viewのアプリは無料でダウンロードできますので、興味がある方はぜひ試してみてください。
測位衛星が私たちの生活をどれだけ支えているか、その重要性や利便性を実感できたのではないでしょうか。
測位衛星による位置特定の方法
測位衛星は、GPSを含む複数の衛星システムを利用して、地球上の正確な位置を特定します。ここでは、4つの測位衛星を使って位置を特定する方法を解説します。
位置の特定に至るまでの必要な要素
測位衛星はいくつかの手順を踏むことで位置の特定が可能となっています。
①:信号の送信と受信
測位衛星は定期的に、自分の位置情報と時刻情報を含む信号を地球に向けて送信します。これらの信号は、地上のGPS受信機(例えば、スマートフォンやカーナビ)が受信します。
②:距離の計算
GPS受信機は、各衛星からの信号を受信した時刻と、衛星が信号を送信した時刻の差を計測します。この時間差を利用して、各衛星からの距離を計算します。距離は「光速 × 時間差」で求められます。
③:三角測量
3つの衛星の距離情報を用いることで、2次元の位置(緯度と経度)を特定することができます。しかし、正確な位置を求めるためには、高度(標高)も含めた3次元の位置情報が必要です。このため、4つ目の衛星を使用します。
④:位置の特定
4つ目の衛星からの距離情報を追加することで、GPS受信機は緯度、経度、標高の3次元位置を正確に特定できます。また、受信機の内蔵時計の誤差も補正されます。
より具体的なイメージは?
具体的なイメージとして、例えばスマートフォンが4つの異なる衛星からの信号を受信したとします。それぞれの信号を受信した時間差を計測し、各衛星からの距離を計算します。次に、これらの距離を基に三角測量を行い、正確な現在地を特定します。こうしたプロセスを経て、位置情報がカーナビやGoogleマップ、ポケモンGOなどのアプリに表示されます。
参考
https://www.jaxa.jp/countdown/f18/overview/gps_j.html
https://www.gsi.go.jp/common/000143683.pdf
位置特定だけじゃない測位衛星の使い方
これまで、測位衛星の種類や位置特定のプロセスについて紹介しましたが、測位衛星の利用はそれだけにとどまりません。ここでは、海上の波立ち観測、GNSS電波掩蔽技術、そしてSpire社の取り組みなど、測位衛星の多様な活用事例を紹介します。
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