【技術解説】宇宙からの高速インターネット接続~通信技術と気象/回線状況の予測技術の開発で需要の高まる通信衛星に対応~
天地人は、衛星データを使った土地評価コンサルを行っているJAXA認定ベンチャーです。地球観測衛星の広域かつ高分解能なリモートセンシングデータ(気象情報・地形情報等)や農業分野の様々なデータを活用した、土地評価サービス「天地人コンパス」を提供しています。
新型コロナウイルスの拡大により、オンライン会議やゲーム、動画の視聴などオンラインでの活動が活発になっています。それに伴い、通信衛星も需要が高まっているのをご存じでしょうか?利便性に富む日常の中で、実は通信衛星の需要の高まりによる周波数逼迫が問題となっています。
天地人は総務省が令和2年度から実施している「電波資源拡大のための研究開発」に採択され、国立研究開発法人情報通信研究機構、国立大学法人東北大学、三菱電機株式会社と共同で、通信衛星に関する研究開発を進めています。
具体的には、データ群をAI解析することにより、通信需要と気象/回線状況の予測技術を開発し、通信衛星の周波数リソースを効率化する運用計画方式の確立を目指しています。
今回は、需要が高まる通信衛星の周波数逼迫問題に対して、周波数リソースを効率的に運用するために、どのように深層学習を活用して、気象(降雨・雲)予測、渋滞(航空機)予測を行うのかについて解説しました。
天地人の通信衛星に関する研究開発プロジェクトに注目!
冒頭でも触れたように、この2年程で世界的にリモートワークが普及し、高速なインターネットの必要性が高まってきています。今後も、世界人口は増加していくと予測され、携帯電話やパソコン等の通信デバイスの利用者が増加していくことは容易に想像できます。
通信を可能にしているのは、電波です。なお、電波の基本は、2022年9月23日配信のTenchijin tech blogで解説しておりますので、そちらをご覧ください。(無料部分で解説しています。)
電波は電磁波のうち周波数が3THz以下のものを指しますので、利用できる周波数帯には限りがあります。
近年通信デバイスが増加し、電波の利用者が増えてきたため、周波数帯が混雑してきています。
そこで注目を集めているのが通信衛星です。
通信衛星とは、衛星から電波を無線で伝播させることで、テレビ放送やブロードバンドインターネットサービスを提供できる衛星のことです。通信衛星が利用しているのは、300MHz以上の高周波数帯ですが、近年の通信衛星コンステレーション計画が実行に移され、通信衛星の打ち上げが盛んにおこなわれている状況で、通信衛星が利用する周波数帯も混雑してきています。
さらに、通信衛星が利用する高周波の電波は、周波数帯によっては、雨に弱い、雲に弱い等の特徴があったり、電波を利用するデバイスが多いと通信速度が遅くなるという課題があったり、高速通信への足枷となっています。
このように、混雑している周波数帯の電波を効率よく利用することが求められており、効率よく利用する際に、気象状況や通信デバイスの混雑状況を加味して、通信衛星を運用することが求められています。
そこで、JAXAが2025年に打ち上げる予定のETS-9(静止軌道、複数のビームが出せる新しい通信衛星)では、周波数逼迫問題をデータを活用した予測技術で解決しようという研究開発が進んでいます。
複数の地上局や航空機(機内WiFi)と通信することを想定し、通信衛星向けの気象(降雨・雲)予測、渋滞(航空機)予測を行います。気象予測、渋滞予測の結果を、ETS-9の運用計画作成システムに入力することで、ETS-9においてどこにどれだけの電波を発出すればよいかのアドバイスを行う仕組みです。
天地人が担当しているのは、データ群をAI解析し、通信衛星向けの気象(降雨・雲)予測、渋滞(航空機)予測をするシステム、つまり、気象状況予測サブシステム・通信需要予測サブシステムを作成することです。
どのような技術・手法か?
ここからは、気象状況予測サブシステム・通信需要予測サブシステムの仕組みや活用方法について解説します。
気象状況(降雨)予測サブシステム
まず、気象状況予測サブシステムについてです。このアルゴリズムは、地上観測所の気象情報(例:アメダス)や、人工衛星・地上降雨レーダー画像を入力することで、降雨量を予測するためのシステムです。
ETS-9が使用する周波数帯(Kaバンド)は、雨に弱いという特徴があります。雨により電波強度が減衰してしまいます。降雨量の予測を利用し、雨が降っていない場所と通信を行うことで、通信の効率化を図っているのです。
簡単に言えば、「Kaバンド通信衛星のための天気予報(雨情報)」です。
降雨量の予測に用いているのは、2種類の深層学習アルゴリズムです。
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