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【再特集】新陳代謝が激しい!米国の宇宙関連スタートアップ最新情報
天地人は、2050年にも持続可能な地球環境を目指して活動するJAXA認定ベンチャーです。宇宙ビッグデータをWebGISサービス「天地人コンパス」で解析・可視化することで、まだ誰も気付いていない土地の価値や地球の資源を明らかにするサービスを提供しています。
『今日から使える宇宙豆知識 by JAXAベンチャー天地人』では、宇宙に関連するさまざまな最新情報を、天地人のエンジニア、研究者、ビジネスリーダーが一歩踏み込んで解説します。
今回の記事では、世界最大の宇宙市場である米国のスタートアップについて紹介します。米国宇宙市場の最近のニュースや今注目のスタートアップ、そして2022年に注目されたスタートアップが今どうなっているのかといった点から解説していきます。
1. 世界最大の宇宙市場:米国の最新トピックス
まずはじめに、2022年に特集した「宇宙関連スタートアップの最新情報」の記事を参考に、米国市場について振り返り、最新の米国の宇宙ニュースについて紹介します。
2020年の世界におけるスペーステックへの投資額のうち巨額の取引を抽出すると76億ドルで、その取引額の67%を受け取ったのが、米国のスペーステック企業です。
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受け取った投資額上位9社のうち、6社が米国のスタートアップ、3社が中国のスタートアップとなっています。
それ以降、2021年には記録的な150億ドルに達しましたが、金融政策の引き締めにより、2022年には80億ドルへと46%減少しました。
また、2021年時点で世界のスペーステック(大企業、スタートアップ含む)は1万社以上おり、その56.4%が米国のスタートアップ(6,477社)となっています。2位の英国で742社、3位以降カナダ、中国、ドイツ、インド、フランスと続き、日本は12位です。
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米国は、政府からの支援策、民間投資、技術進歩、民間部門や新興企業の参加の増加など、様々な要因により、2022年には54.0%を超える市場シェアを占めました。
詳しくは、過去に配信した米国の宇宙関連スタートアップに関する記事をご覧ください。
それでは、ここまで大きなシェアを誇る米国の宇宙市場において、ここ最近ではどのようなニュースがあったのでしょうか。
SpaceX:衛星間光通信で業界のはるか先に
宇宙ビジネス業界を席巻している米国のSpaceXは、2024年3月の衛星産業カンファレンス「SATELLITE 2024」にて、Starlink向けに開発した光衛星通信端末の外販を発表しました。光衛星通信は、電波を用いた従来の宇宙通信と比べて、高速・大容量・低遅延であり、国際的な周波数調整が不要など多くのメリットを持つ次世代技術です。高速な光衛星通信を使うことで、地上局がない海上や航空機などへも通信サービスの提供が可能になります。
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光衛星通信は長い研究の歴史を持つものの、実用化は始まったばかりで、従来は1対1の通信実証が中心でした。しかしSpaceXは、最近打ち上げた約3000機の衛星には、それぞれ3つの光通信端末が搭載され、低軌道で約9000台による大規模な光メッシュネットワークを構築しています。しかも、その通信速度は100Gbps(ビット/秒)と先端レベルになります。
さらに、このネットワークは1日あたり約26万6000回の光通信を確立し、42PB(ペタバイト)以上のデータをやり取りしているという驚異的な実績も明らかにされました。
NASA:木星の衛星に向け新探査機打ち上げ。生命維持の可能性を探る
NASA(アメリカ航空宇宙局)は、木星の衛星「エウロパ」に生命を維持できる環境が存在する可能性を調査するため、新たな探査機「エウロパ・クリッパー」を打ち上げました。この探査機は、2024年10月14日にフロリダ州ケネディ宇宙センターから発射されました。
「エウロパ・クリッパー」は、幅約30メートル(太陽電池パネル展開時)、重さ約6トンの探査機で、木星周辺を周回しながらエウロパを約50回通過して詳細な観測を行います。エウロパは表面が氷で覆われていますが、その下に液体の水が存在する可能性が指摘されており、探査機はこれを確かめるほか、エウロパの物質構成を分析する計画となっています。
探査機が木星周辺に到達するのは2030年で、2031年から本格的な観測が開始される予定です。このミッションは、地球以外に生命を維持できる環境が存在する可能性を探る重要な試みとされています。
米国国防省:宇宙空間で民間企業と一体化「商業宇宙統合戦略」
米国国防総省は2024年4月2日、宇宙空間で民間企業と一体となり抑止力を強化する「商業宇宙統合戦略」を発表しました。この戦略は、国防総省全体で旧来の慣行を超え、民間宇宙セクターの創意工夫を活用することで弾力性を高め、抑止力を強化することを目的としています。
この戦略は国家防衛戦略に基づき、民間部門が宇宙ビジネスで革新と敏捷性を推進している現状を反映したものです。国防総省によれば、宇宙空間は米国の安全保障と繁栄において重要な役割を果たしており、国防総省の任務も宇宙ベースのサービスに依存しています。他国もこれを理解しており、対衛星兵器の開発を進めてきたのです。
一方で、近年の商業宇宙部門は国家安全保障を支援する可能性を持つ能力やサービスを開発しており、民間企業との統合は宇宙分野における国家安全保障の強靭性を向上させるとともに、安全で安定した宇宙環境の実現に寄与するとしています。
この戦略は、打ち上げや宇宙機能、宇宙ネットワークの構築を専門とする何百もの民間企業と幅広い分野で協力するという国防総省の明確な意思表示だとしています。
2. 2022年の注目スタートアップ5社は今何している?
ここでは、過去に配信した「米国の宇宙関連スタートアップ特集」で取り上げた2022年注目のスタートアップ5社の最近の動向や現在どのような取り組みを行っているのか、紹介していきます。
ここでは、過去に配信した「米国の宇宙関連スタートアップ特集」で取り上げた2022年注目のスタートアップ5社の最近の動向や現在どのような取り組みを行っているのか、紹介していきます。
GHGSat
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GHGSatは、2011年にカナダ・モントリオールで設立されたスタートアップで、温室効果ガス排出を高精度に検出するための衛星開発と観測サービスを提供しています。その高い技術力により、施設単位での排出量特定が可能で、2021年にはトルクメニスタンの天然ガスパイプラインでのガス漏れを宇宙から検知したことで注目を集めました。
最近では、GHGSatは衛星コンステレーションの拡大に注力しています。2023年は、10機の温室効果ガス観測衛星を構築する目標を掲げ、観測ネットワークの規模を拡大していました。そして現在は、世界最大の商用温室効果ガス観測衛星群を運用しており、2023年だけでも85か国で300万回以上の観測を実施し、約16,000件の大規模メタン排出をしていました特定しました。
また、GHGSatは2026年末までにさらに9基の衛星を打ち上げ、メタン排出量の監視能力を倍増させる計画を進めています。この取り組みにより、ほぼ毎日メタン排出を検出・測定できるようになる見込みで、気候変動対策への貢献が一層期待されています。さらに、日本の三菱電機や三菱UFJ銀行などとも連携し、衛星データを活用した排出量の可視化サービスを共同で開発しており、国際的なパートナーシップも強化しています。 (プレスリリース)
Slingshot Aerospace
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Slingshot Aerospaceは2016年にテキサス州で創業したスタートアップで、衛星の衝突回避を目的としたAI解析による情報提供を行っています。同社は人工衛星やスペースデブリの軌道データを分析し、衛星運用事業者やロケット打ち上げ事業者に安全で効率的な運用のための情報を提供しています。
2023年の注目動向としては、人工衛星市場の急速な成長とそれに伴う課題を明らかにした初の「State of Satellite Deployments & Orbital Operations」レポートの発表が挙げられます。このレポートでは、2023年末時点で12,597機の衛星(うち3,356機が非稼働)が軌道上に存在し、前年に比べて衛星打ち上げが19.9%増加したことを報告しています。特に通信衛星の需要が顕著で、新たに配備された衛星の79%を占めました。一方で、非稼働衛星がLEO(低軌道)で混雑を引き起こし、スペースデブリ問題が深刻化している点も指摘されています。
これらの取り組みは、急速に増加する商業衛星と混雑する軌道の課題にアプローチするだけでなく、安心で効率的な持続可能な宇宙開発を実現する一助となるでしょう。
Skyloom
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Skyloomは、宇宙空間を活用した光通信技術でリーダーシップを目指す米国のスタートアップで、低軌道衛星から膨大なデータを効率的に地上に送る革新的ソリューションの開発を進めています。特に、高速かつ大容量のデータ転送を可能にする光通信端末(OCT)の開発で注目されています。
2024年には元Orbcomm CEOのマーク・アイゼンバーグ氏が新CEOに就任し、創業者のマルコス・フランセシーニ氏が社長として引き続き経営に関与する新体制が発足。これにより、Skyloomはスタートアップから次の成長段階へ進む重要な転換点を迎えています。今後、光通信端末の商業化を実現し、2020年代後半にはさらに市場拡大を目指す計画です。また、日本電気(NEC)との提携を通じ、100 Gbps以上の高速光通信端末を共同開発。2025年末までの完成、翌年の宇宙実証試験を予定しています。
一方で、Skyloomにとって大きな課題となるのは、スペースXのような巨大な競合企業の存在です。スペースXはすでに自社の通信インフラ「Starlink」を通じて光通信端末を展開しており、競争は激化しています。こうした状況下で、Skyloomがどのように差別化を図り、競争の中で生き残るかが問われています。
CANNAE / Totum Labs
CANNAEは推進剤を使わない画期的な推進機を開発し、低重量・低コストでの衛星運用を目指していました。また、Totum Labsは低軌道衛星コンステレーションを活用してIoTデバイスを屋内外でトラッキングできる技術を提供し、物流や農業分野への貢献が期待されていました。しかし、これらの企業は現在既に事業を停止しています。たとえ技術的に革新的なアイデアを持つ企業であっても、市場の需要や資金調達の壁、競争環境といった多くの要因が成功を左右してしまいます。競争が激しい米国では、宇宙市場において毎年多くのスタートアップが生まれる一方で、事業をやめてしまう企業も少なくありません。米国のスタートアップ業界は、革新のスピードが早い一方で、その新陳代謝の激しさも特徴的ですね。
3. 最新版!米国の注目スタートアップ
最後に、最新版の米国注目スタートアップを紹介します。
米国のテックメディア「TechCrunch」が主催するスタートアップの大型イベント「Disrupt 2024」は、「スタートアップの登竜門」として知られ、起業家や投資家が集結する注目度の高いイベントです。ここでは、宇宙産業に特化した「Space Stage」のスタートアップピッチコンテストでファイナリストに選ばれた注目の5社を紹介します。
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