【特集】世界の低軌道小型衛星コンステレーション計画:次世代のスタンダードは光通信衛星
天地人は、衛星データを使った土地評価コンサルを行っているJAXA認定ベンチャーです。地球観測衛星の広域かつ高分解能なリモートセンシングデータ(気象情報・地形情報等)や農業分野の様々なデータを活用した、土地評価サービス「天地人コンパス」を提供しています。
本日は、天地人が注目する低軌道小型衛星コンステレーション計画の紹介です。
これまでの宇宙開発は先進国の政府主導で進められてきました。
現在では、技術革新による人工衛星打ち上げコストの低下、衛星の小型化、グローバル化・国際協力の進展や規制緩和に伴って参入障壁が下がってきています。これにより、先進国のみならず発展途上国や民間企業、スタートアップなど多くのプレーヤーが宇宙開発・ビジネスに次々と参入しています。
特に、NewSpace(※1)と呼ばれる新しく宇宙産業に参画する民間企業は、大規模な衛星コンステレーション計画を発表。地球観測やブロードバンドインターネットの提供を目的に、低軌道上に数千から一万機以上の人工衛星を打ち上げることを計画し、一部を実行に移している企業が出てきています。
天地人では、地球観測衛星が提供するリモートセンシングデータを活用した土地評価サービスを展開しており、データが高頻度化、高解像度化する可能性のある低軌道小型衛星コンステレーションの計画の状況を注視しています。
低軌道小型衛星コンステレーションとは?
低軌道(Low earth orbit: LEO)
人工衛星は地球を周回する軌道をとおりますが、軌道の地表面の高さによって分類がなされています。今回注目するのは、高度の低い低軌道です。
低軌道は、高度100km~2,000kmまでの軌道で、コンステレーションの計画の大半が低軌道を周回するものです。
低軌道だと、人工衛星にとってどのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。人工衛星のミッション別にみてみましょう。
【ミッション:地球観測】
メリット:地表から近いため高解像度の観測が可能です。
デメリット:衛星は地球を90~120分に1周しますが、地球は1日に1周するため、衛星が1基だと地表面の一部しか観測できません。
【ミッション:衛星通信】
メリット:地表から近いため地上局と高速・低遅延で通信が可能です。
デメリット:地球観測と同様に、衛星が1基だと一部の地上局とのみしか通信できません。
ミッション別にみると、低軌道を周回する衛星は地表面に近いことがメリットとなる一方で、地上の一部しか通過しないことがデメリットとなることがわかります。
このデメリットを克服するために、衛星を多数打ち上げ、数10基~数1000基でコンステレーションを構成します。これにより、地球上のどこでも観測でき、どの地上局とでも通信できるようにするのが、低軌道小型衛星コンステレーション計画の重要ポイントです。
小型衛星
このように低軌道では、衛星を多数打ち上げ、コンステレーションを構成する必要があります。
多数の衛星を製造するには、コストがかかるので、コストダウンのために小型化・短寿命化が重要となります。
SpaceXが展開している通信衛星コンステレーション計画StarLinkでは、現在打ち上げが完了している通信衛星の重さはおよそ260kgといわれています。一方で、JAXAが開発している静止軌道(高度約35,000km)上に打ち上げる予定の衛星通信、技術試験衛星9号機(ETS-9)の重さはおよそ4.9tの計画です。
このように比較すると、低軌道小型衛星コンステレーションで利用される衛星の小ささを感じていただけると思います。
2022年6月24日配信の天地人Noteでご紹介した「天地人が注目する今月の宇宙ニュース~衛星通信編~ Vol.2」においても、コストダウンのために通信用アンテナを3Dプリントで製造する企業も出てきています。
低軌道小型衛星コンステレーションの利用目的
2022年1月時点で、世界には289の民間衛星コンステレーション計画があるといわれています。そのうちの90%以上が低軌道におけるコンステレーションです。
それでは、低軌道小型衛星コンステレーションの利用目的はどのようなものでしょうか。
2022年1月時点での、世界における低軌道小型衛星コンステレーション計画の利用目的別集計を見てみると、
IoT/M2M(地上のIoTデバイスのトラッキング・センサからのデータ受信等) 66件
Optical Earth Observation(光学センサによる地球観測) 51件
Broadband Internet(ブロードバンドインターネットの提供) 43件
の3つのアプリケーションが突出して多いことがわかります。
IoT/M2MとBroadband Internetは通信衛星、Optical Earth Observationは観測衛星であるため、低軌道小型衛星コンステレーション計画では、通信衛星の注目度が高いことがわかります。
それぞれの利用目的において、既に衛星を打ち上げてコンステレーションを構築しつつある企業とその衛星数(2022年1月時点)を見てみましょう。
IoT/M2M
Swarm Technologies(米国)121基
Orbcomm(米国)50基
Globalstar(米国)24基
Optical Earth Observation
Planet Labs(米国)475基
Satellogic(アルゼンチン) 20基
Broadband Internet
SpaceX(米国)1740基
OneWeb (米国)254基
Kepler Communications(カナダ)15基
どの利用目的においても、コンステレーションの構築において米国企業が一歩リードしていることがわかります。
天地人が注目するコンステレーションの紹介・解説
天地人が注目するコンステレーション計画として、以下の2つを紹介し、解説します。
データ中継
量子鍵配送
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