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ロシア(ソ連)の宇宙開発の歴史ー冷戦による技術発展と国際協力関係の変化ー

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本記事では、ロシアの宇宙開発の歴史を取り上げます。2022年のロシアによるウクライナ侵攻以降、宇宙開発における協力関係が変化しつつありますが、過去のロシアの宇宙史はどのようなものなのでしょうか。本記事では、米ソ間の宇宙開発競争の歴史、近年のロシアの宇宙産業の再編と国際協力関係の変化、そして女性の宇宙飛行士について詳しく紹介します。


1.米ソ宇宙開発競争の歴史


冷戦時代、米ソ両国は宇宙開発競争を通じて技術的優位性を示し、その過程で人工衛星、有人宇宙飛行、月面到達といった歴史的偉業を達成しました。これらの成果は、両国の軍事力強化と国際的な威信を高めるための手段として行われましたが、やがて協力へと変化していく過程も見られました。
冷戦の初期、米ソ両国は長射程の戦略ミサイルの開発を進めており、その技術は人工衛星の打ち上げにも活用されました。1957年10月4日、ソ連はスプートニク1号を打ち上げ、人類初の人工衛星として地球軌道に乗せました。この成功は「スプートニク・ショック」として知られ、アメリカに大きな衝撃を与えました。アメリカはソ連の技術的優位性を脅威と感じ、翌年にはNASAを設立して本格的な宇宙開発に乗り出しました。

なお、米国の宇宙開発の歴史に関しては以下の記事で解説しています。ぜひご覧ください。


人類初の人工衛星:スプートニク1号 出典

スプートニク1号に続いて、米ソ両国は次の目標として有人衛星の打ち上げを目指しました。1961年4月12日、ソ連のユーリ・ガガーリンがヴォストーク1号に搭乗し、人類初の有人軌道飛行に成功しました。アメリカはこれに対抗して1962年2月20日、ジョン・グレンを乗せたフレンドシップ7号を打ち上げ地球を周回しましたが、技術的にはソ連が一歩先を行っていました。


初の有人宇宙船となったヴォストーク1号 出典


ユーリ・ガガーリン 出典

1960年代後半には、月面到達を目的とした開発が進められました。ソ連は1966年にルナ9号で月面軟着陸を成功させ、アメリカは同年にサーベイヤー1号で月面到達に成功しました。しかし、技術格差が逆転したのは1969年7月20日、アメリカによるアポロ11号の月面着陸成功でした。ニール・アームストロングとバズ・オルドリンは、人類初の月面歩行を果たし、アメリカの技術力を世界に示しました。

冷戦下での宇宙開発競争は、当初は米ソ両国の軍事力と国際的な威信を高めるための手段として進められましたが、1969年のアポロ11号の成功以降、競争は徐々に緩和されました。その背景としては、米ソの緊張緩和(デタント)や、他国の宇宙開発参入、宇宙開発への世論の関心の低下がありました。中でも競争緩和の象徴となったのが、1975年のアポロ・ソユーズテスト計画です。この計画は、アメリカのアポロ宇宙船とソ連のソユーズ宇宙船がドッキングするもので、両国の宇宙飛行士が協力して行動する姿が見られました。本計画は、宇宙開発競争から協力への大きな転換点であり、その後の国際宇宙ステーション(ISS)へとつながる国際的な宇宙協力プロジェクトのきっかけとなりました。

2.2010年代以降のロシア宇宙開発体制


順調に宇宙開発を進めてきたロシアでしたが、2010年12月以降の2年半では10回ものロケットの打ち上げに失敗しています。これらのミスは概ね人的ミスによるものと言われていますが、失敗が重なるにつれて、連邦宇宙庁および宇宙産業の再編が政府内で検討されるようになりました。
 当時の首相であったメドヴェージェフは、ロシアの宇宙事業について、設備の老朽化や電子的基盤整備の不足、人材の高齢化や高度技術者の不足を指摘しました。また当時の連邦宇宙庁長官ポポフキンも同様に、宇宙部門の一人当たりの労働生産性の低さや宇宙機器の電子部分の多くが外国産であることなどを問題視していました。

2011年の秋ごろから組織の再編が行われ、2014年には国営公社統一ロケット宇宙会社が設立されました。そして2016年1月1日付で連邦宇宙庁(旧ロスコスモス)が廃止され、同庁と統一ロケット宇宙会社を統合した国営宇宙公社「ロスコスモス」が誕生しました。現在では、ロスコスモス社のもとに多くの宇宙関連企業や組織が統合され、ピラミッド型の構造となっています。


ロスコスモスのロゴ 出典

ロスコスモスは行政面及び産業面の機能を担っており、民生目的の宇宙利用、政府機関による宇宙活動、そして長距離弾道ミサイルの開発・製造など、宇宙開発や宇宙技術に関する幅広い分野を対象としています。またロスコスモスは「国家コーポレーション」に認定されており、連邦予算から活動費の一部が支給されています。予算の内訳としては、国際協力や国防、国家経済に関する調査・研究が主な項目となっています。

3.米ロの関係変化


国際宇宙ステーション(ISS)の運用には、アメリカやロシアを含む多国間の協力が必要です。この協力体制はISSの構築と運用、ソユーズロケットによる宇宙飛行士の輸送、各国の衛星打ち上げロケットの提供など、多分野で築かれてきました。その中でも特にISSの運用において、ロシアは欠かせない存在です。ロシアは宇宙飛行士が滞在するモジュールや有人・物資輸送技術を提供しており、NASAのスペースシャトル退役後は、ロシアの宇宙船「ソユーズ」が唯一の宇宙飛行士を輸送する手段となっていました。また、ISSは高度約400キロメートルの軌道を飛行することから地球の重力の影響を受けるため、定期的に軌道を修正する必要があります。この軌道修正には、ロスコスモスの補給船のエンジンが用いられています。

しかし近年、国際宇宙協力には大きな変化が見られます。2022年2月から続くロシアのウクライナ侵攻により、西側諸国がロシアへの経済制裁を強める中で、バイデン政権は追加制裁に「宇宙計画を含めた航空宇宙産業を衰退させる」との文言を加えました。ロシアは、ISS運用において依然として重要な役割を担っています。しかし制裁の長期化により、ロシアの技術への依存を緩和する方針が浸透すれば、各国の宇宙開発の活発化・宇宙技術の向上につながる可能性もあります。

特にアメリカでは、SpaceXを中心とした民間企業の活動が活発化しており、ロシアに依存しない宇宙開発能力を強化しています。SpaceXはファルコン9ロケットやクルードラゴン宇宙船を用いて、宇宙飛行士の輸送や貨物の打ち上げを行っており、ロシアのソユーズロケットに代わる輸送手段として重要な役割を果たしています。ロシアがウクライナに対して通信インフラの遮断を行った際には、ウクライナはSpaceXのスターリンク通信衛星システムを導入することで、遮断から56時間後にはインターネット回線を復旧させました。SpaceXの迅速な対応は、民間企業の柔軟性と技術力を示すものであり、今後のさらなる発展が期待されています。

4.ロシアの女性宇宙飛行士

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