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冬が旬の寒締めほうれん草の栽培適地を天地人コンパスで探してみよう!

天地人は、2050年にも持続可能な地球環境を目指して活動するJAXA認定ベンチャーです。宇宙ビッグデータをWebGISサービス「天地人コンパス」で解析・可視化することで、まだ誰も気付いていない土地の価値や地球の資源を明らかにするサービスを提供しています。

『今日から使える宇宙豆知識 by JAXAベンチャー天地人』では、宇宙に関連するさまざまな最新情報を、天地人のエンジニア、研究者、ビジネスリーダーが一歩踏み込んで解説します。

今回の記事では、冬に旬を迎える「寒締めほうれん草」の栽培適地を探していきます。天地人コンパスの条件分析ツールを使い、時期と適地の変化を追っていきましょう!


1. 冬においしい寒締めほうれん草

寒締めほうれん草って何?
このような疑問を抱く人は少なくないのではないでしょうか。

販売時期は12月から2月にかけて、つまり今が旬です!わずか2ヶ月という短い期間限定のとっても美味しい特別なほうれん草なんです!

寒締めほうれん草
葉脈がしっかり見えていて、肉厚、色は濃いグリーン

筆者的には非常に大好きなほうれん草で、激推ししたい!
一番おいしく感じる食べ方はズバリ、「生で食べるサラダ
えぐみが少なく、パリパリ、ジューシーなので、バルサミコ酢と塩とオリーブオイルだけでおいしくいただけるそうです。(参考)おひたしや炒め物も良さそうですね。

和風サラダ

今回はこの筆者イチオシの寒締めほうれん草を切り口に、味の秘密や栽培条件、さらに日本における栽培適地を調べてみました!

そもそも、寒締めほうれん草とは、肉厚な葉の食味と、強い甘味が特徴のほうれん草です。
「寒締め」とは、収穫間近になった菜っ葉をわざと寒さや霜に当てる栽培方法です。そうすると、ほうれん草は凍結を防ぐために水分を放出して体内に糖分を蓄積します。また、厳しい寒さによって葉がちぢみ、厚くなります。さらに、葉は普通のほうれん草のようにピンと立つのではなく、上の写真のように、少しでも多く日光に当たろうと横に広がるので、地面に張りつくような姿(ロゼット状)になるのです。これが、寒締めほうれん草の甘味と旨味アップの背景です!

気になる糖度は8度以上で、中には13度以上になることも。(目安として、糖度11度はみかんやパイナップルになります。)ほうれん草とは信じられないほど甘いですね。

もともとほうれん草は、鉄分、ビタミン、カルシウムなどの栄養素を豊富に含み、緑黄色野菜のなかでも栄養価の高い野菜です。しかし、寒締めすることにより普通のほうれん草に比べてビタミンCが3倍ほど増加します。また、太陽の光から身を守るために作り出す成分「ルテイン」が多く含まれます。人の体では、目を日光やブルーライトから保護する役割がありますが、残念ながら人の体では合成できません。目の健康維持に有効な野菜として、令和元年から機能性表示食品として販売されています。また、冬場は病害虫の発生が少ないため、農薬をほとんど使わずに栽培することができます。

2. 寒締めほうれん草の栽培条件

寒締めほうれん草の栽培は、寒さを利用しつつ高度な技術を要します。
気温管理や株間の調整、適切なタイミングでの冷気へのさらし方など、細かな配慮が必要であり、地域ごとの気候条件にも左右されます。そのため、安定した栽培には経験と技術が求められます。

まず、平均気温が20℃以下になる頃に種まきを行い、初冬までにほうれん草をある程度の大きさ(出荷サイズ)に育てます。この際、株間を10cm以上確保すると、寒さにさらされた際にロゼット状に株が広がり、葉に独特の縮みが現れます。
次に、外気温が5℃以下に下がる時期に本格的な寒締めを行います。ハウスの側窓を開放して外気にさらし、10日以上、場合によっては2週間程度冷気に当てます。これにより、ほうれん草の糖度やビタミン含量が向上します。この過程では成長が止まるため、収穫時期を長期間調整できるというメリットもあります。

寒締めほうれん草のスケジュール

さらに、寒締めほうれん草は東北地方で生まれた技術であり、北海道、北陸、関東の高冷地など寒冷地(東日本寄り)に適しており、それぞれの地域ごとによっても種まきや収穫の時期が変わります。一方で、温暖地での栽培は不向きです。

このように、難しい栽培条件を満たしたほうれん草が「寒締めほうれん草」として、特別な味わいを生み出すのですね。

3. 寒締めほうれん草の栽培適地を天地人コンパスの条件分析ツールで探す

それでは天地人コンパスの条件分析ツールを使って、寒締めほうれん草の栽培に適している土地を探してみましょう!

はじめに、条件分析ツールについて紹介していきます。
自分で指定したエリアの中から条件(期間や地表面温度)に合致する場所を可視化することが可能になる機能です。

実際の使い方を簡単に解説します。例として、「2020年の1月1日〜2月29日」(期間)で「日中の地表面温度が10度以上」(地表面温度)の「指定したエリア」を「条件に近い場所をグラデーション表示」していきます。

①表示形式を選択する(一致した場所のみを表示/条件に近い場所をグラデーション表示)。
②使用するデータの期間を選択する。
③分析したい地表面温度の条件を指定する。
④「次:エリアを選択」をクリックする。

⑤エリアを選択で任意のエリアをカーソルを動かすことで選択する。
⑥「分析」をクリックする。

エリアを選択すると下記のような分析結果が表示されます。

以上の基本的な使い方を理解したうえで、寒締めほうれん草の栽培に適作な土地を探します。ここでは前章で解説したとおり、東日本寄りかつ「1月ごろに地表面温度5度以下の場所」を条件分析で抽出してみましょう!

※厳密には、外気温5度と地表面温度5度は異なる指標であることに注意が必要です。今回は、簡便に条件分析を行うために「地表面温度5度以下」という条件を設定しました。

気温:地上1.25~2.0mの大気の温度
地表面温度:地面や水面など地球の表面で直接測定される温度

まず一番大切なのは「土地利用」の確認です。ほうれん草を育てることができる「畑地」に限定して探す必要があります。

①天地人コンパスのレイヤー一覧にある「土地利用土地被覆図」を選択します。

②拡大してピンク色の「畑地」を探し、今回は宮城県仙台市と山形県山形市周辺に注目したいと思います。(北海道や青森県はその時期の地表面温度5度以下が推測しやすいため)

仙台市と山形市周辺

レイヤーを選択して拡大すると仙台市と山形市の部分に所々ピンク色が見えますね。都市(赤色)や水田(青色)もあります。

では下の写真のように、「2020年1月ごろに日中の地表面温度5度以下」という条件を設定します。

続いて、仙台市と山形市を含むエリアを選択します。

分析をしてみると、グラデーションで条件に適した場所が視覚化されました。赤色であるほど条件に適していることになります。

※赤色の丸は左側が「山形市周辺」、右側が「仙台市周辺」を示す

この結果から、仙台市よりも山形市の方が条件に適していることが分かりますね。つまり、寒締めほうれん草を栽培するには、山形市寄りの畑地で行うのが良さそうだと考察できました!

「海沿いの方が寒そうだから仙台市の方が適しているのでは?」と筆者は推測していたため、全く異なる結果に驚きました。

では続けて、期間を2020年から2015年に変更し、過去における寒締めほうれん草の適作な土地を分析していきます。5年の期間の差で、どれほど変化するのでしょうか。

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