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FIDIC レッドブックとイエローブックの違い

国際系土木や建設プロジェクトでは、契約約款に、FIDICのレッドブックとイエローブックが使われていることは前回書きました。今回、FIDICレッドブックとイエローブックの違いについて書きます。レッドブックの英語名称は、Conditions of Contract for Construction for Building and Engineering Works Designed by the Employer、イエローブックは、Conditions of Contract for Plant and Design Build For Electrical and Mechanical Plant and For Building and Engineering Works, Designed by the Contractorが正式の名前になります。設計は、それぞれ最後に書かれているようにEmployer 雇用主すなわち施主(実施機関)がするのか、Contractor 請負者(コントラクター)が行うのかが違います。

工事には様々なリスクがあります。インターネットのいくつかのサイトでは、リスクが高い土木工事はレッドブックが適用されるとされています。土木工事の場合、調査段階でボーリング調査を行なって、地質の状況などを調べます。しかし、工事が開始されると調査結果の通りではなかった場合があります。想定した以上に使用する資材が増えることもあるので数量ベースでの支払いになるレッドブックの方が望ましいことになります。土木工事では数量変更だけなく、設計変更が生じることがあります。イエローブックでは設計はコントラクターですが実施機関が設計条件に責任を持ち、変更が生じた場合は実施機関の責任となります。これにより、コントラクターは工期延長や追加コストの支払いを受ける権利があります。しかし契約変更にはかなりの時間を要します。また、FIDICイエローブックでは一括支払いになるため、事前のコントラクターによる設計からの費用が増える場合、対応できなくなります。(ADBやJICAの調達ガイドラインでは、前払い、中間支払い、最終支払いと大まかに分かれます。)

コントラクターの入札図書に契約約款にどの色にするのか示すことが入札に影響を与えるため、非常に重要です。設計変更リスクの高い工事がある時、イエローブックを使うとなれば、応札者はリスクを高めに見積もった価格を提示することが予想されます。もし提示価格が高すぎると入札が成立しない可能性があります。もしかすれば応札者がいない場合もあります。

プロジェクトリスクがある場合、リスクがコストに転嫁されるため、応札価格が高いものになる可能性が高くなります。同じようことがもう一つのシルバーブックつまりEPC契約も同じと言えます。EPC契約では設計調達施工を一括で行うものでデザインビルドはよく似たものです。入札回数が1回少なくなるので、工期の短縮ができます。しかし工事リスクを考慮すると契約する金額は高くなります。

東京オリンピックの国立競技場改修工事では最終的にはデザインビルド方式での改修工事になりました。当初は、設計と施工を別々にしていたものの、設計のやり直しを行っていくと完工がオリンピックまでに間に合わないなどの報道にありました。ニュースを聞きながら調達方式の見直し変えたんだとは思いました。調達方式変更する際、金額が大きいので変更に関連した承認手続きも大変だったとは思いました。借款プロジェクトではプロジェクトが開始されてコントラクターが決まって建設開始まで2年ほどかかることが多いように思います。契約変更もすごく時間がかかります。

私の興味あること調達マネジメントや(契約上の)紛争解決ですが、なかなかこれらは勉強が進んでいません。


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