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食のライフサイクル
環境系の話にこれからまた戻します。生産・消費・廃棄といった食のライフサイクルの中で食料生産の現状についてまず考えます。フードロスやこども食堂についても次回以降書いていく予定です。
農林水産省(2004)は、世界的に人口が増える中、穀物や野菜などの耕作面積は、横ばいです。しかし食料生産高は年々増加しています。[1]1960年を100とすると2020年は生産高が310となっています。(図1参照)世界の人口が増え続ける中、食料の生産を上げることが重要になります。灌漑や化学肥料あるいは農薬の使用などにより、収量が大きく伸びています。一方で、灌漑に使う地下水の水位低下、塩害の多発、化学肥料・農薬の多用による土壌の疲弊や汚染、地下水の汚染など環境問題が顕在化しています。
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出典 農水省[2]
使用する肥料は2020年には約2億トンで消費しており、日本では全世界の0.5%を消費しています。化学肥料ではKPNすなわちカリウム、リン、窒素が重要になります。窒素つまりアンモニア(NH3)を製造する時、天然ガスが使われています。
農薬は殺虫剤、殺菌剤、除草剤などに分類できます。農水省(2024)によれば、国内の使用量は、22〜23万トンの間で推移しています。除草剤が最も多いです。1980年ピーク時の68.4万トンと比較すると、約3分の1になっています。辻(2013)は、農薬の要求品質として低薬量で効果を発揮し,人畜および作物に対する安全性が高く,環境負荷が小さくなっていることを指摘しています。[3]これが農薬の消費量の減少に要因になっています。一方で、日本の単位面積あたりの農薬の使用量は、高温多湿な気候の影響もあり、世界でもかなり多いと言えます。世界における農薬の使用量は2010年ごろから約270万トンで推移しており[4]、引き続き世界各国で農薬の新薬開発が行われています。
また、農業生産は、気候変動の影響を大きく受けます。[5]漁業も同様のことが言えます。こうして生産された農作物ですが、農業廃棄物になるものもあれば、フードロスとなり廃棄されるものもあります。
一方で途上国では、灌漑施設がなく、天水(すなわち雨水)に頼っているところも多くあります。また稲作も山を焼いて焼畑で陸稲作ったりする国があります。苗を作って田植えするのではなく、米の苗床を作って田植えするのではなく、水田に種を直播する国もあります。除草の手間と収量から敢えてあまり手間暇かけないなど国によって事情が変わってきます。(2倍働いても収量が2倍上にならないのあれば敢えて働かないという選択)
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参考文献
[1]農水省(2004)食料の安定供給と食料自給率について., 食料・農業・農村政策審議会企画部会, https://www.maff.go.jp/j/council/seisaku/syokuryo/mugi/07/pdf/data10.pdf[2]農水省(2021)世界の食料需給の動向
[3]辻孝三. (2013). 農薬製剤の基礎と今後の展望. 日本農薬学会誌, 38(2), 205-212.
[4]農水省、第15号特別分析トピック︓我が国と世界の農薬をめぐる動向., https://www.maff.go.jp/j/zyukyu/jki/j_rep/monthly/attach/pdf/r4index-94.pdf
[5]西本麗. (2019). 農薬産業の世界的動向. 日本農薬学会誌, 44(1), 5-14.