コロナウイルスの感染拡大が続いています。新年度を迎えて起きた様々な変化も、当面、元に戻ることはないでしょう。 その中でお仕事を失われた方、人との繋がりを断たれた方、これからに希望を見出せない方が大勢いて、どうしようもない状況を嘆き、この世での暮らしを諦めるという選択をする人の多さが、各種メディアで報じられています。 この文章が死にたいほど苦しい方に届くかはわかりませんが、仏教の研究に携わる者として、また何よりも僧侶として、生きる指針になる教えを、ブッダの歩みから紹介して
お寺の掲示板「今月の言葉」 「どうでもいい」とか そんな言葉で汚れた心 今 放て 春の歌 愛と希望より前に響く 聞こえるか? 遠い空に映る君にも スピッツ「春の歌」 今月の言葉はスピッツというバンドの「春の歌」という曲から引用しました。 今年の節分は一二四年ぶりに二月二日ということでしたが、立春を迎え、暦の上では春となりました。そこで春にちなむ言葉を探していた時に、ふとこの歌のことを思い出しました。 私の故郷、北海道の春は四
お寺の掲示板「今月の言葉」 新年を迎え今月の言葉を新たに記しました。今月は以下の言葉を選んでみました。 天下和順 この一年が穏やかでありますように 「天下和順」は『無量寿経』というお経の一文です。このお経は浄土宗で大切にしている三つのお経の一つで、阿弥陀様誕生の秘話や、極楽浄土の様子、また私たちが極楽浄土を目指すべき理由などが記されています。今月の言葉として選んだこの四文字は祝聖文(しゅくしょうもん)と呼ばれる以下のお経文の一部です。 天下和順 日月清明 風
今日はマーチングバンド、バトントワリングの全国大会(ジャパンカップ)を見てきた(娘がマーバンをやっている関係)。 娘の出番の前のバトンの部門(小6)を見ていたけど、道具と体の関係を考えるキッカケになった。 バトンの演者は体を使いバトンを回しながら演技をしていく。腕や肘、あるいは肩や首など、様々な部位を使ってバトンを生き物のように操る。それを見ていると身体と道具の一体化を感じる。 バトントワリングの見どころの一つは、演者がバトンを高く投げ、バトンが空中にある間は振り付けを
岡本真夜「TOMORROW」より 朝日は東の空から登り、夕焼けは西の空を赤く染める。生まれてから毎日毎日、朝を迎え、命尽きるその時までそれはループするものだとわかっている。 明けない夜はないし、留まる朝もない。意思とは無関係に時は進むと理解している。 明日はくる、けれども明日は見えない。見えない明日が不安で、来なければ良いのにと思うこともある。 生きている中で辛さを、苦しさを、もどかしさを感じ、自分のために明日が来ることを信じられないこともある。経過する時間は、時に残酷な
久保山光明寺物語 第一話 横浜市西区に位置する久保山は、山肌に無数の墓が連なった墓地である。この山を象徴するものは、この墓地以外に火葬場であり、霊堂である。横浜の弔いを担う地である久保山には、多くの寺院も存在する。 その一つである光明寺は、久保山霊堂前というバス停の目の前にある。光明寺の伽藍は、明治二十一年にこの地に建立されてから、戦災などの災禍を逃れ、幾度の改修を経て今に伝えられている。しかしながら、光明寺は久保山からスタートしたのではない。 さて、光明寺の歴史を語る前
映画「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」が大ヒットしている。興行収入が200億円を超え、歴代五位(2020/11/14現在)を記録した。この物語は仏教といろいろと関連付けられ、お坊さん界隈でも話題である。私もnoteに考察を一本書いてみた(『鬼滅の刃』と仏教)。 大ヒットにあやかり、今回は以下のツートで話した餓鬼について、『鬼滅の刃』と関連させてちょっと話してみよう。 『鬼滅の刃』にはいろいろな鬼が出てくる(気になる方は『鬼滅の刃』HPへどうぞ)。この鬼は生まれながらに鬼
『ヴァイオレット・エヴァーガーデン外伝 ー永遠と自動手記人形ー』より 名前には不思議な力がある。それは人と人との約束の力だ。 日本で「りんご」と聞けば、多くの人は赤くて丸い甘酸っぱい果実を思い浮かべるだろう。国が変わればそれは「アップル」となる。あの果物をどんな名前で呼ぶかの約束が違っているのだ。 どんな国でも様々なものに、様々な名前があって、あるものをその名で呼ぶことをみんなの約束として、コミニュケーションを取っている。その名前はイメージを喚起させる力がある。名前は
東京とラブストーリーとアマプラで2本の東京ラブストーリーを見た。 ざっくりと感想を述べると、時代の勢いを感じさせる中での別れと、それがなくなった中での別れを見せられ、時代の変化を感じた。 東京ラブストーリーは千葉ラブストーリーでも横浜ラブストーリーでもなく東京ラブストーリーである。 それは東京という街でおこる恋愛劇。そこでは東京が表現され、ドラマの登場人物はそこに生きる人々を類型化した存在である。 まず東京である。1991年と2020年は約30年の差があって、東京は変
映像、音楽、セリフ、緊密に結びつき成り立った一つの芸術作品。時間はめぐり、繰り返し、そしてずれる。忘れられた記憶は体に保存され、体から呼び起こされる。涙とともに。 時空を旅することは、ただ飛行機に乗るように、今から彼方に飛び立つだけではない。それは過去から現在によじ登る運動で、また現在から過去によじ登る運動である。過去は現在の下にあり、現在は過去の下にある。だから移動は難しい。それでも時間を超える。それが意思の所産か、偶然の産物かはわからないが、出来事には必ず意味がつけられ、
仏教ってなんですか? 仏教講座や大学の講義など仏教を教える機会に恵まれ、いろいろなお話をします。そうはいっても正面から「仏教ってなんですか?」と問われると、なかなか答えにくいものです。 仏教の説明で多いのは「仏の教え」あるいは「仏になる教え」というものでしょうか。これはわかるようで、難しいものです。仏とは?とか、教えの内容は?という問いが生じるからです。 問いが漠然だと答えもまた漠然になるものです。ここでは「仏教とは?」に①学問的な回答 ②宗教的な回答の二つの面から答え
今日の法話です。 皆さん本日は三回忌の法要によくお参りでした。共々にお念仏を称え、供養の心をお捧げいたしました。故人がこの世を旅立たれて丸二年が経過しようとしています。これまでのあいだ、お集りの皆さんは、折に触れて、故人のことを思い出す機会があったとお察しします。 故人がなくなった時には思いもよらなかったことですが、本年はコロナウイルの影響が大きく出ています。みなさんも暮らしの変化の中で、心身に苦しみや辛さというものを感じる機会が多かったことと思います。 先日、報道で今
こんにちは、久保山光明寺副住職石田一裕です。みなさん『鬼滅の刃』という漫画をご存知でしょうか? 今週月曜日発売の週刊少年ジャンプ(2020年第24号)で最終回を迎えた大人気作品です。 今でもジャンプを手にとる読者として(娘たちから「パパが読むのはおっさんジャンプだね」と言われておりますが)、この漫画の感想をなんだか無性に書きたくなりましたので、書きます。 この漫画、実は仏教的だという考察がありますが(https://kindaipicks.com/article/002039