見出し画像

月と太陽は恋してる 7

  部外者はテレビ観ながら拍手喝采
  これから始まるSHOW を御覧あれ


「で、何があったの?急に朝営業のみにして……私の憩いの時間なくなったじゃん」
朝食食べ終わり夏鈴はおかわりしたコーヒーを飲みながら海里に愚痴りながら聞く。
「ん?ちょっとね、ケータリングサービスの依頼入ったから」
「どっち?誰の?いつまで?」
夏鈴の声のトーンが一段階低くなり、詰問される海里。
「てゆーか、営業って15時からじゃなかった?何で夏鈴ちゃん、朝の時間に行ってるの?私聞いてない」
夏鈴の『憩いの時間』という発言に納得いかないひかるも海里に問い詰めた。
海里は仕込みの作業を停め、自分用にいれたアイスコーヒーを飲みながら二人の質問に当たり障りなく答える。
「日向坂46のLIVE」
「今野さん」
「来月上旬」
「夏鈴はコーヒー飲みに来れる日に来ている」

「……めんどくさくなって淡々と答えない」
ひかるはジト目をして、夏鈴は半目になり、二人ともご機嫌ななめになる。
海里は後々面倒なことになるため、ため息をつきながら、冷蔵庫からお碗を二人の前に置いた。
「茶碗蒸し?今そういう気分じゃない」
夏鈴は海里をいっそう睨む。
「夏鈴ちゃん、これ、プリンだ」
蓋を開けて一口食べたひかるは夏鈴の腕を引っ張りながら叫ぶ。
夏鈴は急いで一口すくって味わう。
「ほうじ茶の?」
「そう、試作品。どう?」
「「美味しい」」
「これケータリングの?」
ひかるの問いに海里は頷く。
「ドラマの差し入れに持っていきたい」
「時間があえばどうぞ」
「ぜったいあわす」
海里の答えに満足した夏鈴はトイレのため席を外した。

「ねぇねぇ、最近、相手してくれないじゃん?誰としてるの?夏鈴ちゃん?」
夏鈴がいなくなったため、ひかるは率直に聞きたかったことを聞き出す。
「夏鈴は単なるコーヒー仲間。依頼受けてない」
「ほんと?信じるよ」
ひかるは海里を自分の隣まで手招きする。
海里はひかるの行動を読めてるため、素直にしたがう。
「早くしろ」
ひかるは笑顔で抱きしめ、海里にキスをする。夏鈴が戻って来るまで時間がないため、バードキスをして海里に気持ちを伝えた。
海里にとってひかるとのキスは、朝の突然の邂逅による気持ちを完全に落ち着かせてくれた。



「もう、最悪やわ」

普段は声に出さずに心に留めておくことが多い菜緖であったが、今回は無意識に声が出てしまっていた。
楽屋の隣でキョトンとその声に反応している丹生明里に気づかないほどに。
明里はにんまりと笑いながら菜緖に抱きつき、耳元に息をふきかける。
「ひゃ、なにすんねん、明里」
「何が最悪なの~?明里さんに相談してもいいんだよ」
「間に合ってます」
無表情に明里を引き剥がしながら伝える菜緖だったが目は優しく微笑んでいた。
「ひどーい。聞いて!ちっパイな負け顔星人よ」
「だぁれが、ちっパイで負け顔だぁ」
明里達の目の前で二人を見守っていた金村美玖は明里のほっぺたをつねりながら文句を言う。
「え、だって莉奈ちゃんにも負けてるじゃーん」
明里は、仕返しとばかりに美玖のほっぺたをつねる。
「んなぁ、そ、そ、そ、」
「まぁ、確実に美玖の方が小さいわ。知らんけど」
明里と美玖のおかげでイライラが収まった菜緖は笑いながら美玖の胸をさわり、大きさを確かめる。
それを見た明里も胸をもみ、耳に息を吹き掛ける。
「ひゃぁ、なにするか!」
驚き、飛び跳ねるが、弱点の耳を攻められ、悶えてしまう。そんな美玖に菜緖と明里のS心が擽られ、また、楽屋に心許せる同期しかいないこともあり、さらに攻め立てた。二人は立ち上がり、明里は美玖を羽交い締めにして菜緖はくすぐり、耳に息をかけだした。
「あひゃ、ひゃはは。ふぁ、あぁん」
テレビ収録では声がでないよう我慢できたが、楽屋でしかも、弱点を知る菜緖。
美玖は絶えられず、声が出てしまう。
美玖の声を聞いた菜緖は鬱憤をはらすべくさらにヒートアップし、今度は耳たぶや、耳の軟骨を甘噛み、吸い付く。
「あ、だ、だめ、なぉ、あぁん」
喘ぎ声が部屋に響き、明里は菜緖のヒートアップに驚き、手を離してしまった。
力が入らない美玖は菜緖にもたれかかってしまう。
菜緖はチャンスとばかりにお尻をまさぐりながら抱きしめ、首筋に吸い付いたところにパァンといい音が鳴り響く。
頭を抑え、菜緖は振り向き、ハリセンを持っている松田好花に叫んだ。
「なにすんねん、好花」
「なにすんねんじゃないわ。見てみ。これから収録やのにできあがってもうたやんか」
好花の指摘に菜緖は美玖をみる。美玖は、すでに立てないのか、負け顔をさらにトロンと色艶たっぷりの表情をして座り込んでいた。
「これから一期生の朝礼が始まるから、美玖連れて二人ともスッキリしてき」
「ごめんなぁ。好花、朝礼出たくなくてやりすぎたわ」
「また、後で話聞くし、あの子らの話もせなあかんしね」
荒く息をしている美玖をたたせ、素早く、部屋から出て行く菜緖にそう答え、好花は残りのメンバーに声かけた。
「明里と鈴花は三・四期生よんできて。それ以外のメンバーで片付けよ」

収録前に始まる一期生恒例の朝礼。
他の坂道と違って、体育会系アイドルグループと言われている由縁がこの朝礼にある。ただし、男子禁制の朝礼でテレビで言われているレベルの比ではない。
「宝塚の方がまだマシやわ」

好花は今日1日、無事で終了できることを祈った。

いいなと思ったら応援しよう!