クラス6【共感力4】視点転換
■序論
「情熱を持って仕事に取り組んでいるのに、なぜか相手に伝わらない」「プライドを傷つけずに改善点を指摘したいが、どうしても相手の反発を招いてしまう」。こうした状況に悩むことはありませんか?これらの問題は、共感力の一部である「視点転換」の欠如が原因かもしれません。
視点転換とは、相手の立場に立って物事を捉え、その視点から解決策や行動を見直す力です。このスキルが欠けていると、自分の視点からだけでコミュニケーションが進み、相手にとって受け入れにくい提案や改善策となってしまいます。本稿では、視点転換の重要性について、具体的な事例を交えながら解説していきます。
■本論
【視点転換とは何か】
視点転換は、簡単に言えば小学校の道徳で習う「相手の気持ちになって考えましょう」ということですが、実際に無意識に行うことは難しく、多くの人にとって訓練が必要であり、その意味で共感力の中でも特に高度なスキルです。相手の立場や状況を深く理解し、その視点から物事を再評価することで、相手にとって最も受け入れやすい解決策を見出すことができます。
共感力は、以下の4つの要素で構成されます。
これらの中で視点転換は、相手の立場に立つだけでなく、相手の視点からどのようなアプローチが最も適切かを見極め、それを柔軟に実行する能力です。ビジネスにおいては、特に難しい状況や抵抗を感じる場面で、視点転換を行うことでよりスムーズな解決策を導き出すことができます。
【視点転換の実践例】
ここでは、視点転換がうまく行われていない場合と、適切に行われた場合の違いを見ていきましょう。
事例1:バイトの子がすぐ辞める
視点転換が行われていない場合
「バイトの子がすぐに辞めてしまうのは、コミュニケーション不足や指導力の問題だ」と考え、改善策を一方的に押し付けることが多いです。これは、自分の視点からだけのアプローチです。視点転換を取り入れた場合
「バイトの子たちはどのような働き方を求めているのか、何に不満を感じているのか?」という視点から彼らの状況を理解します。彼らにとって柔軟なシフトや心理的安全性が重要であるなら、そのニーズに合わせた環境を一緒に作り上げることで、彼らにとって働きやすい場所になります。
事例2:新メニューを現場が嫌がる
視点転換が行われていない場合
「現場が新しいメニューに対して反発しているのは、単に面倒だと感じているだけだ。新しいことに対する抵抗感を乗り越えさせるために、強制的に進める必要がある」と考えるケースがあります。視点転換を取り入れた場合
現場のメンバーが抱いている具体的な不安や負担を理解し、それに対応する柔軟な方法を考えることが重要です。例えば、メニューの一部だけを試験的に導入する、または既存のメニューのアレンジ版を先に提供するなど、負担を軽減する手段を模索します。こうすることで、メンバーにとって新メニューがあくまでも顧客満足度を高めるための手段であり、彼らにもメリットがあることを示すことができます。
また、彼らの意見を積極的に取り入れ、具体的な導入方法やスケジュールを一緒に考えることで、最終的には新メニュー導入が全体にとって有益なものであることを理解してもらえます。
事例3:店舗間の送客がなされていない
視点転換が行われていない場合
「送客がうまくいっていないのは、担当者の意識が低いためだ。責任感を強化して解決するべきだ」といった一方的な見方をすることがあります。視点転換を取り入れた場合
送客がスムーズに行われない理由を現場の視点から考えます。例えば、送客に関するマニュアルやリソースが不足している、あるいは送客によって業務が増えることへの不安があるかもしれません。この場合、メンバーと一緒に問題を掘り下げ、解決策を考えることが重要です。また、送客が売上や給与アップにどう繋がるかを具体的に説明し、送客が自分たちにとってもプラスになることを示すことで、協力を得やすくなります。
【視点転換を成功させるための柔軟性】
視点転換を行う際、重要なのは「最終的な目的を達成するためなら、手段は柔軟に選ぶ」という考え方です。新メニューの導入や送客の強化など、目標を達成するための手段にこだわりすぎると、現場の負担が増し、抵抗感が強まることがあります。
柔軟な手段を取り入れ、例えば一部だけの試験導入や既存のリソースを活用したアプローチを試すことで、相手にとって受け入れやすい環境を作り出します。これにより、目標を達成しつつ、現場のニーズにも応えることが可能です。
■結論
視点転換は、相手の立場に立ち、柔軟な手段を選びながら最終目的を達成するための高度なスキルです。ビジネスの場でも、相手の感情や状況を理解し、その視点から解決策を一緒に考えることで、信頼関係を強化し、よりスムーズなコミュニケーションと成果を得ることができます。
視点転換を実践することで、相手にとっても自分にとっても利益のある形で問題解決が可能になり、長期的な成功と成長に繋がります。視点転換は、共感力の最高峰として、日々の仕事や人間関係の中で大いに役立つスキルです。
問題フォーム
それでは、この文章に関するいくつかの問題に回答してみましょう。