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小説の資料+5 ハイファで舗装道路の作り方

全体目次はこちら。

1.お品書き

 いつもお読みいただき、ありがとうございます。
 本日のテーマは『ファンタジー世界での舗装道路の作り方』です。
 ファンタジー系統の話題では、テンプレートを中心に、よりリアリティを増すためにどうしたらいいか、というより僕が納得いかんところに理屈をつけるシリーズで、異論は認めます。
 にわかなので間違いが見込めますので、発見された方はお気軽にご指摘くださいませ。


 別所で公開している話に街を発展させながら魔王を倒すシミュレーション含みの話がある。
 技術開発のためには他国の技術流入が必要なのだが、物流に最も重要なのは『道』である。そして貿易で金を集めるにも、人材や人足を集めるにも、そこから税金で上がりをとるにも良き道路は必須である。道が荒れた国には商人もマトモに来ないし、来たとしても足元を見られるだろう。全ての道はローマに通じるごとく、その道を制すればその地域を文化制覇できるといっても過言ではない。
 つまりインフラ整備は街の発展に必須なのだ!
 戦力が伴わなければその道を通じて攻め入られやすくなるという難点もあるわけだけど。

 前回のドラゴンの話で『物理定数』という単語を出して説明が面倒くさいからほっぽっといたが、ちょっとこれを補足する。
 この地球には万有引力やプランク定数、簡単に言えば林檎は地面に落下するだとかこの世界の動かしがたい法則が存在する。そしてそのような基礎的な法則をまとめて『物理定数』と呼ぶ。そして地球の物理定数とナーロッパ的文化が現存する地球人が転移しうる異世界の物理定数は同じまたはほぼ同じはずなのだ。
 だって引力や重力がない世界で同じ暮らしができるわけがないじゃん。簡単にファンタジー的に言えば世界を構成する基礎設定が『物理定数』で、そのような動かしがたいものが共通するからこそ、地球と近似する文化文明が発展するはずなのだ。だから地球でも発見される鉄類似物質で相手を殴り倒し、地球でも発見されるジャガイモ類似物質を茹でて食べてもおかしくはない。
 という前提で、特殊地形等を除いて考えれば、現状ハイファでよく用いられる異世界には地球に存在するものは存在する、という前提で話を進めます。ジャガイモ論争など知らぬ!

2.コンクリート舗装しよう! ローマン・コンクリート編

 一番原始的な道は言わずとしれた獣道。
 これはたくさんの重量が通過することによって土が踏み固められる自然地形上にできるもの。しかし均さない道は雨が降ると水たまりはできるしガタガタだ。車両通行に支障をきたすので道に工夫を凝らしだす。
 全ての道はローマに通ずの示す通り、古代ローマには道があった。そしてその道はローマン・コンクリートと呼ばれる一種のセメント舗装だ。だからそれより文化程度が高いと目されるナーロッパでは同様の地形であれば道路の舗装はできなくはない、と思う。

 ローマン・コンクリートの基礎原料は火山灰、石灰、火山岩、海水だ。
 つまり火山地帯であれば造成できる。このローマのコンクリートは中性で、身の回りにある現代のアルカリ性の『コンクリート』とは少し異なるものです。
 そして何故ローマン・コンクリートが千年以上経過した現在まで現存しているのかは、海水と火山灰と石灰が混じり合って発熱し、長時間かけてトバモライト結晶を始めとした様々な物質を化学反応によって結成(すごくくっつく)したからといわれる。
 ここで少々問題があってだな、火山灰の組成は山によって大分違う。だから同じような強度になるかどうかは異世界の山の火山灰の性質によるものだから、異世界で少々の研究が必要だろう。そしてその結果、強固なコンクリートになるかは千年、とはいわないが時間が経過しないとわからないので、大賢者様か魔王でなければオススメしない。なので諦めて現代のコンクリート製造にうつろう。

3.コンクリート舗装しよう! 現代のコンクリート編

 現代コンクリートは産業革命以降に興隆したものだが、作り方はさほど難しくはない。
 最初はコンクリートに必要なセメントだ。セメントとは意外とアバウトな概念で、水と混ぜて固まるならばセメントだから膠や樹脂も含むのだが、今回は道路を作ることを前提としたセメントの話をしよう。
 セメントは主に水と石灰石を混ぜて作られる。石灰石とは石灰岩であり、炭酸カルシウムだ。炭酸カルシウムは貝殻やサンゴ、鶏卵の殻、大理石、鍾乳石等からできる。一般的な大規模採取先としては、海中で二酸化炭素と結合した古代生物の遺骸の堆積物が隆起できた地層が考えられる。生き物が死ぬ海際にはたくさん存在するはずだ。毒の海とかの特殊環境は除く。物理定数が同じであれば、入手はさほど困難ではない、きっと。
 この炭酸カルシウムに粘土や石英、酸化鉄などを混ぜて作る。石英は二酸化珪素を主成分とした鉱物だが、これをつきつめたのが水晶で、陶器やガラスの原料となる。だから水晶やガラスがあるなら石英はある。酸化鉄は鉄を雨ざらしにすればできる。鉄剣は……あるよね?

 基礎的な割合は石灰石10、粘土2,その他1~2といわれているが、石灰石の成分によるので実地で試す必要はある。この方法でつくるのはいわゆるポルトランドセメントという種類のもので、現代でも主要なセメント材料である。高熱を扱える高炉で製鉄ができるようになれば、そのスラグ(廃棄物)を混ぜればセメント中で化学反応が起こり、長期的に使用できるセメントになる。いわゆる混合セメントの一種だ。
 他にも種類としてはボーキサイトから作るアルミナセメントなどの特殊セメントはあるが、長期強度は低いし発熱するからおすすめしない。現地の鉱石を色々混ぜて実験するのも面白いかもしれない。特殊なスライム剤とかを混ぜて地球と違うセメントを作るのも夢が広がる。
 アルミニウム錬成をするには大量の水と電気が必要だからチート的な大分先の話。あなたがものすごく精密な雷魔法が使えて水があるなら一考の価値はある、がレアケースだろうから省略。

 上記の原料を細かく砕き、焼きあげる。古代人は焼成に土器を使用していたが、おそらく温度は1000度未満だろう。そのくらいの温度で脱炭酸が進むが、現代では1500度くらいまであげて、より不純物が少ない高品質なセメントを作っている。
 炉については別の回にゆずるが、送風の工夫などである程度までは温度は上がる。ベッセマー転炉が使えるようになれば高純度鉄ができて色々捗るのだが、それはそれとして、ここはファンタジー世界なのだ。だから火の精霊というものがいるはずだ。
 うちはめんどくさいから高炉法を中心として火の精霊と風の精霊を突っ込んで温度を上げた。それでも高純度鉄がないといい剣は作れないんだけどね。
 ともあれ高品質なセメントができたことにする。

 セメントができればコンクリートはさほど難しくはない。セメントに骨材として砂利や砂をいれて作る。
 セメント:砂利:砂を6:3:1ほどで水で混ぜればいい。この割合によって強度が変わってくるので、そこは試行錯誤しよう。発明というのはトライ・アンド・エラーの帰結である。
 これで強度のある建物が作れるようになった。いや、本論は道なんだけどさ。建物の堅固性って重要よ。だってドラゴンが襲ってくるかもしれないじゃん(でもドラゴンなら諦めよう。)。
 なおコンクリートは引張強度が弱いので、建物をつくるのであればこれを補強するために鉄骨をいれるのがよいです。いわゆる鉄筋コンクリートだ。でも強い鉄筋を作るのはまた別の話だからなぁ……。但し現在のコンクリートはローマン・コンクリートとくらべて耐用年数が低い。建材として使うなら50年~100年が目処でございます。
 これでようやく道路のコンクリート舗装が可能となったわけだ。

4.アスファルト舗装しよう!

 さてこれまでつらつらとコンクリート舗装について述べてきたが、もうひとつ、アスファルト舗装というのがある。これが現在日本の舗装道路の主流であると思う。
 コンクリート舗装のメリットは強い、単純に強度が高いということだ。但し乾くまでに時間がかかり、作り直しをするのが面倒くさい。叩いて傷がつかなくなるまで1週間、馬で走れるのに2週間、家を建てられるのに4週間を要する。それまで雨を防ぎながら保持するのはけっこう大変である。作り直しも大変。
 一方のアスファルトは耐久性が低いものの、すぐに使用できるようになる。また、排水性が高いため、雨が降る土地にはアスファルトが向いている。塗り直しも用意。

 現在地球のアスファルトは石油から化学合成するものが主流だが、天然アスファルトというものがある。土瀝青どれきせいと呼ばれるもので、簡単にいえば石油と同じく長期の間、土砂堆積層に埋没した植物や藻等が高温高圧下で変質し、炭化水素となったものだ。ようするに石油があるような場所で、昔の植物が埋まっていた地層が表出することによって採集が可能になる。土瀝青も場所によって性質が結構違うので、やっぱり研究が必要だよな。これに骨材や砂を混ぜて塗布して使う。
 この天然アスファルトはこの世界ではトリニダート・トバコのピッチ湖が有名だけど、日本でも豊川油田などから算出され、縄文時代から矢じりの接着剤などとして用いられていた。これが日本で道路舗装に用いられるようになったのは明治になってからだ。注意すべき点は発火しやすいところで、明治期には発火事例が見られた。
 耐火性能を備えたアスファルトの組成研究にはやはり科学的な設備と時間がかかる。そこはファンタジー世界のこと、アスファルト敷の下に火炎耐性とか素材強化等の魔法陣を刻んだりすればいいんですよ。

5.おわり

 そんなわけでうちの話はアスファルト舗装にしました。
 ファンタジー方面のエッセイはますますまとまりません。なにせファンタジーなので。みなさまも頑張って道を敷きましょう!

 ではまた。



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