マガジンのカバー画像

temppの短編小説一覧(一話完結)

46
短編、というか1話読切の一覧です。 だいたい1万字以下です。
運営しているクリエイター

#SF小説

短編小説のまとめ(主に自分用)

そろそろ何をUPしたのかわからなくなってきたので、自分のための管理用ページです。スルーください。一覧性のための文字ベースのリンクです(まさに自分用)。 ここでの短編小説とは、一話完結の話を指します。シリーズ中で一話完結する話もこのリストに含まれると同時に、シリーズのまとめがあればそちらにも記載されます。 ()内はあれば場所(神白県については行政区分別、pem世界においては領域魔女名)、ジャンル、シリーズがあればシリーズを記載。 イラストは短編にごくたまに出てくる奏汰さん。うち

【短編小説(SF)】玄関の先が行方不明 1500字

[HL:がちゃりと玄関を開けた先は……]  ガチャリとその玄関を開けば、見知らぬ部屋が広がっていた。  だから慌ててバタリと閉じて、手もとの鍵を確認する。 神津之助のフィギュアの付いた、確かに俺のキーホルダー。汚れ具合と神津之助の右耳が欠けていることからも、これは俺のキーホルダーだ。間違いない。だからこれが俺の部屋の鍵。  そうして左右を見回した。ここは❘逆城《さかしろ》団地3号棟の3階。そして目の前の扉には305号室と書いてある。  再び共通玄関に鍵をねじ込みアドレスを読

【短編小説(SF)】管をつなぐ 5200字

[HL:突然、半分腕が取れた奇妙な女に話しかけられた] 「ねえ、それは誰の燃料なの」 「あん? 何言ってんだ」  声に顔を上げると向かいに女が一人、座っていた。  ちょうど駅前の蕎麦屋で蕎麦をすすっていたところだ。早い・安いがウリの、別にうまくもない蕎麦だ。話しかけてきたのは見た目は二十歳くらいの若い女だが、腕が半分取れていた。その端部からは引きちぎられたようにコードが何本か垂れている。ロボットか、アンドロイドか、バイオーグか、そんなナニカなのだろう。何があったのかは知らな

【短編小説(SF)】Hello, world 5500字

[HL:俺とスワニルダの閉じた世界] 「おはようございます、フランツ」  その声に、絹斑フランツはまどろみからゆっくりと体を持ち上げた。頭は未だふわふわと定かではなく、けれど次に珈琲の香りを鼻孔が感じ取り始める。それで、少しずつ頭が起動する。 「おはよう。スワニルダ」 「本日は晴天、最高気温は22度、最低気温は14度。今日も過ごしやすい一日となるでしょう」 「そう。ありがとう」 「外出されますか?」 「外出?」  その言葉にフランツがベッドを降りてベランダまで進めば、スワ

【短編小説(恋愛)】その夏、一瞬の恋、永遠の恋 5500字

[HL:18才の時に一目惚れして、もう私は35才。あの人は今50くらいかなあ]  その日はちょうど良く晴れていた。人通りの多い交差点で大きな声に振り返れば、知らない男が奇声を上げながらこちらに走りこんでくる。その手元が太陽にキラリと反射して、それが包丁だとわかったときはもう目の前。高校2年の夏。バド部のインハイが終わってちょっと遅めの夏を満喫しに街に遊びに来ててって……これってきっと走馬灯だよねとか呑気に思いつつ、包丁が刺さると思ってギュッと目を閉じた。  けど、どこも痛く

【短編小説(SF)】降る星、らんらん 3000字

 アルファケンタウリの方向から長い距離を渡って訪れた隕石が、大気圏を突破しながら落ちていく。そしてそれは地上に到達する前に、身悶えするように一瞬だけ明るく光って、尾を引きながら地球に柔らかく衝突する。  それに合わせて小さく歌うんだ。これがあの小さな石の最後の瞬間だから。  でもその小さな石の消滅を悲しむ必要はない。  なぜならもうすぐ全てが終わってしまう。  そんな光景が頭に浮かんだ。  いえ、全てが終わってしまっても、私たちは取り残されて、ここでぼんやり見ているのかもしれ

【短編小説(SF)】終末日和 7000字

「おはようございます。世界の終わりまであと七日になりました」  朝テレビのスイッチを入れると、ニュースキャスターがいつも通り、期限を告げた。そしてその放送は、いつもと少しだけ異なった。 「このキャストでお送りする放送は本日で最後となります。明日からはAIによる自動放送となりますので、ご了承ください。皆様良い終末を」  その時ちょうど、ピッと鋭い音が響く。コーヒーが入った。  腰を上げてサーバを取り上げ、温めたミルクを入れた大きめのカップにぐるぐると注げば、グァテマラ特有な甘く