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SUBARU陸上部 清水歓太日本選手権直前 高地ポイント練習

 5000m日本選手権の数日前に、SUBARU陸上部清水歓太選手の高地最終ポイント練習に参加。
 2022年、2023年と2年連続5000mの日本選手権で3位と表彰台を飾っている清水。2023年にはラトビア・リガで開かれた世界ロードランニング選手権に日本代表として出場。5kmを日本新記録で走った。
 ニューイヤー駅伝2022年の後はアメリカにてプロのチームであるBowermanの選手と共にトレーニングをし、アメリカの大会「The Ten」で10000mで日本歴代7位となる27分31秒27を叩き出した。
 清水の日本選手権前の調整、アメリカで学んだ事、今後のキャリアや彼が考える駅伝について密着した。

<清水歓太選手の実績>

早稲田大学⇒SUBARU陸上競技部

2022年日本陸上競技選手権大会5000m 3位
2023年日本陸上競技選手権大会5000m 3位

5000m :13分21秒18(2023年:第107回日本陸上競技選手権大会)
10000m :27分31秒27(2022年:THE TEN 10000m)
10マイル:48分06秒 (2018年:唐津10マイルロードレース)
ハーフマラソン:1時間03分08秒(2016年:上尾シティーハーフマラソン)

記事の詳細はYouTubeにも掲載されています。ぜひ御覧になってください。

〇日本選手権直前ポイント練習1600×3+400×4


 2年連続5000mの日本選手権で3位に輝いている清水。今年は3回目の表彰台を狙う日本選手権となり、優勝を狙っている。ただ、今年はシーズンインの時に怪我をしてしまったそうだ。その影響で今年は日本選手権に出るまでにシーズンインから1度も試合に出ておらず、日本選手権がシーズン初めてのレースになるそうだ。そんな自分の状態を考えて、最低でも入賞はしたいと話す清水。清水は、少し不安ではあるが、練習をある程度継続して行えたことから、楽しんでやりたい、と前向きに捉えていた。
 清水は自身の信念として、変なタイムを出して試合に出るよりも、ちゃんと準備して1つの試合で結果を出すこと、ということを自分の中で持っているようだ。アメリカでプロのチームと一緒に練習をしていた時も、そこは変わらず徹底していたようだ。
 日本選手権直前のポイント練習として選んだのは1600×3 + 400×4本。設定は1600mが1キロ3分2〜5秒のペース。普段行うようなペース走の感覚で行いたいとのことだ。400mはレースペース。1600と400は間をあけて行うようだ。

1600×3+400×4。長野の高地で行った

 ポイント練習がスタート。1人で黙々とこなしていく。6月といえども、標高が高く、雨が降る中でのポイント練習で、かなり気温が低い。厳しいコンディションの中でのポイント練習となった。そんな中でも設定どおりこなしていく。1600mを終え、400mをレースペースで行う。400mも64秒前後できちんとこなした。ポイント練習を振り返って、コンディションが厳しかったので少しきつかった、と振り返った。
 練習後には、SUBARU陸上部のキャプテンである梶谷瑠哉選手と共に楽しく話している様子がうかがえた。帰りは宿舎までダウンを兼ねてジョギングで帰るようだ。

練習後に梶谷選手と楽しそうに話す様子

〇アメリカのプロチームとの練習を通して

 
 2022年のニューイヤー駅伝後から、アメリカにてプロのチームであるBowermanの選手と共にトレーニングをしてきた清水。そこで沢山の学びを得たようだ。
 アメリカで感じた事として、アメリカの選手のプロ意識の高さだという。日本では。駅伝の影響もあって実業団に進む選手が多いが、海外ではプロになれる人は本当に限られてくるようだ。そんな中プロになれた選手はやはり、生活が懸かっているため、真摯に向き合っていて、1つ1つの行動がプロフェッショナルだな、と感じたようだ。また、和気あいあいとして楽しんでいる一面もみられ、切磋琢磨している様子も見られたようだ。

アメリカで学んだ事を語ってくれた

 また、練習に関しても感じる事が多かったようだ。Bowermanで見てきた練習メニューを日本に帰ってきてからも、自分に合うように上手く工夫をして行っている清水。Bowermanで行ったメニューでは、長距離練習ではBowermanの選手と同じレベル、あるいはそれよりも強度の高い練習をできていたようだ。しかし、短い距離のスピード練習がきつく、全然できなかったようだ。アメリカではマイル(1600m)から土台を作って、そこから5000m、10000mと距離を伸ばしていくのに対し、日本は箱根駅伝の20キロをベースに5000mや10000mに挑戦することもあって、アメリカでのスピードの速さに驚いたようだ。練習に関しては、全く違うということはなかったが、日本と違うところとしてスピード練習が多いと感じたようだ。ただ、スピードに関して、清水はすごく重要視していた。5000mで12分台がたくさん出てきていることもあって、上を目指すには、自分が出せるトップスピードが速くある必要があると考えているようだ。他にも世界のカレンダーと日本のカレンダーがうまくあわないということを感じたようだ。休みたい時に休めなかったり、練習をしなきゃいけない時期に試合があったりすることで、苦労をしたようだ。清水は、世界のスケジュールの為に駅伝をどうにかしようと考えるよりも、世界に挑戦するためのスケジュールを考えれる実業団チームがもっと増えるようになれば、日本人がうまく世界にうまく挑戦できるようになるのではないかと考えているようだ。

〇なぜ日本はトラックに苦しんでいるのか

 世界に比べて、トラックの長距離種目で中々勝つことが出来ない事が現状の日本。アメリカでの練習も通してスピードの違いも感じた清水。なぜ日本はトラック競技に苦しんでいるのか語ってくれた。
 そもそも陸上を始める理由というものが違うということが原因の1つなのではないかということがあげられた。日本では特に箱根駅伝にあこがれて、長い距離を走って襷を繋ぐことを目標に頑張る選手が多いようだ。清水自身も駅伝にあこがれて陸上を始めたそうだ。駅伝の為にはどうしても長い距離を中心に練習が行われるようだ。一方アメリカやヨーロッパで陸上を始めるとなると、トラックを目指して頑張る選手が多く、そこがやはり決定的な違いとなると感じたようだ。なので、最近ではトラックを目指して頑張る選手が増えてきたので、それがもっと当たり前になることで、日本が変わっていけるのではないかと考えているようだ。そうすることにより、海外のような短い距離からスピードを中心にベースを作っていくことも可能なのではないかと感じているようだ。

〇SUBARU陸上部奥谷亘監督はなぜ個人を尊重するのか?

 
 日本ではやはり駅伝の人気がすごく、どうしてもチームで練習をするところが多い。また、日本の風習で団体行動をするということが根付いている。そんな中でも、奥谷監督は個人の練習を尊重したいと考えているようだ。
 奥谷監督は、選手達が前向きになってポジティブに練習をする為には、選手自身が自分のやりたい練習を責任をもってやれるようにしてあげる事がよいと考えているようだ。また、スタッフはチームの運営もしなきゃいけないので、選手の個人練習全てを組んであげる事はできないが、皆で練習をするとなると、練習の目的が伝わらなかった場合、嫌嫌やることになってしまい、どんなにこちらが考えてメニューを提示しても自分には合わないで片付けられてしまうということがあるようだ。それならば、自分のやりたい練習を自分で作って、それをサポートし、その結果に対してきちんと自分で責任を負う形にしたようだ。SUBARUのチームがニューイヤー駅伝で予選落ちをしてしまったところからより個人を尊重しようという風に取り組み始めたようだ。

奥谷監督。SUBARUではなぜ個人を尊重するか語ってくれた

〇日本選手権スタート

 2024年6月28日。5000mの日本選手権の日。シーズン最初の試合とはなったが、スタート前の選手紹介では楽しそうにポーズをし、リラックスしている様子であった。

スタート前。リラックスしている様子だ。

 いざスタート。ペースメーカーの影響もあってハイペースで進んでいく。清水は後方から2番の位置につけ、慎重にレースを進めていく。
 先頭ははじめの1000mを2分35秒で通過。清水は2分38秒で通過し、様子を伺った。
 少しずつ順位をあげ2000mを通過。先頭は5分12秒で通過し、清水は5分15秒で通過。
 徐々に順位をあげ中盤の位置へ。3000mを通過。先頭は7分56秒。清水は8分1秒で通過し、かなりきつそうな様子だ。
 集団も崩れ始め、4000mを通過。先頭は10分40秒。清水は10分57秒。ラスト1000mに差し掛かる。
 優勝はHondaの伊藤達彦選手。タイムは13分13秒56の大会新記録。続々と選手が返ってくる。清水は13分33秒99でフィニッシュ。13番であった。目標達成とはならなかったが、13分33秒の好記録であった。

全力を出し切り,ゴール後は倒れ込んだ

〇マラソンに挑戦してみたい

 現在はトラック競技の方で活躍する清水。だが、マラソン挑戦への意欲を語ってくれた。
 トラックの楽しさを捨てきれないと語る清水。だが、ロサンゼルスオリンピックを目標にマラソンに挑戦したいと考えているようだ。陸上をやっていてマラソンをやらず終わるのはもったいないので、挑戦したいという気持ちもあるようだ。
 4年後、彼が今度はマラソン選手として日本のユニフォームを着る日が楽しみだ。