10月13日(火) 晴れ
ここのところ晴れの日が続く。
入院している病院は基本的に2人部屋。相方は中学3年生の中川くん。サッカーをしていて前十字靭帯を断裂したのだそう。
朝食を終えて、コンビニまで中川くんを誘った。ケラケラ笑いながら車椅子2台で風を切って走り抜けると、周りの人の視線が集まる。
コンビニに着いて、お菓子やらジュースやらなんでもかんでもカゴに放り込んで、ついでにオセロも放り込み病室にもどってオセロ大会。中学3年生と32歳の真剣勝負。歳の差はダブルスコア。結果はまさかの1勝2負と負け越した。収穫は、中川くんに彼女がいて、その子の名前がFちゃんだということ。それを看護師さんにバラして、一日中、中川くんを茶化し倒すそんな1日。
中川くんは鹿児島の離島出身で、高校では熊本か鹿児島の高校に進学してサッカーをするそう。私も17年前、鹿児島からサッカーをしに熊本の高校へ進学した。彼にあの頃の自分を重ねながら、「がんばれよー、怪我なんかに負けるなよー」と心の中で叫んだ。
話は変わって、昨日お風呂上がりに髭を剃ろうとしていたら、電気シェーバーの力が弱かった。充電がないわけでもないみたいだし、中の髭が詰まっているのかもしれないとフィルターを開けてみることに。
するとそこには、白髪まじりの毛がたくさん残されていた。親父の毛だ。その毛を手にとりもう片方の手で触ってみたり、眺めてみたり、捨てるのに時間が必要だった。
親父は3週間前亡くなった。たくさんの病気を抱えて入退院を何度も繰り返した。「痛い、しんどい」とよく言っていた。私はそれを軽くあしらっていた。
痛いっていうのは本当に痛く、苦しいというのは本当に苦しいのだ。この入院生活を通して痛感したこと。もっと早くこの入院生活を体験していたら・・・・親父への接し方がまったく変わったものになっていた。
「ごめん」といいながら残された毛をゴミ箱に捨てた。
写真はそんな親父の手と私の手。
亀田信暁
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