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初心者のための機動戦士ガンダム兵器解説『MS-14A ゲルググ』

●開発経緯

 ジオン公国はルウム戦役での勝利後、交渉による戦争終結を目論みましたが、これに失敗してしまいます。長期戦を余儀なくされ、今後MSを実戦投入するであろう地球連邦軍に対して、優位性を保つため、MS-06 ザクIIに代わる次世代機の開発を進めました。

 次世代機に求められたのは、対MS戦を想定した高い機動性と運動性、さらに南極条約締結によって使用が禁止された核兵器に代わるメガ粒子砲の搭載でした。

 当初、本機の開発はジオニック社が担当していましたが、要求されるスペックは非常に高く、開発は難航し、大幅に遅延してしまいます。そこで、公国軍はジオニック社、ツィマット社、MIP社といった主要軍需企業に対して、技術提携を強制し、共同開発として進められることになります。

 そして、U.C.0079年10月、遂にビーム・ライフルの搭載を可能したYMS-14 先行量産型ゲルググが完成します。

 YMS-14はキマイラ隊によってテスト運用された後、本格的に量産が開始されます。それが本機、“MS-14A 量産型ゲルググ”です。

●量産機としては破格の性能

 本機はYMS-14のテスト結果が良好であったこともあり、ほぼそのままの形で量産がスタートしています。そのため、性能差はほとんどありませんが、テスト結果がフィードバックされている分、兵器としての信頼度は向上していると言えるでしょう。

 ただ、YMS-14は厳選された品質の高いパーツで組み上げられていることやすべての機体がエースパイロットに渡っており、それぞれに合わせたカスタマイズが施されてるという点には留意が必要です。

 ただ、いずれにしても、量産機でありながらガンダムに勝るとも劣らない破格の性能を有していることは紛れもない事実です。

●遅すぎた名機

 本機は各部がユニット構造化されており、各工廠ごとに生産するユニットを分けることができました。つまり、各工廠は同じユニットのみを生産すれば良いというわけです。これにより、生産効率が大幅に向上し、終戦までの短期間で738機(バリエーション機を含む)もの数を製造することができました。

 しかし、時すでに遅く、実戦配備は12月を過ぎ、本格的に実戦投入されたのは、12月末のア・バオア・クー攻防戦でした。非常に優秀な機体ではあったものの、追い詰められた公国軍が戦局を大きく覆す逆転の一手とはなり得ず、“遅すぎた名機”と呼ばれることになります。

●苦労したビーム・ライフルだったが

 本機の目玉とも言えるビーム・ライフルでしたが、本体よりも完成が遅れ、12月になって、ようやく完成しています。しかも、ビーム・ライフルは生産性が悪く、ア・バオア・クー攻防戦の時点で、配備が行き渡っていませんでした。連邦軍がRGM-79の主兵装をビーム・ライフルからビーム・スプレーガンに変更した理由がまさにこれなのです。

 運良くビーム・ライフルが配備された機体も連邦軍によって、“ビーム撹乱幕”と呼ばれるビームを乱反射させ、その威力を減衰させる特殊な粒子がばら撒かれていたため、思ったような運用ができませんでした。

●兵士不足も災いして

 最も問題となったのがパイロットの確保でした。一年戦争末期になると、戦前から訓練してきたエース、熟練パイロットのほとんどが失われており、新兵ばかりでした。

 しかも、生き残っていた熟練パイロットや新兵たちも完熟訓練を十分に行うことなく、新型の本機で出撃することを嫌い、これまで通りのMS-06やMS-09Rに搭乗したのです。

 結局、本機に搭乗することになった者のほとんどが学徒出陣によって招集された若者たちでした。実戦経験がなく、十分な訓練さえ受けていない彼らに機体の性能を引き出し、戦果を挙げるなど、到底不可能な話でした。

 一説には、ア・バオア・クー攻防戦に投入された本機の数はわずか67機だったと言われています。機体のほとんどは乗り手が見付からず、本国やグラナダの防衛用に温存されることになり、そのまま終戦を迎えることになってしまったのです。

“MS-14A ゲルググ”

●スペック

頭頂高:19.2m
本体重量:42.1t
全備重量:73.3t
ジェネレーター出力:1,440kW
スラスター総推力:61,500kg
装甲材質:超硬スチール合金
主な搭乗者:アナベル・ガトー、エリク・ブランケほか公国軍パイロット

●基本武装

○ビーム・ライフル
 MIP社が開発した公国軍では初となるMSでも携行可能な実戦型ビーム兵器です。取り回しの面では劣りましたが、威力はRX-78-2のものに引けを取らないものでした。ただ、完成が遅延したことや生産性の悪さが重なって、十分に行き渡ることはありませんでした。

○ビーム・ナギナタ
 アルバート社が開発した近接格闘戦用のビーム兵器です。背部パネルあるいは腰部ラッチにマウントされます。長刀状のビーム刃をユニットの両端で生成するツインエミッターが採用されており、手首を360度高速回転させながら斬り付けることも可能です。ただ、扱いが難しいこともあり、ビーム刃を片側のみで生成して運用されるケースも多かったようです。

○専用シールド
 広い防御範囲を誇る大型のシールドです。手持ちおよび背部パネルにマウントすることができます。“耐ビーム・コーティング”と呼ばれる特殊な加工が施されており、実体弾だけでなく、ある程度のビーム攻撃も防ぐことができます。

せっかくのシールドも背負ったままで、
ほぼデッドウェイトとなっていたようです。

●ゲルググがもたらしたもの

 本機の量産があと一ヶ月も早ければ、一年戦争の行く末は変わっていたかもしれないと言われていますが、公国軍が勝利することができたかと言われれば、現実的ではありません。戦争は長期化したかもしれませんが、圧倒的な物量差の前には敵わないでしょう。

 それでは、本機が量産されたことに意味がなかったのかと言うと、そんなことはありません。ア・バオア・クー攻防戦に勝利した連邦軍も甚大な被害を出しています。ジオン本国やグラナダに本機が大量に残存していたことで、有利な条件で終戦協定を結ぶことができたと言えるのではないでしょうか。

 ただ、敗戦を受け入れられない残党たちを勇気付ける存在ともなってしまい、戦後も長きに渡って続いていく紛争の遠因になってしまったとも言えます。

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