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初心者のための機動戦士ガンダム兵器解説『MS-06R-1A 高機動型ザクII R-1A型』

●開発経緯

 南極条約締結により、戦争の長期化が決定的なものになると、地球連邦軍が全力でMS対策を行うであろうことは自明でした。これにより、ジオン公国軍は主力であるMS-06をベースに様々なバリエーション機を開発していましたが、次世代MSの開発が求められることになります。

 MS-06の高性能機としては、既にMS-06Sが完成していましたが、これはあくまでMS-06Fと生産ラインを共有できる範囲内での強化であったため、開発責任者であるエリオット・レム少佐(当時)はその性能に満足していませんでした。

 彼はMS-06Fに全面改修を施し、地上戦を考慮しない空間戦闘用の高性能MSの開発を進めていくことになります。これが所謂“R型”と呼ばれる機体群です。

 MS-06Sについて、詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。

●プロトタイプの開発

 R型の開発に当たり、主に改修が施されたのがバックパックと脚部でした。

 大推力スラスターと大容量燃料タンクを備えた大型バックパックに換装し、機動力を大きく向上させました。さらに稼働時間延長のため、腰部装甲内の隙間にも燃料タンクを増設しています。

 脚部に関しては、それ自体をひとつの推進ユニットとみなし、左右それぞれにスラスターを3基ずつ設置しました。これにより、歩行脚としての機能は最低限度に抑えられ、地上戦での運用は難しくなった反面、機動性と運動性が大きく向上しています。

 グラナダ工廠にて、MS-06Fの最新ロットをベースにプロトタイプである“MS-06RP”が2機生産され、評価試験が行われました。テストの結果は良好で、R型の量産が決定します。

●問題発生

 R型の主な改修点はバックパックと脚部であることは前に述べましたが、それに伴ったジェネレーターやアクチュエーターの出力向上やフレームの強化なども必要になり、外観こそ従来のMS-06と大きな差異はありませんが、内部構造はまったく異なった全面改修機となっています。

 そのため、完成した“MS-06R-1”の量産には既存の生産ラインが使えません。しかし、主力機であるF型や地球侵攻作戦に投入するJ型などの量産に追われていた時期に生産ラインを変更することは難しく、少数が漸次配備されていくことになりました。

 しかし、ルウム戦役で多数のベテランパイロットが失われたことにより、高い操縦技術が求められるR型を乗りこなせるパイロットは少なく、すぐに推進剤を使い切ってしまうパイロットが続出しました。

 さらに新型スラスターは不具合が頻発し、既存のMSと全く異なる新しい構造に現場の整備士たちは大いに苦しめられることになりました。

 このような問題を解決するため、MS-06R-1は22機が生産されたところで、一旦中止されることになります。

●R-1A型の誕生

 R-1型の問題を解決するため、様々な改修が加えられたMS-06R-1Aが開発されます。

 まず、不調だったスラスターの生産を推進器類の技術に定評のあるツィマット社に発注しました。ジオニック社内では反対の声も多かったのですが、開発責任者であるエリオット・レムの独断で進められたようです。

 次に推進剤をすぐに使い切ってしまうという問題に関しては、燃料タンクをカートリッジ式に変更することで対応しています。これにより、母艦での補給が大幅に簡略化されただけでなく、宇宙空間での補給も可能になりました。そのため、本機を擁する部隊には補給用カートリッジを搭載したMS-06Fが随伴することになります。

 さらに生産性を向上させるため、外装もできる限り、MS-06Fとの共通化が進められています。

●量産機には向かず再び生産中止

 本機のテスト結果は良好で、量産が開始されることになり、熟練パイロットを中心に配備が進んでいきました。

 しかし、R-1型から根本的な問題解決には至っておらず、コスト面でも量産機としては難しいということで、R-1型から改修された10機を含めた合計66機の生産に留まりました。

●シン・マツナガ専用機

 本機は“ソロモンの白狼”と呼ばれたシン・マツナガが搭乗したことで有名です。彼は自身に敵の注目を集めるため、敢えて宇宙空間で目立ってしまう“白”をパーソナルカラーとしており、本機のカラーリングも白を基調としています。

 また、R-1型を改修した機体であるため、一部外装や脚部燃料タンクの形状が一般的なR-1A型と異なり、R-1型と同様のものとなっており、マルチブレードアンテナはスタビライザー型が採用されました。

“MS-06R-1A 高機動型ザクII シン・マツナガ専用機”

●スペック

全高:18.0m
頭頂高:17.5m
本体重量:61.8t
全備重量:76.8t
ジェネレーター出力:1,012kW
スラスター総推力:4,980kg
装甲材質:超硬スチール合金
主な搭乗者:シン・マツナガ、黒い三連星、エリック・マンスフィールド、マサヤ・ナカガワほか公国軍エースパイロット

●基本武装

○360mmジャイアント・バズ
 一年戦争当時、MS用携行兵装としては最大級の実体弾砲で、巡洋艦クラスであれば、一撃で撃沈させるほどの威力を誇ります。砲弾は後方の弾倉に10発装填されています。キャリフォルニア・ベース占領時に手に入れた戦艦用の360m砲弾およびその生産ラインを利用するため、H&L(ハニーウォール アンド ライセオン)社によって開発されました。

○120mmザク•マシンガン
 MS-06以外にも広く使用されたジオン公国軍MSの一般的な兵装です。モノアイとスコープを連動させることで、精密射撃も可能です。装弾数は145発で、セミオートとフルオートに切り替えが可能になっています。徹甲弾、榴弾、徹甲榴弾、成形炸薬弾など弾種も豊富に用意されています。

○280mmザク•バズーカ
 弾速に難はありましたが、その高い威力は対艦用兵装として猛威を振るいました。装弾数は単発もしくは5発とされますが、装填する描写がなく、詳細は分かりません。

○ヒート•ホーク
 セラミック系高分子化合物の刃を赤熱化することで、対象を溶断します。数回使用すると、刃先が劣化してしまい、交換が必要になります。

特徴的な大型バックパックと脚部推進ユニット

●エースにより大きな戦果を挙げる

 少数の生産に終わった本機でしたが、エースパイロットたちからの評価は高く、「連邦軍の戦艦を沈めるよりもR型を手に入れる方が難しい」と言われるほど、ベテランパイロットたちから拝領が望まれました。

 本機は名だたるエースパイロットが搭乗したこともあり、大きな戦果を挙げます。そして、改良型の開発は引き続き行われることになり、後のMS-14に繋がっていきます。

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