第17回初心者のための機動戦士ガンダム解説『来るべきオデッサ・デイ』
ホワイトベースは北米大陸を脱出し、北太平洋を横断してユーラシア大陸へと進路を取りました。この頃には連邦軍のMS配備が少しずつ進んできており、戦局にも変化が現れていました。
●死にゆく者たちへの祈り
10月9日、公国軍のウルフ・ガー隊がゴビ砂漠にある連邦軍の基地を襲撃しています。
同隊は1名を除いて、犯罪者によって構成された特殊部隊で、ヘンリー・ブーン大尉を隊長とします。所謂“捨て駒”のようなものと言えるでしょう。
連邦軍の中央アジア反攻作戦“デザート・ドラゴン”の迎撃に参加しましたが、これに敗れて、本隊とはぐれてしまったところ、同基地を発見しました。
同基地には連邦軍のアルバトロス輸送中隊が駐留していました。宇宙用装備やコア・ブロック・システム、ビーム・ライフルなどをオミットし、運動性を追求した陸戦用の新型MS“RX-78XX ピクシー”をホワイトベース隊に届けるという任務に就いていましたが、それまでの戦いで戦力の大半を失っていました。
輸送中のRX-78XXに乗り込んだボルク・クライ大尉はヘンリー大尉の駆るMS-08TX イフリートの撃破しますが、交戦中にアルバトロス輸送中隊の隊長ノクト・ガディッシュ少佐はボルク大尉を置き去りにして、ミデアで基地から脱出してしまいました。
ひとり残されたボルク大尉はウルフ・ガー隊で唯一生き残ったサキ・グラハムを基地で保護しますが、その後の2人の行方は分かっていません。
●2度目の補給
同日、ホワイトベース隊はマチルダ隊による2度目の補給を受けています。
ここでは不調に陥っていたエンジンの修理が行われ、その間にマチルダ少尉から連邦軍による大規模な反攻作戦“オデッサ作戦”が予定されていることを聞かされます。
この隙を突いて、クワラン曹長率いる公国軍部隊が奇襲を仕掛けました。MSはザクIIが1機のみでしたが、これを囮にワッパがガンダムに取り付きます。アムロは生身の人間への攻撃を躊躇ってしまったため、ガンダムに時限爆弾を仕掛けられてしまいます。
ワッパの機銃により、1つが爆発して、シールドが吹き飛びましたが、アムロが間一髪のところで残り全ての爆弾を排除して事なきを得ています。
●ククルス・ドアンの島
翌10月10日、ホワイトベースは連邦軍の救難信号をキャッチします。アムロがコア・ファイターでその島へ向かいます。
アムロはそこで公国軍の脱走兵ククルス・ドアンと彼によって保護されている戦争孤児たちと出会いました。
実は子供たちの両親を死に追いやってしまったのはドアンの流れ弾で、上官から子供たちも殺すように命じられますが、それに従うことができず、軍を脱走し、孤児たちの面倒を見ていたのです。
ドアンは脱走する際に乗機のザクIIを持ち出しており、島に近づくものは連邦軍であっても武装解除させて追い払っていました。ホワイトベースに救難信号を送っていたのは、武装をすべて奪われ、シートに縛り付けられていた連邦兵士です。
ドアンはMSパイロットとして優秀で、丸腰にも関わらず、彼を追ってきたザクIIを格闘戦で撃破しています。しかし、アムロは戦いがまた次の戦いを生んでいるとして、ガンダムでドアンのザクIIを海に沈めています。
子供たちは納得していないようでしたが、ドアンはこれで戦いから解放されると感謝していました。ただ、それから彼らがどうなったのかは明らかになっていません。
その後、ホワイトベースはユーラシア大陸に上陸し、中央アジアに進路を取ります。
●オデッサ・デイに向けて動き出す
同日、レビル将軍がオデッサ作戦に向けて、イギリスのベルファスト基地から第3軍を出撃させます。そして、翌日にはドーバー海峡を横断し、各地に早期の部隊集結を呼びかけています。
欧州はそのほとんどが公国軍の支配下にあったため、戦力を集中させて、一気にオデッサを攻め落とすという作戦でした。12日にはオスロ港から2部隊を南下させ、公国軍の目を北に向けるための陽動も行っています。
●新型が次々と開発される
徐々に劣勢に傾き始めた公国軍は新型を次々と開発することで対抗しています。
10月10日には“マッドアングラー級潜水母艦”が完成しています。潜水艦隊の旗艦として機能し、水陸両用MSや水中用MA、小型艦艇や航空機も搭載することができます。
さらに16日には“統合整備計画”が適用されたMS-06Fの最終生産タイプとなる“MS-06FZ ザクII改”とフラナガン機関が開発したサイコミュ・システムの実験機として“MAM-03 ブラウ・ブロ”の開発もスタートしています。
10月はそのほかにも次期主力MSとして開発が進められていた“YMS-14 先行量産型ゲルググ”や制式採用には至らなかったものの、高い近接格闘能力を有する“YMS-15 ギャン”がロールアウトしています。
また、サイコミュ・システムを搭載したMS開発も計画されています。“MS-16X計画”または“ビショップ計画”とも呼ばれ、その試作機となる“MS-06Z サイコミュ試験用ザク”の開発がスタートしたのも同月となります。
一方、連邦軍も主力MSとなる“RGM-79 ジム”の生産が本格化し、“RGC-80 ジム・キャノン”の試作機がロールアウトしています。
U.C.0079年10月は両軍のMS開発にとって非常に重要な月と言えるでしょう。
●ワルシャワに野戦本部を設置
10月20日、オデッサ作戦の集結地点となっていたワルシャワに連邦軍の部隊が続々と到着し、同地に野戦本部を設置しています。
そして、作戦の最終確認が行われると、25日には作戦の目標がオデッサであることを隠匿し、公国軍の戦力を分散させるため、各地に陽動部隊が派遣されることになります。
さらにこの間にも航空戦力の増援を進めていました。MSは対空攻撃能力に乏しいため、コストパフォーマンスを度外視したアウトレンジからの爆撃はMSにとって脅威となったわけです。
●謎の巨大MAを追え
連邦軍がワルシャワに野戦本部を設置した同日、第08MS小隊がアプサラス計画の実験機と遭遇しました。小競り合いにはなったものの、本格的な交戦状態には入らず、互いに撤退しています。
10月23日、報告を受けた連邦軍はオデッサ作戦直前ということもあり、その動向を窺うため、第08MS小隊に謎の巨大MAの捜索命令を下しました。ただ、レーダーが使えない状況での捜索は難航し、なかなか足取りを掴むことができずにいました。
●YMS-14の先行配備が始まる
U.C.0079年10月26日、キシリア直属の突撃機動軍エース部隊である“キマイラ隊”に“YMS-14 先行量産型ゲルググ”24機が先行配備されます。
“真紅の稲妻”ことジョニー・ライデン少佐が所属することで有名な同隊は機体を受け取った後、サイド3を出港し、テスト運用を行うことになります。
ただ、ビーム・ライフルの量産は遅れており、この時点ではロケットランチャーやマシンガンなど既存の兵装を使用しています。