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初心者のための機動戦士ガンダム兵器解説『MS-14C ゲルググキャノン』

●開発経緯

 ジオン公国軍は戦争の長期化を見据えて、MS-06に代わる次期主力MSとして、MS-14を開発しました。

 MS-14は対MS戦を想定した高い運動性を有しており、ビーム兵器の携行にも成功しています。さらにバックパックを換装するだけで、用途に合わせた仕様に変更できるという画期的なシステムも導入されています。

 本機はキャノンパックを装着した砲撃戦仕様で、頭部ユニットもビーム・キャノンの照準装置やサブカメラを搭載した専用のものに換装されます。

 キャノンパックは開発の遅延していたビーム・ライフルの代わりとなるビーム兵器という位置付けで、24機のYMS-14と共に12機分がキマイラ隊に配備されました。そして、同隊による試験運用が行われた後、MS-14Aに対応したものが生産されています。

 厳密にはYMS-14ベースとMS-14Aベースのものとでは別の機体になるのですが、明確に区別はされておらず、どちらもMS-14Cとして扱われているようです。

●キャノンパック

 ビーム・キャノンは水陸両用MSで培った技術が応用されており、大型で射角に制限はありますが、威力や射程距離はビーム・ライフルを上回ります。

 さらにビームには質量がほぼないため、発射時の反動が非常に小さく、従来のキャノンタイプで問題となっていた機体の安定性もクリアしています。

 また、キャノンパックには重量の増加による機動性や稼働時間の低下を抑えるため、B型と同型のベクダードスラスターとプラペラントタンクも搭載されています。

 ただ、ビーム・キャノンの使用に電力を大きく割かれるため、実際にはA型よりも機動性および運動性は劣る結果になりました。

●セミオートマチックドライブ

 専用の頭部ユニットには、ビーム・キャノンの照準装置やサブカメラが搭載されています。これにより、自動照準を行ってくれるため、パイロットは機体の制御に専念することができます。

 一部のエースパイロットは自動照準を信用していないためか、通常の頭部ユニットのまま運用している例もありますが、ほとんどの場合は頭部ユニットも換装して運用したようです。

●近接戦闘能力も高い

 本機は砲撃戦仕様に分類されますが、MS-14は対MS戦を想定した近接戦に対応しているため、最初から支援機として設計されたMSとは異なり、前線で戦うだけの性能を有しています。

 本機には両前腕部の熱核ジェットユニットを近接戦闘用のミサイルランチャーとバックラーシールドに換装した機体が多く見られ、実際に近接戦闘で戦果を挙げたパイロットも少なくなかったと言われています。

“MS-14C ゲルググキャノン”

●スペック

頭頂高:19.3m
本体重量:55.8t
全備重量:79.8t
ジェネレーター出力:1,440kW
スラスター総推力:73,900kg
装甲材質:超硬スチール合金
主な搭乗者:ジョニー・ライデン、トーマス・クルツ、ジェラルド・サカイほか公国軍パイロット

●基本武装

○ビーム・キャノン
 開発が遅延していたビーム・ライフルの代替として配備されたバックパックと一体化したビーム兵器です。大型で射角に制限はあるものの、威力や射程距離はビーム・ライフルを上回ります。また、専用の頭部ユニットに搭載された照準デバイスと同期させることにより、自動照準が行われます。

○ビーム・ライフル
 MIP社が開発した公国軍では初となるMSでも携行可能な実戦型ビーム兵器です。取り回しの面では劣りましたが、威力はRX-78-2のものに引けを取らないものでした。ただ、完成が遅延したことや生産性の悪さが重なって、十分に行き渡ることはありませんでした。

○ビーム・ナギナタ
 アルバート社が開発した近接格闘戦用のビーム兵器です。腰部ラッチにマウントされています。長刀状のビーム刃をユニットの両端で生成するツインエミッターが採用されており、手首を360度高速回転させながら斬り付けることも可能です。ただ、扱いが難しいこともあり、ビーム刃を片側のみで生成して運用されるケースも多かったようです。

○3連装ミサイルランチャー
 右前腕部の熱核ジェットユニットと換装します。近距離戦で有効な兵装であるため、本機に装備されることが多かったようです。

○バックラーシールド
 左前腕部の熱核ジェットユニットと換装する形で装着する増加装甲です。近接格闘戦において、ある程度の効果はあったようですが、実質的にはミサイルランチャーのカウンターウェイトとなっています。

○専用シールド
 広い防御範囲を誇る大型シールドです。“耐ビーム・コーティング”と呼ばれる特殊な加工が施されており、実体弾だけでなく、ある程度のビーム攻撃も防ぐことができます。

砲撃支援だけでなく、近接戦でも力を発揮します。

●ビーム兵器だけにはならない理由

 本機は熟練パイロットでしか扱うことができないB型とは異なり、新兵でも扱いやすい機体でしたが、終戦までに実戦投入された機体は僅か15機に留まっています。

 これは性能に問題があったとか、生産が間に合わなかったというわけではありません。実際、122機分のパーツが用意されてはいました。

 しかし、MS-14系が本格的に実戦投入されたア・バオア・クー攻防戦では、連邦軍がビーム兵器を無効化するビーム撹乱幕を多用したため、活躍の機会が奪われてしまったというわけです。

 戦後、ビーム兵器はビーム撹乱幕や耐ビーム・コーティングでは防ぐことができないほど、高出力化が進んでいきます。その結果、実体弾は廃れてしまったのかというと、そんなことはありません。

 確かにスペースデブリをできるだけ増やさないように、マシンガンのようなものは消えていきましたが、バズーカやミサイルは多用されています。

 ビーム兵器が強力になればなるほど、装甲よりも機動性や運動性、稼働時間などが優先されるようになります。ビームは防ぐのではなく、避けるというわけです。そこで有効になったのが、バズーカやミサイルのような爆発することで広い効果範囲を持った実体弾でした。

 このように、いくら強力な兵器でも必ず対策され、新たな兵器が生まれます。その繰り返しです。その辺りの流れを追っていくのも面白いものです。

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