初心者のための機動戦士ガンダム兵器解説『MA-04X ザクレロ』
●開発経緯
ジオン公国軍は地球連邦軍に独立戦争を挑む以前、ミノフスキー粒子散布環境下に最適化した新しい主力兵器の開発を求めました。MIP社“はMIP-X1”を開発しましたが、ジオニック社が開発した“ZI-XA3 クラブマン”に汎用性という面で敗れ、主力兵器の座を逃してしまいます。しかし、その戦闘力の高さは評価され、研究は続行されることになります。
戦争の長期化が余儀なくされると、MIP-X1をベースに特定の条件や環境下に特化したMS以上の火力や機動力を有する一騎当千の新兵器“モビルアーマー”を開発し、兵士不足を補おうとしました。
本機は高機動を活かした一撃離脱戦法を想定した空間戦闘用MAとして、MIP社がキャリフォルニア・ベースで開発をスタートさせました。
しかし、兵装やメインエンジン、スラスターの出力不足やそれに伴う機体全体のバランスの悪さなどの問題から設計変更が繰り返され、開発は大幅に遅延してしまいます。
そして、後から開発がスタートした同じく空間戦闘用MAである“MA-05 ビグロ”が先に完成し、その性能が高く評価された結果、本機は実用テストが行われる前に廃案となってしまいました。
●本機の問題点
本機は大推力スラスターを搭載していましたが、出力不足のため、その機動力はMS-09R リック・ドムを下回り、期待されたほどの性能を発揮することはできませんでした。
また、AMBACシステムや姿勢制御用のサブスラスターも十分なものとは言えず、運動性も高くありません。そのため、コンピューターを使用すれば、簡単に動きを読めてしまうという欠点がありました。
兵装に関しても、この頃はまだ収束率の高いメガ粒子砲の小型化技術が進んでおらず、拡散メガ粒子砲が搭載されています。照射面積が広いというメリットはあったものの、射程距離が短く、近距離戦でしか使用できないというデメリットがありました。
この程度の性能ではMSの代わりに生産する意味がまったくないというわけです。
●奇抜なデザインの意味は?
本機最大の特徴と言っても過言ではないのが大きく口を開けた怪獣の頭のようなデザインです。これは会敵した兵士に驚きや恐怖など心理的な影響を与えることで、隙を生じさせるという狙いがあったとも言われます。
また、釣り上がった目に当たる部分は複眼カメラになっており、MSのような運動性が期待できない分、広い視界を確保したり、高速移動時に目標を的確に捕捉するため、モノアイに代わって採用されました。
●失敗作となった原因
本機の開発が上手くいかなかった原因として考えられるのが無理な小型化です。
本機はMSと比較すると大型ではありましたが、MA-05を始めとする公国軍のMAとしては非常に小型です。高性能と小型化を両立させようとした結果、中途半端な性能に終わってしまったのではないでしょうか。
●スペック
制式採用に至らず、実験機ですら未完成のため、スペックは不明な点がほとんどです。
出力:180,000馬力
最高速度:マッハ5.2
装甲材質:超硬スチール合金
主な搭乗者:デミトリー
●基本武装
○拡散メガ粒子砲
本体中央部に装備されています。照射面積が広く、連射性も高いという反面、威力や射程距離に問題を抱えていました。また、搭載されたパワーコンデンサーにより、長時間の使用が可能です。
○ヒート・ナタ
両腕部に装備されています。赤熱化された描写はありませんが、ヒート・ホークの技術が応用されているようです。すれ違いざまに敵を斬り付けます。
○4連装ミサイルランチャー
両脇下に1基ずつ装備されています。主に牽制に使用されます。
●技術は多くの失敗の上に成り立つ
結果的に本機の開発は失敗には終わりましたが、現状の技術ではMAの小型化は困難であることが判明し、MA開発の道筋を示したという意味があります。
また、実戦に参加したという記録が複数残っていたり、ニュータイプ専用MAの実験機に流用された機体も存在するようです。
世の中に出回っている技術というのは、兵器に限らず、それ以上の多くの失敗の上に成り立っています。本機の開発も決して無駄ではなかったと言えるのではないでしょうか。