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初心者のための機動戦士ガンダム兵器解説『MSM-10 ゾック』

●開発経緯

 ジオン公国軍は地球侵攻に際して、地球の表面積の約7割が海洋で占められていることから海洋戦力が必要だと考え、水陸両用MSの開発を進めました。

 水陸両用MSとして初めて制式採用されることになったMSM-03は海水を使用して機体を冷却することによって、それまで排熱の問題でMSには搭載できなかった高出力ジェネレーターを搭載し、メガ粒子砲の運用も可能であることを証明しました。

 本機は海水を冷却剤として使用できるという水陸両用MSの利点を最大限に利用して、火力の強化をメインに設計されました。

 本機の開発はMAの開発がスタートした時期と重なります。公国軍は国力の低さから汎用性を重視したMSを主力としましたが、「高火力・重装甲・高機動」という汎用性を度外視し、少数精鋭で戦力差を覆そうという“モビルアーマー構想”も並行して進められていたのです。

 本機はそのモビルアーマー構想の影響を受け、MSとは名ばかりの極めて特異な機体として完成しています。

●破格の火力

 本機は頭頂部に1門、両肩部の前後に2門ずつ合計9門ものメガ粒子砲を内蔵しています。それぞれの砲の射角は制限されてしまいますが、分散配置されているため、死角は多くありません。

 さらにMS-06の約4機分に相当する高出力ジェネレーターのおかげで、十分な威力や射程距離を確保できただけでなく、連射性能も高く、ジェネレーター直結型でありながらエネルギーCAP並の連射が可能です。

●移動砲座と呼ぶに相応しい構造

 本機には手足に相当するユニットが一応備わってはいたものの、手足としての機能はほとんどないと言っても過言ではありません。

 腕部のアイアン・ネイルは近接格闘戦用の兵装や簡易マニピュレーターとして機能しましたが、実質的にはメガ粒子砲を使用する際の反動を抑えるアンカーとして備わっているようなものです。

 脚部に関してはほとんど可動せず、歩行脚としての機能はありません。その代わりにホバーユニットが備わっており、地上での移動に使用します。

 また、ロケットエンジンを用いたジャンプ機能も備わっており、単純な長距離ジャンプならMS-06を大きく上回る飛距離を有しています。

 本機はその重装甲も相まって、MSというよりも周囲を焼き尽くす移動砲座と呼ぶに相応しい構造となっています。

●前後対称の機体

 その一方、本機の機動性や運動性は非常に低く、まともに旋回すらできません。そのため、機体を前後対称にして、モノアイを背面に移動させると、背面があたかも前面であるかのように操作できるようになっています。

●意外と高い航行能力

 地上では鈍重な本機ですが、水中では話が変わります。その見た目から“クチバシ”と呼ばれるフェアリングシェルは速度や軌道に合わせて、展開角を変更することが可能で、その整流効果は水陸両用MSの中でも随一だと言われています。最高速度はMSM-03には劣りますが、MSM-04を上回っています。

●水陸両用MSの上陸を支援

 本機の主な役割としては、他の水陸両用MSに先行して浮上し、橋頭堡となって上陸作戦を支援するというものです。

 キャリフォルニア・ベースで3機の試作機が生産され、1号機と3号機は北大西洋潜水部隊のマンタレイ隊に、2号機はマッド・アングラー隊に配備されています。2号機がジャブロー侵攻作戦に投入されましたが、同作戦で撃破されています。

 運用次第でかなりの戦果が期待できるとして、制式採用が決定していたと言われていますが、主戦場が宇宙へと移行していくタイミングと重なってしまったこともあり、量産は見送られることになります。

“MSM-10 ゾック”

●スペック

頭頂高:23.9m
本体重量:167.6t
全備重量:229.0t
ジェネレーター出力:3,849kW
スラスター総推力:253,000kg
最高速度:63kt
装甲材質:チタン・セラミック複合材
主な搭乗者:ボラスキニフ

●基本武装

○メガ粒子砲
 頭頂部に1門と両肩部の前後に各2門ずつの合計9門装備されています。高出力のジェネレーター直結型でありながら連射性も高く、その火力はMS1個中隊に匹敵するレベルと言われます。

○フォノンメーザー砲
 頭頂部のメガ粒子砲をフォノンメーザー砲とした資料も見られます。音の振動を飛ばして破壊するという兵装で、水中でも減衰しないのが特長です。現在では実装はされておらず、実際にはメガ粒子砲が装備されたという説が有力のようです。

○アイアン・ネイル
 両腕部に装備されています。近接格闘用兵装や簡易マニピュレーターとして機能しますが、腕部の可動域が狭いため、兵装として使用するよりも、メガ粒子砲を使用する際のアンカーとして想定されていたようです。

頭頂部の砲はメガ粒子砲とする説が有力?

●MAやビーム兵器開発の礎に

 本機は完成したタイミングが悪く、量産は見送られてしまいましたが、そのコンセプトや技術はMAやビーム・ライフルの開発へと繋がっていきます。

 劣勢となった公国軍はその戦局を打開するため、大戦末期には一騎当千を目指したとんでもない兵器を次々と送り出すことになります。

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