初心者のための機動戦士ガンダム兵器解説『MSM-04 アッガイ』
●開発経緯
ジオン公国軍は地球侵攻に際して、地球の表面積の約7割が海洋で占められていることから海洋戦力が必要だと考え、水陸両用MSの開発を進めました。
最初にツィマット社の開発した“MSM-03 ゴッグ”が制式採用され、一定の戦果を挙げましたが、陸上での稼働時間や機動性、運動性などに問題があったことから新たな水陸両用MS開発が進められることになります。
本機の開発はMIP社が開発する水陸両用MSよりも後から始まりましたが、MIP社はMSの開発実績がなく、より高い完成度を求めたため、開発は大幅に遅延してしまいました。一方、本機は後から開発が始まりましたが、既存のMSからパーツを流用できたことから先にロールアウトし、本来MIP社のMSに与えられるはずだった“MSM-04”という型式番号が与えられています。
●MS-06Jのパーツを多数流用
初の本格的な水陸両用MSとなるMSM-03には新たな技術が多数実装されたことで、コストや生産性に問題を抱えていました。本機の開発を行ったジオニック社(子会社であるスウィネン社とも言われています)はMSM-03の簡易量産型というコンセプトの下、MS-06Jのパーツの多くを流用することで、それらの問題の解決を図りました。
また、MS-06からの機種転換がスムーズに行えるようにコックピットはMS-06と共通規格となっています。さらに複座式コックピットを採用したことで、水陸両用MSの訓練にも用いられました。
本機はパーツの調達が容易で、運用コストも低く抑えることができたため、多くの戦場に配備されることになります。
●水陸両用機というより湿地帯専用機
MS-06Jの基本フレームを流用したことで、機体は大型化してしまいましたが、陸上での機動性は高く、軽快に跳躍することができるほどの運動性を誇り、陸戦用MSと遜色ない動きを実現しました。
その一方で水中航行能力は低く、機動性や航続距離に問題を抱えていました。海洋では潜水艦との連携が必須となり、柔軟な運用が困難だったこともあり、主に湿地帯や沼沢地で運用されることになります。
●隠密作戦で活躍
水陸両用MSは海水を利用した水冷式の排熱機構を採用することで、より高出力のジェネレーターを搭載することができました。しかし、これでは上陸後の稼働時間が制限されるため、本機には水冷式と空冷式のハイブリッドタイプの排熱機構が採用されました。
本機のジェネレーターはコストや生産性を重視し、MS-06Jのものを2基搭載することで高い出力を確保しました。水中航行時は1基のみで稼働することができたことから排熱量は他の水陸両用MSと比較してかなり低く抑えることができました。その結果、熱センサーに感知され難いという特性を得たことで、偵察や斥候など高い隠密性が要求される任務に用いられることになります。
●スペック
頭頂高:19.2m
本体重量:91.6t
全備重量:129.0t
ジェネレーター出力:1,870kW
スラスター総推力:109,600kg
最高速度:53kt
装甲材質:超硬スチール合金
主な搭乗者:アカハナ、イワノフほか公国軍MSパイロット
●基本武装
○105mmバルカン砲
頭部に4門装備されています。射角は制限されてしまいますが、ザク・マシンガン4丁分に相当する火力を有していることになります。
○アイアン・ネイル
右腕部先端に内蔵されています。他の水陸両用MSと同様、腕部にはフレキシブル・ベロウズ・リムと呼ばれる多重関節機構が採用されています。本機のものは特に伸縮性の高いものが採用されたことで、リーチが長くなっています。さらに簡易マニピュレーターとしても機能し、洞窟の天井を伝って移動することも可能でした。
○6連装ミサイルランチャー
左腕部先端に内蔵されています。MS-06Jの脚部3連装ミサイルランチャーに近い構造になっています。また、腕部ユニットは換装可能でアイアン・ネイルとミサイルランチャーの選択式になっています。
○バルカン砲
右腕部先端中央に内蔵されています。詳細は不明ですが、61式戦車を容易に撃破する威力を有しています。
○メガ粒子砲
右腕のバルカン砲の代わりに実装された機体も存在するようですが、詳細は不明です。
●バリエーション機も開発される
簡易量産機ということで、パイロットたちがあえて乗りたい機体かということに関しては疑問が残りますが、本機は水陸両用MSの中でも成功した機体と言えるのではないでしょうか。特に生産性の高さは設計段階から注目されており、本機の開発過程で生まれた試作機をベースにしたバリエーション機の開発も行われています。それらはジャブロー攻略のためだけの“特務用MS”として実戦投入が予定されていましたが、ジャブロー攻略作戦が前倒しになったことから、同作戦への投入は間に合いませんでした。