で、電気自動車って燃費いいの?
電気自動車の燃費を伝えるのは難しい
VW ID.4に乗るようになって、周りの人からこんなことを聞かれるようになった。
これに対する回答はとても難しい。自動車の燃費というとkm/L、つまり燃料1リットルあたりどのくらいの距離を走れるか?という単位で表す(燃料消費率)。これはハイブリッド車(HEV)であれプラグインハイブリッド車(PHEV)であれ、燃料を入れて走る車はすべて同じだ。
これに対して電気自動車(BEV)には燃料を入れる必要はまったくない。車に搭載されているバッテリーの電力のみで走ることになるため、バッテリーに充電した電力量に対してどのくらいの距離を走れるかという単位で電費(電力消費率)を表す。つまり、燃費と電費は単純に比較できない。
一般的に電費はkm/kWh(1kWhで走る距離)かWh/km(1km走るのに必要な電力)で表すが、燃費のkm/Lと合わせるため、今回はkm/kWhで電費を表すことにする。
自動車カタログでの表現
自動車カタログ上で燃費はkm/Lで記載される。ただ、自動車の使用方法によってその数値は変わるため、共通の測定方法により算出した数値が掲載される。現在はWLTCモードという国際的に基準となっている方法が採用されている(一昔前はJC08という日本独自の基準だった)。
ではID.4と、車格や出力の近いガソリン車としてトヨタのハリアーを例としてWLTCモードでのカタログ値を比較してみると次のようになる。
VW ID.4 Pro Launch Edition 2WD : 6.5km/kWh (153Wh/km)
トヨタ ハリアー Z (ガソリン 2WD) : 15.4km/L
やはりこれではどちらが良いのかはさっぱりわからない。
※ 納車から1ヶ月で約1,300kmの距離を走ったのだが、この期間の平均電費は 6.2km/kWh であった。WLTCモードの95%を達成しており、実電費として優秀だ。
燃費と電費を同じ土俵で比較する
燃費も電費も「消費率」を表す数値だが、僕たちが気にするのは1km走るのにどのくらいのお金がかかるかということだろう。その基準で比較できればどちらがどの程度良いのかを把握しやすくなるはずだ。
僕自身は集合住宅であるため外部の充電器に頼っているが、一般的には自宅に充電器を設置して、基本はその充電で賄うはず。なので自宅の電気料金をベースに計算してみることにする。もちろん契約会社や地域、プランそして時期などによって変わるものであるが、雰囲気は掴めると思う。
この1年間の自宅の総電力消費量と支払った金額の合計から計算すると ¥33.76/kWh であった。先述のとおり、ID.4のWLTCモード電費は 6.5km/kWh であるので、この2つの数値から1km走るのにかかる金額を計算すると ¥5.19/km (= ¥33.76/kWh ÷ 6.5km/kWh) となる。
さて、次は燃料の方だ。e燃費の直近1年のガソリン価格推移を元に、2022年2月から2023年1月の1年間の平均ガソリン価格を調べてみたところ ¥157.5/L であった。ハリアーのガソリン車のWLTCモード燃費は 15.4km/L であるので、同様にこの2つの数値から1km走るのにかかる金額を計算すると ¥10.23/km (= ¥157.5/L ÷ 15.4km/L) となる。
これは同じ距離を走るのにID.4はハリアーのガソリン車と比べて半分の金額ですむということになる!
ちなみにID.4の電費を上記のガソリン単価を元に燃費換算してみると 30.4km/L であった。とても良い数値である。
まとめ
最後にID.4、ハリアーのガソリン車、そしてハリアーのハイブリッド車を比較して表にまとめてみる。
今回の計算では電気自動車であるID.4の燃費は良いという結果になっているが、これを書いた直後(2023年1月)に東京電力が電気料金を3割増したニュースが聞こえてくるなど、電気やガソリンの価格によって変動するものであることを把握しておきたい。
また、ID.4の電費も突出して良いわけではなく、燃費の王者であるプリウスと同等であることも認識しておくべきだと思う(2023年1月に発売された新型プリウス Z 2WDのWLTCモード燃費は 28.6km/L である)。