
棋譜添削⑤(三間飛車対右四間飛車)
棋譜添削の第五弾です。
対局者はChouwa君とsasorii君で、今までと同じ。
戦型もお馴染みとなった、Chouwa君の三間飛車にsasorii君の右四間飛車です。
毎回同じ戦型ですが、sasorii君が毎回工夫して少しずつ指し方を変えているので、今回も今までとは少し違った序盤となっています。
尚、動画を観てから棋譜添削を見て頂くことをおススメしておきます。
12手目74歩まで図
74歩はあまり見かけない一手です。
特に、対三間飛車の右四間飛車では6筋攻めの方に重点が置かれることが多いので、序盤早々に74歩を突くことは滅多にないです。
ただ、少し早いですが、これはこれでありな気がします。
と、言うのも、後手が54銀と出られない訳ではないからです。
どのタイミングで出るかは難しいものの、54銀 75歩 同歩 同飛 65歩とすれば仕掛け自体は可能だからです。
54銀と出る余地があるのなら、54銀~65歩の仕掛けの権利は残りますし、先手から75歩と位を取って石田流に組み替えるような変化も消せていますから、作戦的に損ではないです。
21手目75歩まで図
75歩は後手の主張を否定しに行った一手です。
自玉は一応美濃囲いに囲っていますので、強く戦っても大丈夫とみています。
ただ、ここで仕掛けるのが得かどうかは別問題(笑)。
私なら56歩~57銀を急いだような気がします。
と言うのも、後手にこの仕掛けを迎撃する手段があるからです。
24手目74歩まで図
74歩は疑問手です。
すぐに受ける必要もないですし、ここに歩を打ってしまうと63の銀が54に出にくくなるからです。
75の飛車は安定した形ではありませんし、今すぐ後手の7筋が危うくなる訳ではありませんので、収めるのではなく逆用するような方向でまずは考えたいところです。
ここは72飛(A図)とぶつける手が第一感です。
A図
以下、72同飛成 同金 79銀(B図)で、難しいながらも後手が先手の陣形の偏りを突いた形になっています。
B図
また、A図の72飛では、一回42金と備えてから72飛(C図)を狙う手や(42金と53の地点を先受けし、72同飛成を同銀と取る意味)、42銀と囲い、72金~73金(D図)のような抑え込みをはかる手もあります(73金と出た時、65歩の仕掛けに33銀を用意した意味)。
C図
D図
何れにしても、74歩とすぐに打つよりは優ります。
こういうところで差がつきますので、安易に収めて良いものかよく考える必要がありますね。
26手目65歩まで図
65歩は手の調子がおかしいです。
74歩は局面を収めた手なのに、すぐに戦いを起こそうとしているからです。
それに、74歩と打ってしまっているので、63の銀を動かしにくいですので、ここで仕掛けるのは得策な感じがしません。
ここは74歩の顔を立てて72金(E図)とバランスをとるところでしょう。
E図
E図以下は、73金~54銀~63金のように、バランスを取りながら先手の飛車を抑え込むような感じで指すところでしょう。
29手目67銀まで図
67銀は疑問手です。
ここは77角(F図)と受け、66歩 同飛(G図)なら先手が指せていました。
F図
G図
G図の66飛は、同角とは取れません。
取ると、同角 22銀 55角打の両取りが決まりますので。
30手目54銀まで図
54銀はチャンスを逃しました。
ここは先手の飛車の狭さを突く64銀(H図)が正着で、29手目67銀の疑問手をとがめています。
H図
32手目66歩まで図
66歩は、慌てて取り込む必要はありません。
65歩とは先手から出来ませんので、42銀や73桂と力を貯めたいところでした。
35手目66同銀まで図
66同銀では、同飛(I図)が優ります。
I図
後手から飛車交換は出来ませんので(後手の陣形の方が飛車の打ち込みに弱いため)、65銀とするくらいですが、以下、86飛 66歩 78銀 56銀 63歩 同飛 64歩 同飛 55角 61飛 66角 22銀 55角 66歩 同飛 65銀 68飛(J図)で、先手が有利となるところでした。
J図
J図では73桂と香取りを受けるくらいですが、77桂と活用するのが味が良いです。
37手目77角まで図
77角は香取りと銀取りを一度に受けた手ですが、疑問手です。
38手目で79角成とされ、先手の飛車、角、銀が重い形で残ってしまったからです。
ここは64歩と打ち(同飛なら77角 79角成 55銀の意味)、以下、99角成 77桂 64飛 46角 61飛 91角成 73桂 92馬(K図)くらいの方が優りました。
K図
39手目63歩まで図
63歩は手順前後の悪手です。
ここで叩いても同銀で何でもありませんから(笑)。
やるなら77角を打つ前でしたね。
44手目61飛まで図
61飛は悪手です。
ここは当然69飛成とすべきでしたね。
きっと、69飛成に66飛(L図)のぶつけを嫌ったのでしょうが、以下、66同竜 同角 65銀 77角に、51飛(M図)が自陣飛車の好手で後手が有利となります。
L図
M図
M図の51飛は、
「先手は飛車しか攻撃手段を持っていないので、それを活かされなければ89馬と駒得しながら優位を拡大する手が間に合う」
という考え方です。
ですので、62飛や63飛でも良いと思います。
薄い玉で戦う上で、こういう自陣飛車で相手の手を消すテクニックはかなり重要だったりします。
何かの時にはこういう手段も頭に浮かぶようになると、戦いの幅が拡がります。
本譜61飛で形勢が逆転しました。
これ、一番悪いところに逃げてしまいましたね(笑)。
49手目21馬まで図
21馬は良い踏み込みでした。
同玉に53桂が痛打ですね。
本局はここまで先手が押されっぱなしでしたが、この一撃で先手有利がハッキリしました。
56手目64角まで図
64角が敗着です。
本譜のように32金と成桂にヒモを付けてから55歩(N図)が受けの手筋で、綺麗に受かっています。
N図
後手は、先手の持駒を自陣に埋めさせるように指さないと、逆転の目が出て来ないので、55歩から軽く凌がれてしまっては失敗です。
64角では75角(O図)と指すべきでした。
O図
39銀の筋を見せられていますので、これなら持ち駒を使ってもらえます。
まあ、それでも後手が苦しいことに変わりはありませんが、苦しい時こそ粘り強く指すことが大事です。
数局に一回でも逆転したら大きいですのでね。
以下は、先手が端玉に端を攻め、堅実に勝ち切りました。
本局は12手目74歩が面白い一手で、定跡形を微妙に外れた展開となりました。
お互いに通常形との違いに戸惑ったのか、部分的に疑問手が連発していますが、少しの形の違いで戦い方や形勢がガラッと変わるのが分かったと思います。
こういう展開も勉強になりますね。
有意義な一局だったと思いますよ。