
棋譜添削④(腰掛銀~6筋位取り対三間飛車)
棋譜添削の第四弾です。
対局者はsasorii君とChouwa君で、前三回と同じ。
ですが、今回は先手のsasorii君が新たな指し方に挑戦しました。
新たな指し方が功を奏すのか……。
そもそも、その指し方が理に適っているのか……。
今回はその辺を中心に棋譜添削をしていきたいと思います。
尚、動画を観てから添削を見て頂くことをおススメしておきます。
23手目58金右まで図
先手はいつも通り腰掛銀にしていますが、右四間飛車を狙っている訳ではありません。
何故、そう言いきれるかと言うと、25の歩を突いてしまっているからです。
例えば、58金右まで図から48飛と回り45歩を狙おうとしても、37桂や17桂から25桂と跳ねられる訳ではないので、48飛~45歩に迫力が無いんですね。
ですので、45歩からの仕掛けを狙うにしても、2筋の飛車先突破と絡めて攻めることになりますので、右四間飛車とは違う指し方を志向していると言えます。
24手目35歩まで図
35歩は、石田流を目指した手と言うよりは、すんなり36歩~37桂と活用させない意味です。
実際、先手の角道が通ったままだと、石田流に組み替える42角の瞬間に45歩の仕掛けが生じる可能性が高いです。
具体的には、16歩 43銀 26飛 42角(A図)には45歩が成立します。
A図
A図以下は、34飛くらいですが、46飛 33角 44歩 同角 同角 同飛 45銀(B図)でも先手ペースですし、34飛に44歩 同銀 24歩 同歩 23歩(C図)の展開も先手が満足でしょう。
B図
C図
25手目66歩まで図
66歩は、問題の一手です。
狙いは65歩の6筋位取りですが、必ず位が取れる訳でもないので、本当に位取りが良い構想かどうかは微妙だからです。
位取りを拒否するなら後手は64歩(D図)ですが、これには65歩 同歩 同銀 45歩 33角成 同飛 24歩 同歩 同飛 23歩 26飛 36歩(E図)で、65の銀が浮いている上に66の地点に桂を打つ空間があるので、先手が好んで飛び込む変化ではなさそうです。
D図
E図
D図からE図に至る手順中、すぐに65歩と仕掛けないのもありますが、以下、67銀上 43銀(F図)で、65歩と角筋を通す手には常に、同歩 同銀 36歩 同歩 45歩(G図)の反発があり、当初の目的である、
「6筋の位を取って抑え込み」
の展開にはなりません。
F図
G図
それに、このまま65歩と行かずに角道を止めたままだと、後手から石田流に組み替えられてしまいます。
つまり、位取りのために突いた66歩なのに、位を取ることもままならず、角道を通したままなら不可だった石田流への組み替えもされてしまう可能性も出て来てしまったりするのです。
ですが、先手が68銀と上がらずに79銀型のままなら、66歩(仮想図)はあるかもしれません。
仮想図
仮想図でもし64歩と位取りを拒否されて後手に石田流に組まれても、先手にも左美濃に組む余地があり、捌き合いで堅さ負けしないで済むからです。
具体的にはH図のような展開が予想され、先手が何処で仕掛けの糸口をつかむかという勝負になります。
H図
25手目66歩では、16歩や47金(次に36歩 同歩 同金を見せた意味)、77角(次に45歩と仕掛け、77角成と後手から角交換させて形よく同銀や同桂と取る意味)などが個人的には有力だと思います。
27手目77角まで図
77角は疑問手ではありませんが、少しちぐはぐな一手です。
66歩と位取りを目指したのに位を取らず、今ここで77角としなくてはならない理由に乏しいからです。
ですので、ここは65歩(I図)が自然です。
I図
I図以下、36歩 同歩 45歩(J図)のような仕掛けは、先手陣がまとまっていて浮き駒がありませんので、33角成 同飛 24歩 同歩 77角(K図)で問題なく先手良しとなります。
J図
K図
29手目67銀上も、77角と同様にちぐはぐな一手と言えます。
この辺の数手で先手の構想が中途半端になり、後手の作戦勝ちの目が出て来ました。
35手目45歩まで図
ここまでの解説を読んでくれば、35手目45歩が疑問手なことはお分かりいただけると思います。
角道が通っていない仕掛けの上に、後手の飛車先が交換済で34飛型で待たれており、次の33桂が幸便な一着になっているからです。
42手目53角まで図
42手目53角で後手の作戦勝ちがハッキリしました。
後手の石田流はすでに捌けることが確定しているのに対し、先手の6筋位取りは抑え込みの役に立っていないからです。
以下は後手が自然な捌きから優位に立ち、そのまま押し切っていますので割愛します。
本局は、先手sasorii君の新構想が不発に終わった一局となりました。
その背景には、I図~K図に至るような手順の何処かに不安を抱えていたからのように感じています。
ただ、色々試してみることは悪くありませんので、しっかり本局を反省し、25歩を決めてから腰掛銀にする指し方も自身のレパートリーの一つに加えてもらいたいと思います。
後手のChouwa君は、自然に指して勝った感じなので少し物足りないかもしれませんが、組みあがるまでには多々難しい変化があったことを実感してもらえたと思います。
今、三間飛車に対して腰掛銀で対応する指し方はかなり流行しており、難解な変化も点在していますから、この機会に駒組みの点検をしておくことは無駄ではないでしょう。
そういう意味で、両者共に有意義な一局だったのではないかと思っています。
以上で棋譜添削を終わります。